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え…?
自分の頬に右手で触れてみる。
嘘…。
私、なんで泣いて……。
…あ、そっか。
でもそんなこと恥ずかしくて言えない。
「…これ、食べるか?」
「うん、食べる」
私は仕切り板に近づいてとっさに手を伸ばす。
袋に入った白いサワー味のアイスキャンディーを受け取った瞬間、今日も指先が触れた。
「…泣いてごめんね」
「勉強疲れ溜まってるのかも」
「…勉強疲れ?」
「…
「…大変だな」
私は誰にも聞こえないような声でぽつり呟く。
「…ほんと心に絡まったリボンほどいて欲しい」
「…
「
「だから…」
「…昨日ここで金髪見たこと秘密にして欲しい?」
「あ……うん」
「それを今日、高校で言うつもりだった」
「……」
震える唇から消え入るような声を絞り出す。
「…
「不登校のこと」
「…高校には行く気ない」
「なんで?」
「…溶ける、早く食べろ」
「あ、うん…」
私は袋を破る。
「…俺も食べよ」
昨日は一人でアイスキャンディー食べたけど、
今日は
嬉しい。
もっと近くで話してみたい。
だけど、
ベランダの仕切り板を飛び越えることは出来ない。
「…金髪見たこと秘密にしてやるよ」
「え?」
「…その代わり俺とここで会ってるのも秘密で」
「分かった」
「…それから」
「…明日の深夜、俺の部屋に来ないか?」
私の思考が一瞬だけ停止する。
え…今なんて……。
「…仲間も来る」
あ、ふたりきりじゃないんだ…。
「どうやって部屋に…?」
「…仕切り板壊す」
ええ!?
「バレたら大家さんに怒られて弁償しないといけないし…」
「それに
「…じゃあ、玄関から」
玄関からって…。
そんなの無理だよ…。
「…来なかったら秘密バラすかもな」
ええ!?
金髪見たこと秘密にするって、さっき言ってたのに…。
「…い、行きます」
「…スマホ持ってるか?」
「うん」
「…じゃあID交換な」
仕切り板の穴からお互いのスマホを合わせる。
胸がドキドキでいっぱい。
友だち
お母さん
お父さん
そして…
「…家族以外初めて」
「…俺、友達第一号?」
「うん」
私はそう短く答える。
「…頭になんかついてる」
「え、どこ?」
私は
穴が空いた仕切り板から
私の頭に優しく触れた。
「…嘘だから」
「…出る時、ラインか電話して」
「…
嘘って……。
ドクドクドクドクと、私の心臓が物凄い音を立てる。
顔が熱い。
呼吸止まるかと思った。
それだけじゃない。
ID交換までしちゃった。
私はアイスキャンディーの空袋と一緒にスマホをぎゅっと抱き締める。
だめだって、
許されないって分かってるのに。
分かってたのに。
だけど、
もう止められないの。
ごめんね、
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