Silver snow8*わたしの居場所だから。
1
言ってしまった。
だけどもう、わたし、諦めない。
*
「…良かった。まだ誰も来てない」
12月9日の早朝。わたしは1年A組の教室にいた。
幸いひどくならずに済んだ。
1日で治るなんて、
わたしはぎゅっと黒のパーカーが入った紙袋を抱き締めた後、
書いた手紙も一緒に紙袋の上に置いておこう。
ガラッ。
教室の前の扉が開く。
え、
どうしよう…。
紙袋の黒のパーカー置いたら教室から出て行こうと思ってたのに。
わたしの胸がドキドキと音をたてる。
「
「お、おはよう」
わたしが動揺しながら挨拶を返す。
雪の羽なんてすぐに溶けてしまう。
それでも
何度でも。
昨日はそう強く思った。
そして今、元気になってここにいる。
だけど
保健室で
どんなに嬉しい言葉をもらっても、いざ会ったら突きつけられる。
“
“わたしは、みんなと一緒にいるべきじゃない”ってこと。
だから…。
「ん? 何これ」
ピラッ。
紙袋の黒のパーカー置いたら教室から出て行こうと思ってた。
会いたかったけど会いたくなかったから。
手紙の『パーカー貸してくれて、昨日も家まで来てくれてありがとうございました。でももう
逃げるなら今しかない――――。
わたしは教室の後ろの扉から出ようとする。
ガシッ。
え…腕掴まれて…。
「『もう隣にいられません。』ってなんだよ」
「俺の隣はお前しかいねぇって昨日も言っただろ」
「パーカーだってこれからも貸すつもりなのになんで離れようとするんだよ」
なんで、そんなこと言うの?
期待しちゃうよ。
わたしは抵抗する。
「放して下さい」
そう言いながらもわたしは
「放して欲しかったら直接言えよ」
「“ もう隣にいられません”って」
「っ…」
「言えないならこんなこと書くなよ」
そう言うと
「…
「廊下を歩いていく足音が聞こえた」
「あれ、お前だろ?」
「…!」
え、え、バレて…。
「やっぱりな」
「何を勘違いしたのかは知らねぇけど」
「俺はお前を手放すつもりねぇから」
「この先、何があっても」
「え…」
――わたしは何があっても、
わたしは暖かな一筋の涙を
窓から降り注ぐ暖かな光が教室の中をキラキラと照らしていく。
それでもいい。
これからも友達として
ガラッ。
教室の前の扉が開いた。
「
もしかして
「
「なんだよ、その白いマフラー」
「あーこれ? 知らない女の子に貰った」
「でも、俺にはこの色は似合わない」
「
え、黒ずきんなのに?
あ、禁断の果実みたいな甘い香り…。
「…
「…
そう
え…それってどういうこと?
「おい、何してんだよ」
「
「後は
「どうする?」
…知りたい。
過去に何があったのか。
だから、
*
「今日、ファミレス行く?」
刻々と時間は過ぎていき、放課後。1年A組の教室で鞄を左肩に掛けた
「ごめん、
わたしの近くに立つ
「私と
え、わたしも?
わたしは
あ、
「うん。
「分かった。
ガタッ。
「…って、また勝手に一人で行くなよ」
「
「私も自分の席で話すから」
わたしも立ち上がり
右隣のわたしと左隣の
その間に
「…………」
「…………」
わたしと
緊張する…。
早朝に
だけど…。
“今が聞く時”。
「あの、
「ラインでも謝ったけど」
「
「ああ見えてゆり、B組の青井と仲いいからさ」
わたしはびっくりする。
え…ゆりちゃん、青井くんと仲良しなの!?
「B組の青井は、ゆりが好きみたいだけど」
「ゆりは
「昨日の電話でも分かったと思うけど」
「
座りながらわたしはスカートの上でぎゅっと自分の両手を握り締める。
「
「悪いよ」
「だって
「
「違うよ」
「友達として好きなだけだよ」
「だから大丈夫」
わたしがそう答えると、
「…
え…。
わたしは動揺する。
「昔の自分?」
「うん…」
窓の外で霧雨が降り出した。
「私もね、中2の時」
「
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