2
*
…あれ?
保健室?
開いたカーテンレールに、
ふわっと天使の翼のように広がるカーテン。
ギシ…。
あ、待って。
お願い。
キスしないで。
*
心の中でそう強く願った時、わたしのスマホが鳴った。
「はっ…」
わたしはベッドの上で目を覚ます。
え…真っ暗…もう夜?
ぽたっと右目から涙が零れ落ちる。
なんだ、夢か…。
ヴーヴー。
わたしのスマホからバイブ音が鳴り響く。
…あれ?
電話鳴ってる?
誰かな?
え、
まさか…まだ夢でも見てるのかな?
とりあえず出てみよう。
応答のボタンを押し、耳元にスマホを当てる。
「…もしもし」
『
耳元に響く低くて甘い声。
わたしは飛び起き、ぎゅうっと白色のスマホを握り締める。
え…なんで…。
『何も言わなくていいから』
『今から俺が言うことちゃんと聞いとけよ』
え?
ドキン、ドキンとわたしの胸が高鳴る。
『何休んでんだよ』
え…。
わたしは右耳にスマホを当てたまま固まる。
『前、言ったよな?』
『構うよって。
わたしは動揺する。
そんなこと言われたって…。
好きでこんな弱く生まれたんじゃないのに。
ぐっとスマホを持つわたしの右手に力が入る。
「…たい」
『は?』
「今すぐ会いに行きたい」
『ニャー』
『おいこら、やめろって』
猫の声?
まさか…。
わたしはベットから降りて、
シャッ!
ベランダに続く扉を隠した淡い青色の雪柄のカーテンを開け――――ガチャッ、ガラッ。
ふわっとカーディガンが羽のように広がる。
裸足のままベランダに飛び出す。
雪混じりの大粒の雨がキラキラと宝石のように輝く。
『あーあ、見つかっちまったじゃねぇかよ』
目が合い、わたしの頬が熱くなって泣きそうになる。
ベランダの手摺りを掴みながら下を見ると、
わたしは震えた手でスマホを持ち、耳に当てたまま声を絞り出す。
「なんで…」
『池田から家の住所聞いた』
『会えたな』
わたしの両目が潤む。
『
『何の為に隣になったんだ』
『隣にお前がいなきゃ意味ねぇだろうが』
「――――……っ」
わたしの顔が、かああっと一気に熱くなる。
『お前が弱ぇのは知ってる』
『だから隣で待ってる』
『また明日な』
プープープー。
その言葉を最後に通話が切れた。
わたしは耳からスマホを離し、手摺りを掴んだまま、
ふわふわパジャマ、カーディガンで隠せて良かった…。
裸足の足がじんじんする。
顔は見えたけど遠いな…。
そんなふうに言われたら今すぐここから飛んで行きたくなっちゃうよ。
「…羽があったら飛んで行けるのにな」
でも、わたし、“雪”だから。
雪の羽なんてすぐに溶けてしまう。
それでも
何度でも。
だから…。
「待っていて」
わたしは優しく微笑む。
「絶対、元気になるから」
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