4
*
7月8日の深夜。私は居間のテーブルで顎を右手に乗っけた状態で伏せ寝をしていた。
まっったく眠れない…………。
もしかしたら今日もベランダで待っててくれてるかもしれないのに――――。
*
3日前の昼休み。
キーンコーンカーンコーン♪
5限の予鈴が鳴り響く。
「…
「んっ…」
屋上で眠っていた私は
…あれ?
リボンない……。
え、ほどかれたリボンがスカートの上に落ちて…。
右足を立てたまま座っている
「…
私は
「…はい」
「っ…」
脳裏に浮かぶ、しゅるっ、とリボンがほどかれる音と
思い出して、
顔が熱い。
私はパッとほどかれたリボンを受け取り、自分の胸元に押し付ける。
「…あっ、ありがとう」
「…教室戻るね」
私は慌てて逃げるように屋上から出て行った。
*
屋上の日陰になった場所で起きた出来事は、
何度も夢かもしれないって思った。
だけど……。
――――
――――心に絡まったリボンほどいて。
私は伏せ寝をしたまま両目を見開く。
あれは夢じゃない。
完全に告白してた。
その後のことがよく思い出せないけど……。
まさか勢い? で人生初の告白をしちゃうなんて。
それくらい
私は右手に乗っけていた顎を離し、その手に顔を埋める。
ああああああああああああ。
どうしよう……。
今日月曜日で明るくなったら高校行かなきゃいけない。
高校休みたいよ。
だけど
これ以上、心配かけられないよ……。
「おい、ありす」
私は顔を上げる。
グレーの長袖のTシャツに長い黒色のアンクルパンツの
「…!?」
なんで、
「…え、バイトは?」
「誰かさんのせいで今日は早く上がった」
「そうなんだ…」
玄関の扉開く音、全く聞こえなかった……。
…って、あれ?
私は首を傾げる。
「誰かさんのせい?」
「お前以外に誰がいんだよ」
サァーッと私の顔が青ざめていく。
私の…せい?
だとしたら物凄くマズい。
私は立ち上がる。
「…じゃあ
「しなくていい。ここにいろ」
私の体が、まるで氷のように固まる。
え……。
「作ってくる」
作るって何を?
そして10分後。
さっと炒めて煮たカレーには豚こま切れ肉に玉ねぎとえのきだけが入っていて、スプーンが突っ込まれている。
「え、しゃびしゃび…」
「短時間で作ったから失敗したわ」
私はふふっと笑う。
「
「うるせぇ、忘れろ」
「つーか、笑えんじゃねぇか」
あ……。
もしかしてこのカレー、私を元気づける為にわざと失敗して……。
「何抱えてるのか知んねぇけど」
「空腹じゃ眠れねぇだろ」
「飯はちゃんと食え」
「それで食ってる時くらいは今みたいに笑ってろ」
何それ……。
そんなこと言われたら涙止まらなくなっちゃうよ。
「ったく、泣いてんじゃねぇよ」
「……理由聞かないの?」
「お前が話したくなった時に聞くわ」
私の胸がきゅっと痛む。
そんな時は、きっとこない。
でも高校に行く元気出た。
「…
「なんだよ?」
「一緒に夜更かししてくれてありがとう」
お礼を言うと、
*
カレーを食べ終えた私は部屋に戻ると、鞄のチャックを開けてスマホを取り出す。
スマホの時計を見たら2時。
よし。
「…
私は
『
送れた……え!?
私はドキッとする。
マナーモードで良かった…。
じゃなくて、どどどどうしよう。
落ち着いて、私。
とにかく出よう。
私はドキドキしながら電話に出て、右耳にスマホを当てる。
「…何?」
あ……、
もうだめかもしれない。
私は両目の涙が零れ落ちないようにぐっと堪える。
それでも、私、諦めたくない。
「…今日の放課後、屋上で待ってます」
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