2
「
「どうやら寝坊だったみたいだね」
――――ダッ!
わたしは膝の痛みを堪えながら駆け出し、ガラッと後ろの扉を開け、
「こら!
*
途中で何度か転びそうになりながらも走って階段を降りていき、しばらくして、1階の下駄箱の前に着いた。
わたしは下駄箱で靴に履き替え、走って玄関から外に飛び出す。
外は花びらのように雪が舞っていた。
「
わたしは
それを見て
「おい、
「大丈夫か!?」
わたしは
はぁ、はぁ、と息を整えた。
「良かった…もう高校に来ないんじゃないかって…」
「
「うん…」
そう短く答えると
「中3の時、突然、両親が出て行ってそれっきり中学には行かなくなった」
「それでも2人から仕送りはあってなんとかバイトしながら高校には通えてるけどな」
そうだったんだ…。
ぽたっと涙が零れ落ちる。
「今日は寝坊で遅れただけ」
「泣くなよ」
「泣くよ」
「だって」
ぽたぽた、とまた2粒落ち、制服のスカートを濡らしていく。
「
…あ。
わたし、何言って…。
わたしの顔がカァァッと熱くなる。
これじゃまるで告白してるみたい。
ふわっ…。
「…………!」
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
わたし、今、
暖かさがわたしの体に染み透っていき、ドキン、ドキンと鼓動が速くなっていく。
「隣にいるって言ったくせにな」
そう言うと
「今日は教室で待ってなくてごめん」
「昨日も上手くフォロー出来なくてごめんな」
「ううん、
「わたしがぜんぶ悪いの」
「昨日はお母さんがごめんなさい」
「気にしてない」
「それより、あの後、何言われた?」
わたしの両目が揺らぐ。
「何も…」
「嘘つくなよ。言えよ」
わたしはぎゅっと両目を閉じる。
涙が止まらない。
「土日に出掛けるの禁止だって」
「平日も真っ直ぐ帰ってくることって言われた」
「もう
「それでも俺の隣にいろよ」
「絶対離れるな」
「うんっ…」
花びらのように舞っていた雪が止んだ。
空から降り注ぐ暖かな光が、わたし達を照らしていた。
*
そして、放課後。わたしは
――――スッ。
右肩に鞄をかけた女の子がわたしの隣を通り抜けていく。
あれ?
何か落ちてる?
林檎のストラップ?
「桃ずきんちゃんのじゃない?」
黒髪の女の子は
わたしと同じ1年A組。セミロングで見た目はわたしと似ていて、パッと見いじめられるタイプに見える女の子。
「渡してくるわ」
そう言って駆けて行き、林檎のストラップを手渡す。
「え、林檎のストラップ!?」
「わー、鞄のチェン
「わ、わざわざありがとう」
「
あ…
「じゃ、じゃあ、失礼します」
わたしは自分の胸に手を当てる。
なんだろう、胸がもやもやする。
苗字で呼ぶの、わたしだけかと思ってたのに。
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