Silver snow10*手、ぎゅっとしたかった。
1
なんでこんなことに…。
やだ、やだよ。
お願い、禁止にしないで。
*
12月12日、日曜日の夕方。わたしは自分の部屋のベットに座りながらシャボンを読んでいた。
2日前、保健室で
駆けつけてくれた
「…夢じゃない」
わたしはシャボンで、かーーーっと林檎のように真っ赤に染まった顔を隠す。
しかもお酒のせいで頭がぽーっとしてたせいか、
――――
下の名前で呼んでしまった気がする。
あぁぁぁ、恥ずかしい、消えたい。
今日で休みは終わり。
明日、どんな顔で会ったらいいの?
分からないよ。
ヴーヴー。
わたしの白色のスマホからバイブ音が鳴り響く。
え、誰?
わたしはシャボンを隣に置き、スマホを手に取って見てみる。
え、え、
ど、どうしよう…出る?
出ない?
あ、でも、保健室に運んでくれたお礼まだ言ってない…。
それは人としてだめな気がする…。
出よう。
わたしは胸をドキドキさせながらスマホの画面に出ている応答をタップする。
『もしもし?
「あ、はい」
『出てくれて良かった』
『今、時間大丈夫?』
「だ、大丈夫です」
『今から俺とデートしない?』
わたしは氷のように固まる。
デ?
デ…。
デート?
『あー、ごめんね』
『ストレートすぎたかな』
誘ってくれたのは嬉しい。
でも…。
ぎゅっと両目を閉じる。
わたしは
だからデートは出来ないよ。
「あ、いえ、えっと、土日は外に出させてもらえなくて…」
わたしは弱弱しい声で返す。
『何それ?』
『
「え…」
わたしの心がざわめく。
『
『だからって家に閉じこもったままなんていいはずない』
『
『
『欲張っていいんだよ』
氷のように固まった心が、ジワジワと溶けていく。
保健室に運んでくれたお礼、電話で伝えるつもりだった。
だけど、やっぱり直接言いたい。
スマホを持つ手にぎゅっと力が入る。
「強く言ったら、なんとかなるかもしれません」
「でも、長い時間はちょっと…」
『そうだね、両親心配するしね』
『近くのチェリバで30分だけ話すのはどうかな?』
「それなら大丈夫だと思います」
『分かった』
『両親には俺と会うのは内緒で』
『ちゃんと嘘ついて出て来なよ』
『じゃあ、
そう言って
約束してしまった…。
わたしは胸に手を当てる。
これで本当に良かったのかな…。
会いに行ったらデートになっちゃうのに…。
ううん、いいの。
わたしはただ、お礼を言いに会いに行くだけ。
お礼を言ってすぐに戻ってこれば大丈夫…だよね?
それよりも、服と髪、どうしよう!?
制服で行く?
でも日曜日で高校休みなのに制服だと怪しまれるかも…。
オシャレもしない方がいいよね…。
髪はいつも通りのロング、服も今着てる黒色のセーターにズボンのままで行こう。
わたしは灰色のダッフルコート羽織り、ふわふわのマフラーを首に巻いて、
ガチャッ。
部屋の扉を開け、階段を駆け降りていく。
「…あれ? お母さんは?」
居間のソファーに座っているトレーナーにズボンの姿のお父さんに尋ねる。
「母さんはさっき買い物に行ったよ」
え…買い物に?
こんな時に限って…。
「母さんに何か用事か?」
お母さんは今いない。
ならお父さんに伝えるしかない。
「アップルティーどうしても飲みたくて待ってられないからコンビニで買ってくるね」
わたしはそう言って玄関まで駆けて行く。
「あ、おい!」
お父さんの声を無視して、
ガチャッ。
わたしは家から飛び出した。
*
「
20分後、チェリバの前で待っていた
立ってるだけでオーラがすごい…絵になる…。
「
わたしはそう言いかけふらつくと、
「大丈夫?」
「あ、うん… 大丈夫です」
…だなんて、ほんとうは嘘。
歩いてきて分かったけど、カラオケ店よりチェリバ遠かったなんて…。
しかも慌てて走ってきたから余計に疲れちゃった…。
「キャー!」
「何あれ!? 撮影かな?」
チェリバから出て来た3人の女子高校生がわたし達を見て騒ぐ。
女子高校生の一人がわたしを見てクスクスと笑う。
「いやいやないでしょ~」
「だって女の方、顔普通でズボンだし」
わたしの顔が、かぁぁっと熱くなる。
スカート履いてくれば良かった…。
「彼女の方がキミより、よっぽど可愛いけど?」
「入ろう」
わたしの体を支えながらチェリバに入る。
*
「席、ここでいい?」
「うん」
「何飲みたい?」
「お任せで」
「分かった。ここで休んでて」
わたしの頭をふわふわと撫でると、
チェリバ、初めて入ったけど大人な雰囲気…。
わたし、すごく浮いてる…。
しばらくして、
「お待たせ」
テーブルにストローがそれぞれ乗っかった2つのバニラクリームフラペチーノを置くと、
「あの、
「金曜日は助けてくれて、保健室に運んでくれてありがとう」
「いいよ、お礼なんて」
「親にはなんて言って出てきたの?」
「アップルティーどうしても飲みたくて待ってられないからコンビニで買ってくるねって」
「ほんと親って勝ってだよね」
「子供の為だって思ってるのかもしれないけど」
「そんなの自己満足だよ」
「あの、
「両親は俺が中学入学と同時に離婚して今は母親だけかな」
「その母親も男の家渡り歩いて帰ってこないけどね」
「別れた父親からの養育費でなんとかなってる感じ」
それを聞いたわたしは動揺する。
「ごめんなさい、わたし…」
「気にしないで」
「それより飲も?」
「うん」
わたしはバニラクリームフラペチーノを手に取る。
「甘っ…」
「あ、真っ白…綺麗…」
そう言ってわたしも紙袋を破り、ストローを刺してバニラクリームフラペチーノを飲む。
「
「ううん、甘くて美味しいです」
「それにむしろ」
「
え…。
わたしは焦り出す。
「あの、わたし何か変なこと…」
「違う、元カノのこと思い出しただけ」
「元カノ?」
「…うん」
「あれは中3の時だった」
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