2
真っ暗な空にキラキラとお星様が光輝く。
「俺の彼女に何か用?」
黒のパーカー姿の
え…
「誰だてめぇ」
金髪ヤンキーはしゃがんでわたしの腕を掴みながら強張った顔で
「よ、
「この子、
「普通の子選ぶなんて意外。
「てっきり“
え…。
「いいから早くその手放せよ」
「怖っ、マジな顔すんなよ」
「はいはい、放しますよ」
金髪ヤンキーはパッと腕から手を離すと立ち上がる。
そして
「今日は
「また今度じっくり話しようぜ、
金髪ヤンキーは背を向けたまま歩いて行った。
「おい、
「うん、大丈夫」
「あ、ありがとう」
「こんな夜道を一人で歩いてんじゃねぇよ」
「ごめんなさい」
「コンビニに用があって…」
「コンビニ?」
「うん、卵切れちゃってお母さんの代わりに買いに…」
「でも着く前に疲れちゃって…」
「分かった」
「俺が代わりに買ってくるわ」
「わたしも行きたい」
わたしは、目に涙を浮かべて言う。
「うん」
「一緒に行こう」
ぎゅっ。
わたしはその手を掴んで立ち上がった。
*
「卵、あって良かったな」
コンビニの扉から出る時、
「うん」
卵、残り一パックだけだったから危なかった…。
でも卵買えて良かった。
わたしの口元がほころぶ。
嬉しい。
「
*
わたしと
どうしよう。
送ってもらえることになるなんて…。
さっき、わたしのことを金髪ヤンキーに“彼女”って言ったのはなんで?
金髪ヤンキーが言ってた
金髪ヤンキーとどういう関係?
いっぱい聞きたいことある。
だけど聞くのが怖い。
「何かあるなら聞けよ」
え…
「あの、さっきの金髪ヤンキーって…」
「中学が一緒だった」
「姫…
「俺の彼女に何か用? って言っただろ」
怒ってる?
「え、それはどういう…」
「
そう言った
わたしなんかが立ち入っちゃいけないと思った。
その時、ヒュー…。
突然、ハートの花火が上がり、
ドォォン…。
夜空にキラキラとピンク色に輝いた。
「あ、花火…」
「たーまやー」
花火に向かって遠くにいる子供連れの両親が声を上げる。
「びっくりしたわ」
「もしかして知って…」
「さぁな」
「冬の花火綺麗だな」
「くしゅんっ…」
わたしはくしゃみをする。
「寒いのか?」
「コート脱げよ」
「え、でも…」
脱いだら余計に寒いんじゃ…。
「早くしろ」
わたしはコクンと頷き、灰色のダッフルコートを脱ぐ。
すると
ふわっ……。
わたしの両肩にかけてくれた。
その上からダッフルコートを着せる。
「これで大丈夫だな」
バニラな香りがする。
全然、大丈夫じゃない。
アイスみたいに溶けてしまいそう。
「あの」
「ん?」
「わたしの家の隣の人、猫飼ってて」
「ぎ…
「わたしの家のベランダに
「でも喘息持ちだから部屋から見てるしか出来なくて」
「今日も家を出たら猫が隣の家から出てきて鳴いてくれたと思ったら」
「わたしじゃなくて仕事から帰ってきた飼い主さんに鳴いただけで…」
わたしの顔が曇る。
「なんかその猫、俺みたいだな」
「近くなったと思ったら遠ざかる」
「あ…」
「それで他に言いたいことは?」
「彼女じゃないのに」
「どうしてさっき、わたしを彼女って言ったんですか?」
ふわっ……。
今度は羽の花火が上がった。
「俺の黒ずきんだから」
羽の花火が夜空にキラキラと輝いて、すぅっと消えていく。
え…。
「隣の猫、ベランダに
「飼い主に鳴いたんじゃなくてお前に鳴いたのかもしれない」
「昨日はカラオケ店まで辿り着けた」
「今日はコンビニで卵を買うことが出来た」
「少しずつ進んでいけばいい」
「
「どこまでも飛んでいける」
わたしの両目がじわりと潤む。
「でも永遠じゃない」
「輝いて消えてしまう」
「雪の羽だから?」
「え」
わたしはびっくりする。
「
「お前の名前だろ?」
「あ、知って…」
わたしの声が震える。
「雪の羽は輝いてすぐ溶けてしまうかもしれない」
「でもその時は消えないように俺が銀色に照らすから」
「何も諦めるな」
黒ずきんの姿になったわたしは
止めようとしても止まらない涙。
涙のせいで、
――うん。
この先に何があっても絶対に。
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