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 …氷雅ひょうがお兄ちゃんが貯めたバイト代で黒のウィッグ買ってくれたの、嬉しかったな。


 高校生になってからは私が不自由しないように氷雅ひょうがお兄ちゃんバイトも始めて…。

 料理も健康に気を遣ってくれてて、

 私が出来ることは氷雅ひょうがお兄ちゃんの約束を守ることと、大学の受験勉強することくらいで。


 私はびっしりと書き込んだノートを見つめる。


 受験勉強はもう高校2年生だから仕方ないよね。

 やらなきゃいけないよね。


 分かってる。


 だけど、なんの為に勉強してるの?

 なんで受験するの?

 氷雅ひょうがお兄ちゃんの為?


「…分かんないや」


 大粒の光がノートにこぼれ落ちていく。


 私は両手で顔を覆う。



 お願い。

 誰か、

 心に絡まったリボンほどいて。



「…気分転換に外の風でも吸おうかな」

 私はガタッと椅子から立ち上がる。


 氷雅ひょうがお兄ちゃんが起きてるから家からは出られない。


 私は水色にゴールドの星柄がついたカーテンの前に立つ。


 でも一つだけ外に出る方法がある。

 それは…。


 シャッ!

 カーテンを開けリボンで留めると、ガチャ、と鍵を外す。


 “ベランダに出ること”


 ガラッ。

 私は扉を開けて飛び出した――――。


「あ、風、少し吹いてる」

「涼しい」


 兎がいそうな、まんまるで大きな満月の光に照らされ、ベランダが明るくなった。

 夏の夜空の星々がキラキラと希望に満ちあふれ、美しく光り輝く。



「…髪の色、綺麗だな」


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