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*
それから時間は過ぎて行き、昼休み。
――――バシャッ。
「…あっ!」
1年A組の教室でわたしはアップルティーを右隣の
間違って倒してしまうなんて…。
机のアップルティー、なんで
「
「いいよ、大丈夫だから」
「でも…」
「りんりん、大丈夫!?」
あずさちゃんが慌てて駆け寄って来た。
「ハンカチで拭くね」
「いや、いいよ。自分で拭くから」
普通なら怒ってもおかしくないのに、
*
放課後、右肩に鞄をかけ、わたしは一人で校庭を歩いていた。
今日は
あずさちゃんにキスされてるところなんて見たりしたから
明日からは普通の黒ずきんに戻ろう…。
「黒ずきんちゃん!」
突然、後ろから声をかけられた。
わたしは、びっくりする。
え、あずさちゃん?
駆けてきたあずさちゃんは息を整える。
「良かったぁ、まだ帰ってなくて」
「ちょっとお話しない?」
*
「黒ずきんちゃん、はい」
体育裏であずさちゃんは缶のアップルティーを手渡してきた。
「昼休み、アップルティー飲めなかったでしょ?」
「一緒に飲も?」
「あ、うん…」
体育裏に移動したのはいいけど、まさか、アップルティー手渡されるなんて…。
てっきり、
あずさちゃん、ほんとはいい子なのかもしれない。
プシュッ。
わたしとあずさちゃんは缶の
「黒ずきんちゃん、3日前の化学の授業の時はぁ、無視しちゃってごめんね」
「りんりんと教室でふたりきりでいたのが、ちょっとだけムカつきました」
「…?」
…あれ?
なんだろ?
体が急に熱くなって…。
「今日はぁ、イメチェンして、りんりんに『かわいいね』って言われて」
「写メまで撮ってもらえたのに」
「りんりんにアップルティーぶっかけるし」
「私とりんりんのキス、盗み見るなんてぇ」
わたしの顔が青ざめていく。
え、バレて…。
あずさちゃんの両目から光が消える。
「ほんと何様?」
「あ…」
「ほんとぉ、ゆりにはがっかり」
「黒ずきんちゃんのこと排除してくれるって思ってたのに」
「もぉいい。私がやるから」
ジジジ。
あずさちゃんがわたしの鞄のチャックを開け、投げ捨てた。
――――バサッ。
地面に落ち転がった鞄から教科書が何冊か飛び出す。
あ、教科書が…。
わたしはアップルティーを右手に持ったまま鞄を取りに行こうとする。
くらぁっ…。
あ…れ…。
わたしはその場に崩れ落ちた。
あずさちゃんがわたしの右手からアップルティーを奪い、
――――パシャッ。
自分の飲みかけのアップルティーと一緒にわたしの頭の上からかけていく。
かけ終わるとパッと手を放し、アップルティーをそれぞれ地面に落とす。
カンッ、と転がるアップルティー。
あずさちゃんは自分の口に手を当てて驚いた表情を浮かべる。
綺麗に塗られた爪のマニュキアがキラキラと光り輝く。
「やだぁ、髪の毛びちょちょ~」
「もう、やられたくなかったらぁ、りんりんに近づかないで」
「それ、こっちの台詞なんだけど」
わたしの後ろに腕を組んだ
サァーッ、とあずさちゃんの血の気が引いていく。
「ぁ、りんりん…」
「何やってんの?」
「黒ずきんちゃんが…悪いんだよ?」
「私のりんりんに…アップルティーかけるから」
あずさちゃんは声を震わせながら言う。
「は?」
「いつから俺、あずさのものになった?」
「知ってたよ」
「りんりんは
「だけど、私、本気でりんりんのこと…」
「本気ならいらない」
「っ…」
あずさちゃんの両目からぶわっと涙が零れ落ちる。
「りんりんのバカッ」
あずさちゃんは走って逃げて行った。
「雪羽ちゃん、大丈夫?」
「あ、うん…」
そう言ってわたしはなんとか立ち上がるも、
ぐらぁっ…。
ふらつき、
「ごめんなさ…はぁ、はぁ…」
「雪羽ちゃん?」
「なるほどね、これが原因か」
「鞄…」
「待ってて、取って来る」
教科書を全て拾い鞄の中に入れ、チャックを閉めると鞄を左肩にかけ、歩いてくる。
わたしの腰に手のひらを当て、もう片方の手で足を持ち上げ、そのままひょいっとわたしをお姫様抱っこする。
「
「もう黙って」
*
しばらくして
ベットまで歩いて行き、わたしをベットに優しく降ろす。
横になるわたしに
「
「アップルティーの中に
そうだったんだ…。
飲む前にちゃんと見れば良かった…。
あ、頭がぽーっとして…。
夢の中にいるみたい。
今なら聞ける気がする。
「一つだけ…聞いてもいいですか?」
「何?」
「
「本気だよ」
「入学式の時からずっと」
「隣の席になってからも」
「今もぎゅって抱き締めたいくらいに」
窓の外から見える夕日が静かに沈んでいく。
ギシッ…。
え?
唇が近づいてきて…。
あ…甘い禁断の果実の香り。
暗闇が空を覆っていき、
駆けてくる足音が近づいてくる。
え、夢なのかな…?
わたしは布団をぎゅっと抱き締める。
だって
開いた扉から誰かが保健室の中に入ってきた。
「…なんで入ってくるかな」
「
「
何か話して…。
あ、だめだ…もう何も考えられない。
「心配だから高校に戻ってきたら」
「体育教師の
「
「
「さすが、銀色狼だね」
「本気にならないタイプが何してんの?」
「お前、どういうつもりだよ」
「どういうつもりって、ただ真似しただけだけど?」
「保健室で
「
「何年付き合ってると思ってんの?」
「見なくても分かるよ。
「知ってるでしょ? 俺が“悪い男”だってこと」
「――――そうだな」
「お前は悪い男で誰よりも“一途”だ。中学の時も今も」
「心の中では決めてるくせに」
「2人を振り回して」
「そろそろ
「このままだといずれ2人とも失くすよ?」
「お前みたいに?」
「じゃあ
わたしの頭を優しく撫でると、
そして、すれ違う瞬間に言った。
「
でももう、いいや。
「
「
わたしは寝ながら
ぽたっ、と右目から一粒の涙が光のように輝いて
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