5
*
「…あ、涼しい」
「…酔わせてねぇから」
「分かってる」
「多分、初めて缶酎ハイ飲んで体がびっくりしたのと」
「このウィッグのせいだと思う。熱込もるから」
私はそう言って苦笑いする。
「…カップラーメン、ほんとはカレー味食べたかった?」
「…!」
え、バレて…。
「なんで分かったの?」
「…あー、目線で」
「…刺激的なのは、また今度な」
「っ…」
また今度?
あ、
昨日までは隣のベランダに私はいて、
仕切り板の穴から
だけど今、同じベランダに、
でも、家に帰ったらもう、
“2度と会えないかもしれない”
私は急に不安に陥り、曇った夜空を見上げた。
「もし、会えなかったら?」
「…
私の
だけど――――。
私は涙を
「ベランダだけじゃなくて、こうやって」
「高校でも会いたい」
兎がいそうな大きな満月は雲に隠れるのをやめて姿を現す。
昨日より更に欠けていて、
夏の夜空の星々はそれに負けずとキラキラと輝き始める。
「…分かった。時間もねぇし」
「…
*
「…じゃあ、かけるぞ」
ベランダから居間に戻って食べ終わった後。
「これで少しは香り消えるだろ」
私は床に座っていて、ゴーッとドライヤー音が部屋中に鳴り響く。
温風モードで熱い……。
「ドライヤー前に消臭スプレー私達がかけたし」
「これでお兄ちゃんにバレずに済むね」
「みんな、ありがとう。ラインも」
友だち
カップラーメンを食べてる時にラインのID交換をして、『お兄ちゃんに黙って出て来たから香りでバレたらマズイ』って言ったら、みんな協力してくれた。
名前は
ドライヤーのスイッチが切り替えられ、冷風が背中に当たる。
「ひゃっ」
「…
「ごめんなさい」
でも冷風、気持ちいい。
「思い出すなぁ。
「仕方ないねって」
「
「
私は聞き返す。
「
「2つ上の先輩で仲良かったんだけど高校辞めちゃってさ」
「
「…ベラベラ話てんじゃねぇよ」
「しゃあーせん」
よっぽど大事な先輩だったんだろうな。
「…出来た」
「
「これで帰れます」
私は床から立ち上がる。
「…玄関まで送る」
「ありす、また高校でね~」
私も振り返し、
そして靴を履き、扉の前に立つ。
「…今日、来れて良かった。楽しかった」
「…
私はドキッとする。
「…あぁ、約束」
ガチャッ。
鍵を開け、右手で扉を開ける。
私は涙を堪えながら外に出ると、扉がぱたんっ、と閉まった。
*
「
後ろから
「…はぁ、聞いてたのか」
「…そのまんまの意味だけど?」
「ありすちゃんに近づいたの」
「“名前がありす”だけじゃないよな?」
「あの子、何者?」
「…………」
「明日から高校って本気かよ」
「え」
「
「…あぁ、本気だ」
「
「俺達はいいけど1番危険なのはありすちゃんだよ」
「総長なこともバレるかもしれない」
「…大丈夫だ」
「…それに」
「あいつら相手すんの」
「…ナンバー2の
「…ナンバー3の
「そそ、
「総長と
「総長、明日から高校でも全力で守らせて頂きます」
*
「
私は部屋でトップスとショートパンツに着替えていた。
黒のふわロングのウィッグを取って、それ専用のハンガーにかけ、スマホの時計を見る。
え、もう3時!?
……あ、
マナーモードにしておいて良かった…。
私はトークをタップし、ラインのトーク画面を開く。
『…部屋着いた?』
『うん。バレずに済んだよ』
『…良かった。
『うん。
トークが終わると私はスマホをぎゅっと抱き締め、鞄の中に隠してベットに寝転がる。
「……疲れた」
夢みたいな一日だったな。
両目にじわりと涙が浮かび、
きらきらと星のように光っては頬から零れ落ちていく。
今日はもう、
興奮して眠れそうにないや。
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