Silver snow13*ここはわたしの席だから。
1
分かってる。
だけど…だめ。
ここはわたしの席だから。
*
…あれ?
なんで、わたし教室にいるの?
歩道にいたはずなのに。
ふわっ…。
よく見るとわたしの体に天使の羽が生えていた。
天使の羽生えてるってことは…。
両手で自分の口を押さえる。
わたし、死んじゃったの?
…あ、
それだけじゃない。
一筋の涙が流れ、ぽたぽたと
「
「わたし、ここにいるよ」
… だめだ。
聞こえてないみたい。
わたし、もう、見えてないんだ。
わたしは俯く。
するとガタッと音がして誰かが近づいてくる。
…え?
手?
わたしは顔を上げる。
「
ぽたぽた、と涙がまるで光のように輝き、
あ…気づいてくれた。
わたしは
*
「んっ……」
わたしの
「――――
薄っすらと開くわたしの両目。
「
わたしの目に光が宿り、
「…………」
頭が、ぼーっとする……。
「おい、何黙ってんだよ?」
「答えろよ」
「
くっきりと
わたしは声を必死に絞り出す。
「
隣に一緒にいる
「良かった…目覚めて」
「もう二度と目覚めないんじゃないかって思った」
初めて、
わたしの胸がぎゅっと苦しくなる。
地面には鞄が横たわっていて、
2車線の道路。
こっちの歩道に木々がないってことは…。
え、渡り切れてる?
そっか…バイクに轢かれそうになったわたしを
「あれ見て」
「やばいんじゃない?」
様々な声が、ざわめいて飛び交い、人が集まってくる。
その中の一人のサラリーマンがスマホで電話をかける。
「救急車2台、お願いします」
「
「膝擦りむいたくらいかな」
「
「あぁ、なんとかな」
「上手く一緒に転べたわ」
わたしは、
「
「良くねぇよ」
「バイクには逃げられるわ」
「
「窓から叫んだのに、なんで逃げんだよ?」
「俺を置いて行くな」
「一人にするなよ」
「寂しいだろ」
「
涙がぽたぽたと
「ごめんなさい…」
「離して…みんな見てる」
震えた手で抱き締め返そうとする。
でも出来ない。
「…ねぇ、
「こうしてぎゅっとしてくれるのは、わたしが隣の席だからだよね…?」
「…………」
「隣の席じゃなくなったら?」
「それでも隣にいて、ぎゅっとするよ」
わたしの目から大粒の涙が零れ落ちる。
嘘つきだね。
隣じゃなくなったら、
そしてわたしの恋は終わるのに。
「
「寝とけ」
わたしは何も答えず、
せめて終わりがくるまでは
再び両目を閉じ、眠りについた。
*
「ごめんね、手怪我させて」
わたしは病院の待合室のソファーで
上手く一緒に転べたわって言ってたのに…わたしに気を遣ってくれたのかな…。
「こっちこそ、膝擦りむかせてごめんな」
隣に座っている
「でも良かった。
「
わたしは鞄のチャックを開け、スマホを取り出して見る。
お母さん、お父さん、
『
『今、病院に向かってる』
『お願い、無事でいて』
「
「
わたしはふと前を見ると、ハッと驚いた表情を浮かべる。
「良かった、2人とも無事で」
「電話かけたりライン送ったりしたけど返事なかったからさ」
「あ、見てねぇわ、ごめん」
「だろうね」
そんな2人のやり取りを見て
「あー、本当に良かった!」
「イケメンから2人の交通事故のこと聞いた時、心臓飛び出たからね」
「|雪羽ちゃん、良かった。ほんとうに良かったっ…」
「みんな、心配かけてごめんなさい」
「来てくれてありがとう」
わたしがお礼を言うと、
「
「あぁ、大したことねぇよ」
それを見て、頭にある疑問が浮かんだ。
わたしにわざと見せつけてる?
もしかして、
「
わたしは胸をズキンッと痛ませつつも苦笑いする。
バッ。
「あ、痛かったよね…ごめんね」
「…………」
「
「
診察室の白い扉が開き、お医者さんからの説明が終わったお母さんと池田先生が叫び、駆けてきた。
お母さんが、わたしの顔を見てほっとすると、わたしをぎゅっと抱き締める。
「
「無事で良かったわ」
「うん…」
「CT結果、2人とも大丈夫で先生安心したよ」
「警察からもさっき連絡があってバイクの運転手も無事に捕まったようだ。良かった良かった」
池田先生がそう言うと、
「ちっとも良くないわよ!」
「
お母さんは、キッ! と
「土日出掛けるの禁止にして平日も真っ直ぐ帰って来るようにさせた意味が全くないじゃない!」
「お母さん…!」
わたしが叫ぶと、
「え…」
「
「あー、やっぱりね」
「
「
「
「…………」
「お母さん、
池田先生が
「そうだったの。ありがとう」
「いえ」
「下の名前は?」
「
お母さんはびっくりして動揺する。
「
「まさか…」
お母さん…?
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