3
*
「はぁっ、はぁっ……」
10分後、私は全力疾走で階段を上り切り、屋上に着いた。
私は扉のノブを回してみる。
ガチャ。
あ、開いた……。
キラキラと輝く青空。
もこもこの入道雲。
高い手擦り。
白の半袖シャツにチェックの薄い灰色とブルーのスボンを履いた
顔を見たら胸がいっぱいになって何も言葉が出てこない。
「…
私の体がびくつくと
「…今朝は悪かった」
「…冷たくしたの、アレわざとだから」
え、わざと…?
「…
「…
「っ…」
私の両目がじわりと潤む。
冷たくない。
いつもの
「…疲れただろ」
「…座りながら話そう」
私達は扉の横の壁に背中をつけて座る。
走って来て、
しかも
でもここ、ちょうど日陰になってて涼しい。
「…あの、わざとって?」
「…俺、不登校で有名だろ?」
「…だから俺のことよく思ってない連中がたくさんいて」
「…表立って仲良くすると
「…それが嫌で冷たくした」
「…でも話しかけた時点でアウトだったわ」
「…これからはふたりきりの時だけ優しくするから」
「…あの、
「私達の関係ってなんですか?」
やばい。
私は両手で自分の口を覆う。
自分から聞いておいて恥ずかしくなってきた。
やっぱり、“お友達”かな?
「…ほどいてほどかれる関係」
「…プラス秘密多め」
私はびっくりする。
そんな発想はなかった……。
あ、関係が分かって安心したら、また眠くなって…。
今朝、電車の中で
「…
「…あ、リボン曲がって」
「さっき掴まれて、ほどかれそうになった…」
「…は?」
「このままほどかれたらって思ったら…すごく怖かった」
「嫌で嫌で仕方なかった…」
頭もボーッとして、
自分が何を言ってるのか分からなくなってきちゃった……。
「どうせほどかれるなら、ぜんぶ…
「…何言ってんの?」
「…まだ、“ほどかないで”って昨日言ってただろ?」
うん、そうだね。
だけど――――。
両目から大粒の光が止めなく流れる。
「
「心に絡まったリボンほどいて」
しゅるっ。
ふわっ……。
ほどかれたリボンがスカートの上に落ちる。
爽やかな甘い香り……?
あれ?
何かがゆっくり近づいてきて……。
私の首から汗が垂れる。
眠くてよく分からな……。
ふわっと唇に何かが重なった。
「んっ……」
とろけるような甘さを感じた瞬間、私は両目の瞼を閉じた。
*
「…やっぱ、来ねぇわな」
その日の深夜。
「…ん? 電話?」
「…非通知?」
「…もしもし?」
「
穏やかな声で名前を呼ばれた。
「…総長!」
「ははっ、俺はもう総長じゃないよ」
「…………」
「…
「あぁ、歩けるようになったよ」
「でもまだ少年院上がりの保護観察中だから」
「キャップで顔隠してるけどね」
「…………」
「
「…白い鳥、見たんすね」
「あぁ、
「かっこいい! イケメン!! とか」
「…………」
「
「気をつけるんだよ」
「分かっているよね?」
「…はい」
「…暴走族
「…俺の代で」
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