2
*
「こら、
5限。国語の先生が
国語の先生は教科書を開いたまま
「ふぁあ…っ」
伏せ寝した
「…
国語の先生が、わたしに向かって囁いた。
先生、なんでそんなこと言うの?
わたし、
すると右隣の席の
わたしは突然のことに驚く。
え!?
一体何が…。
「ほんとそうですよね」
「ギャー!」
「女子! 静かに!」
国語の先生は注意すると
「
「すみませーん」
すると
「…
「あ、うん…」
顔だけじゃなくて全身が熱い。
どうしよう。
この席、ドキドキでいっぱいで授業に全然集中出来ないよ。
*
「――――では、気をつけて帰るように」
時間は過ぎて行き、帰りの
池田先生は教壇から降りて少し歩き、
ガラッ!
前の扉を開け、教室から出て行く。
それに続いてテニス部の5人の女の子が楽しげに話しながら教室を出る。
わたしは体のこともあって運動部はだめで、
文化部の部活に入部しようと思っていたけど、それも両親に反対されて帰宅部に名前を書いて4月の下旬に提出済みで…。
お母さん、心配性だから早く帰らないと…。
「
右隣の席の
「あ、はい」
「俺達今からカラオケ行くんだけど良かったら一緒に行かない?」
まさか、
カラオケ行ってみたいけど体のことやお母さんのこともあるし…どうしよう。
ガタッ。
左隣の
「
え…。
一人で出て行っちゃった…。
「おい
「まぁ、
「ごめんね、
そう謝ってきた。
わたしは首を横に振る。
すると
「
「そうなんですか?」
「うん。レアだね」
珍しいんだ…。
「それで
――
なんて言われたら行くしかない。
「行きます」
ガタッ。
わたしも席から立ち上がり、灰色のダッフルコートを羽織ってふわふわのマフラーを首に巻き、鞄を右肩にかける。
「じゃあ行こうか」
わたしは
*
しばらくして、
「あ、やっぱり待ってた」
「
「遅せぇよ」
「ほら
え…
言葉はぶっきら棒だけど優しい。
わたしは笑みを
わたしも歩き出した。
歩道の左側には木々が生えていて、右側は2車線の道路になっている。
オレンジ色の夕日、綺麗だな……。
*
「おい、
カラオケ店内で
店内は色んな歌声が聞こえて
「えー、何~?」
他校の女の子達がびっくりしている。
キラキラでオシャレな受付のロビー。
大ボリュームの音楽。
わたし、場違いだ。
受付の男の店員が駆けてきた。
店員は耳にイヤホン、シャツにネクタイ、ベストみたいな制服を着ている。
「大丈夫ですか?」
「はい」
わたしは店員に笑って返す。
その笑みを見て、店員はほっとする。
「あのさ、間違ってたらごめんね」
「もしかして体弱かったりする?」
突然、わたしは
「え…」
「周りはサボってるって言ってたけど」
「体育、サボってるように見えなかったからさ」
わたしはへらっと笑う。
「ううん、たまたま体調悪くなっただけ」
「少し休んだら良くなったから大丈夫です」
わたしがそう明るく言うと、
「良かった」
「…………」
本当のことを言ったら、きっとみんなひくと思う。
だから元気でいなくちゃ。
「俺、受付してくるね」
「
わたしは
受付の男の店員が
「私が受付するから」
男の店員と同じ制服を着た女の店員が横取りする。
「今、受付でキスをして頂いた2名様が当日ルーム料金1時間無料になるキス割と」
「カラオケ歌い放題とソフトドリンク飲み放題の最初の1時間カップル割」
「がありますがどちらに致しますか?」
「キス割がオススメなんですけど」
「キス…」
「カップル割で」
「かしこまりました」
女の店員が残念そうに返すと男の店員が肩をぽんと叩き、
「では3階23号室、ご案内します」
と言った。
「じゃあ、とりあえず部屋まで行こうか」
わたしは少し戸惑いながらも、うん、と答える。
するとピロン♪
わたしのスマホから音が鳴った。
わたしはチャックを開けて鞄の中から白色のスマホを取り出して見てみると、緑色にチカチカと光っている。
もしかして…。
わたしは恐る恐るスマホの画面をタップするとラインのトークが届いていた。
あ…やっぱりお母さんからだ。
わたしはトークをタップし、ラインのトーク画面を開く。
『まだまだ、かかる?』
『今、どこ?』
『体調悪くなったの?』
『お母さん心配です』
『返事して』
サァッと血の気が引き、複雑な気持ちに駆られる。
トークだけじゃなくて着信履歴まである…。
どうしよう…。
嘘付いてもバレるかもしれないし、
「今、友達とカラオケ店にいる」なんて返信したら、きっと怒られて放課後遊ぶの禁止にされるかも…。
じゃあ既読スルーのまま乗り切る?
…乗り切れそうにない。
「
「なんでもないです」
みんなとカラオケしたいけど…。
わたしはスマホで文字を入力していく。
『違う、元気だよ』
『今から帰るね』
そう返信すると、
『分かりました』
『気をつけて帰っておいで』
お母さんからトークが返ってきた。
「あの」
わたしは
「え」
「
「みんな、ごめんなさい」
「用事が出来たので帰ります」
わたしは鞄を右肩にかけたまま、
――――タッ!!
「ええ!?」
「
*
わたしはスマホを鞄の中に入れてチャックを閉めながら一人で歩いて帰る。
涙が止まらない。
行きは
でも今はひとりぼっち。
あともう少しで
「
後ろから叫び声が聞こえた。
わたしはハッとする。
まさか…。
わたしはゆっくり振り返ると、驚きの余り絶句する。
ガシッ!
え、後ろから駆けてきた
わたしは
「おい、大丈夫か?」
気遣う
「…………」
わたしは何も答えない。
「おい!
名前を呼ばれ、ハッと我に返り、
だけど
「あ、もう大丈…」
「なんで泣いてんの?」
話しても無駄だって分かってる。
それにもし話したら、ひいて二度と話してくれなくなるかもしれない。
だけど生意気かもしれないけど、
わたしは口をゆっくりと開く。
視界がぼやけ、きらきらと光が揺れて――――。
「…わたし、見た目はみんなと変わらないけど」
「生まれつき喘息持ちで体が弱いんです」
「そのせいで体力はみんなの半分しかなくて…」
「何をやってもすぐに疲れてしまうんです」
信じてもらえず、「あざとい、甘えんな」って言われるだけなのかな。
「…やっぱりな」
「え?」
わたしはびっくりする。
「
「俺も体育、サボってるようには見えなかった」
「詳しい事情は分からないけど、体弱いんだろうなってずっと思ってた」
その答えを聞いたら、
――――ぽた。ぽたぽた。
涙が次から次へと溢れ、止まらなくなった。
「あの…、このことは秘密にして下さい」
「ふたりだけの?」
わたしの顔が、かぁっと熱くなる。
「はい」
「俺はいいけど」
「
どうしてそんなことを聞くの?
「はい」
わたしは
「みんなにバレたっていいじゃねぇか」
「俺は気にしねぇし」
「でも…」
「あー、面倒臭ぇな」
わたしは突然の
うん、やっぱり、そうだよね。
弱いわたしと関わるの面倒だよね…。
「そう思ったのなら、もう構わないで下さい」
「は?」
「構うよ」
「え…」
わたしは腕を掴まれたまま立ちすくむ。
「俺が
「これからもずっと」
優しい夕日の光が、わたし達をそっと見守るように、暖かく照らす。
「なん…で?」
わたしは弱弱しい声で尋ねると
「
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