3
*
…もし、あの時、部屋でパンフレットを見てなかったら、
今となってはもう遅いけど。
扉が開き、続々とサラリーマン達が降りていく。
「じゃあ俺、ここで降りるから」
「うん…」
世界が変わってしまったかのようで少し寂しい。
扉が閉まり、再び電車が動き出す。
扉の窓から
髪のことは
高校行ったら
もし会ったら、昨日ベランダで私が金髪だったこと秘密にしてもらうように言わなきゃ。
*
「――――では、復習しておくように」
12時のチャイムが鳴り響く中、2年B組の壇上で
4限終わっちゃった…。
登校したら「昼休みに俺の教室まで来い。金髪バラすぞ」って脅されたりとか覚悟してたんだけど、小説みたいなことはなくて、
まだ
同じ高校で同級生なら、もう会っててもおかしくないのに。
本当に同じ高校なのかな?
よし、勇気を出して
私は
「あのっ」
後ろから声をかけると、
「
「つ」
「つ?」
「
聞けた…。
胸がドキドキする…。
「知っているも何も
え、隣のクラス!?
「不登校で有名な生徒だよ」
私の目が揺れる。
胸がドクンドクン、と嫌な音を立てる。
「いつから…ですか?」
「高2の春からだ」
「みんなもうとっくに知っている」
ショックで私の両目から光が消えた。
そんな…。
知らなかったの私だけ?
「
「もっと周りを見た方がいい」
「っ…」
「なぜ今頃、
「あんなクズな生徒、気にかけるだけ時間の無駄だ」
「今すぐ忘れた方がいい。では」
『…またな、
だけどそんなふうには見えなかった。
嘘だよね? そんなの。
私は確かめにC組まで歩いて行く。
「ちょ、
男の子が言うと、その友達がどかっと椅子にわざと座る。
「おいお前、何、
男の子の友達が笑いながら問う。
「いいじゃん、どうせいつも空いてんだし」
「
「あんなプラチナブロンドで、いっつも寝てて」
「授業は気が向いた時だけ受けて」
「態度悪いクズに怒られたくないわ」
学校ではいつもそんな感じだったんだ…。
「てか
私は胸元に両手を重ねて当てる。
…そっか。
なら、私が金髪の髪だってバラされる心配ないってことだよね。
隣のクラスでも私が黒のウィッグつけてることは多分知らないだろうし。
良かった……。
「ウチのクラスになんか用事?」
前扉から出て来た男の子に尋ねられた。
さらさらの黒髪に少女と見まがう線の細い顔立ち。
ミステリアスな雰囲気だが爽やかさも持ち合わせ、落ち着いた物腰の優等生美男子。
「…!」
私は慌ててB組に駆け戻る。
「はぁっ、はぁっ…」
――――あんなクズな生徒、気にかけるだけ時間の無駄だ。
そうなのかもしれない。
だけど…。
唇に右手で触れてみたら、
もう半日経ってるのに唇がまだ熱くて甘い。
白いサワー味のアイスキャンディーの刺激的で甘酸っぱい感覚が忘れられなくて。
また会いたいって思ってしまうの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます