2
*
「保健の先生、いないみてぇだな」
数分後、保健室に着くと
保健室の中は、薬品の匂いが漂っている。
ベットにわたしをゆっくり降ろすと、わたしはシューズを脱ぐ。
夢の中にいるみたい。
「横にならねぇの?」
「うん…このままの方が呼吸しやすいから…」
「分かった」
――――シャッ!
ふわっ。
わたしに布団をかけてくれた。
「ありが…」
そうお礼を言いかけると、
ギシッ…。
わたしは突然のことに頭が追いつかず緊張で固まる。
「あ、の…」
なんで隣に?
「ん?」
「布団は…?」
「いらねぇ、隣に枕あるから」
あ…
「早く寝ろ」
どうしよう…。
ぽた。
わたしの右目から出た一粒の涙が零れ落ちる。
その涙は、まるで光のように輝いて消えていく。
嬉しくて胸がドキドキしずきて…寝られそうにない。
*
「
放課後、カラオケ店の部屋で
「うん」
わたしは短く答えた後、
「保健室で寝られたおかげで…」
そう付け加えた。
思い出すだけで顔が熱い…。
あの後すぐ、保健室の先生が来て、
だから寝られた訳で…。
保健室の先生が来なかったら寝られなくてここに来られなかったかも…。
テーブルの真ん中には皿の上に乗ったホワイトチョコと苺が乗ったハチミツトーストが置いてあり、
その横にナイフとフォークがあり、更にその前にショコラソースが入った翼がついた小さな白い瓶が置かれている。
飲み物はホットキャラメルマキアートが4つ並んでおり、コップからは白い湯気が出ている。
飲み物は
「ハチミツトーストおいしいっ」
わたしと
それを見て
「周りにハートのオーラがキラキラ飛んでるね」
「あぁ、うぜぇくらいにな」
「この白い瓶は?」
わたしが疑問を抱くと、
「あー、
「魔法の瓶?」
「
「はいはい」
そして切ったトーストをフォークで刺す。
「
「え」
「早くしろ、ソースが垂れる」
わたしは口を開けると、
「どう? 美味いだろ?」
わたしは顔を熱くしながらコクコクと
そして横に置いてある飲みかけのホットキャラメルマキアートを飲む。
「それ俺の」
「え、あ…」
ますます顔が熱くなる。
「なんだよ、その顔」
「うまっ」
「お前は食べなくていいから歌え」
「じゃあ
「は?」
「よし、歌いまくろう」
「やるね、銀色狼」
「毒林檎もな」
2人とも笑顔で…つられてわたしも笑ってしまう。
「はい次、わたし!」
2曲目が流れると前で
キラキラしてる。
わたしも歌ってみたいけど、ふかふかのソファーに座ってるので精一杯…。
「次、
「…え?」
「え? 名前、
――――
わたしの胸がじ~んと熱くなる。
わたしは、口を手で押さえながら涙を零す。
その涙が、頬をぽろぽろと伝う。
「え、どうしよ…泣かせちゃった?」
「名前知ってるって思わなかったから…嬉しくて…」
「同じクラスなのに知らない訳ないじゃん」
わたし、こんないい人に嘘をついたんだ。
わたしの眉が下がる。
ぽたぽた…。
わたしの両目から大粒の涙が零れ落ちていく。
「…ごめんなさい」
わたしが震えた声で謝ると、
「え、何がごめんなさい?」
わたしは震えた自分の手をぎゅっと握る。
「先週、初めてみんなと一緒にカラオケ店に行ったけど」
「
「『たまたま体調悪くなっただけ』って答えたけど本当は嘘なの」
「え、嘘? どういうこと?」
「
「生まれつき喘息持ちで体が弱い」
「そのせいで体力はみんなの半分しかなくて何をやってもすぐに疲れてしまう」
「だろ?」
「なんで
「あっ、もしかして」
「カラオケ店を出て行った
「あぁ、そうだよ」
わたしはソファーに座りながら深く頭を下げ、
「ごめんなさい」
目に涙をいっぱい浮かべ再び謝る。
「わたし、体が弱いの。だから…」
「
わたしは両目をぎゅっと瞑る。
「分かりません」
「友達だからだよ」
わたしはびっくりして顔を上げる。
「え…友達?」
「なんで嘘つくんだろう? って思ってたけど」
「そういうプライベートなことは言いにくいよね」
「周りがなんて言おうと私は元気とか体が弱いとかそんなの気にしないし」
そう言った
「俺も。
「てか、むしろ」
「可愛いって思ったしね」
「は?」
「本気にならないタイプが何言ってんの?」
「そうだよ」
「ちょっと
「ごめんね、
「困らせちゃったね」
「い、いえ…」
「あっ、そうだ」
「
「え、いいの?」
「もちろん。
「あぁ」
「
あ…お母さんからトークが…着信履歴も…。
だけど今日は見なかったことにしよう。
わたしは
今まで両親しか登録してなかったのに一気に3人も増えた。
嬉しいな。
わたしは幸せそうな笑みを零す。
「
「友達なんだから敬語じゃなくてタメ口でいいからね」
「私達のこと名前で呼んでくれていいから」
「うん、分かった。
「り、
「ぎ…」
わたしの顔が、かぁぁっと熱くなる。
「やっぱり、
「まぁ、それがいいかもね。この2人、ファン多いし」
姫乃ちゃんが言うと、
「ぎ、しか言えてないのに」
「
「ちょっと
「てか、私と呼び方被せないでよ」
「友達なんだからいいじゃん」
「じゃあ私は
「俺は
「
「はい、
「歌の前に写メ撮ろ。席順で」
わたし達は席順で座り直し、
そして自撮り棒のケーブルをスマホに挿し、棒を伸ばして短く調整すると、わたし達はスマホを見る。
「
「はい、チーズ」
パシャッ。
わたしは満面の笑顔を浮かべ、みんなと写メを撮った。
ひまわりみたいに笑う
無表情の
満面の笑顔を浮かべた普通のわたし、
にこっと笑う
「後で写メ送るね」
「じゃあ
マイクを持ったわたしの手が
「みんなありがとう、今日、一緒に走ってくれて…」
嬉しすぎて歌えなかったよ。
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