Silver snow3*隣の席だから。
1
話しても無駄だって分かってる。
だけど生意気かもしれないけど、
*
「ねぇ、今日こそ
12月3日。
ゆりちゃんの後ろにはツインテールの女の子とショートボブの女の子が並んで立っている。
灰色のダッフルコート羽織ってふわふわのマフラーを巻いて黒のタイツを履いてるわたしと違って、ゆりちゃん達は制服に素足で寒そう。
ゆりちゃん、今日は2人の女の子連れてる…。
わたしがそう思いながら固まっていると、
「ねーねーあれ見て~」
「うわ、黒ずきんとゆりじゃん。またやってる~」
周りの女の子達がゆりちゃん達とわたしを交互に見ながらコソコソ話をする。
「昨日はさ、
「やっぱり普通の黒ずきんが
ゆりちゃんがつんけんした口調で言うと、
「そーそー、ゆりの言う通りだよ」
「さっさとゆりに席譲って」
ツインテールの女の子とショートボブの女の子が続けて言い、キッ! とわたしを睨みつける。
「でも…」
わたしは震えながらそう声を絞り出す。
「何? 口答えする気?」
ゆりちゃんの表情はとても怒っている。
「あ…」
わたしの顔が青ざめる。
「じゃあ聞くけど、黒ずきん、可愛くなる為に努力したことある?」
「ないでしょ」
ゆりちゃんは自分の髪に触れる。
「私、毎日超早起きして
「だから普通の黒ずきんが
わたしは右手にかけた鞄のヒモをぎゅうっと強く握る。
隣の席譲るまで退かないつもりだ…。
どうしよう…。
「はー、またかよ」
「っ……」
ゆりちゃんの目が揺れる。
「
「キャー、本物!?」
ゆりちゃんに続けてツインテールの女の子とショートボブの女の子が物凄く驚く。
わたしもびっくりする。
「おはよう、
「お、おはよう…」
「何々~? また女でモメてんの?」
「
茶髪の女の子と黒髪の男の子が歩きながら
――じゃあ、また明日ね。
わたしは昨日の
あ…昨日の…。
茶髪の女の子は
わたしと同じ1年A組。明るくて華やかなヤンキーガール。
全体的に色白な肌をし、前髪は右に流れ、ふわふわなロングの髪の先を軽く巻き、左肩の後ろに髪を流し右肩には髪をふわっとのせ、
ベストと淡い青色でチェック柄のリボンの上に雪色のブレザーを羽織り、薄い灰色に水色のチェック柄のスカートの丈を短くして履いていて、
腰にはカーディガンを巻き、右肩にチョコレート色の鞄をかけている。
黒髪の男の子は
同じく1年A組。誰にでも優しくて
さらっとした髪に整った顔。片耳にはピアスをつけ、全体的にスラッとした体で細く長い足で立ち、
黒のセーターと淡い青色でチェック柄のネクタイの上に雪色のブレザーを羽織り、薄い灰色に水色のチェック柄のズボンを履いていて、左肩にチョコレート色の鞄をかけている。
「モメてねぇよ、挨拶しただけ」
「もう大丈夫だよ」
「!?」
「それで普通の黒ずきんがなんだって?」
「マジヤバいって!」
「ゆり、行こ」
ツインテールの女の子とショートボブの女の子が慌ててそう言い、ゆりちゃんを連れて走って逃げて行く。
「あー、行っちゃったね」
「
「うん…」
わたしは
みんなの注目の的。
周りの生徒達の視線が一斉にわたし達に集まる。
わたし、
夢みたい。
「
「さすが茨姫。美かわだな!」
男の子達が盛り上がる。
「
「りんり~ん!」
両側の女の子達が手を振ると
「キャー! 毒林檎もらっちゃった!」
「冷たい銀色狼もさいこ~!」
わたしは首を傾げる。
「毒林檎? 銀色狼?」
わたしが疑問に思うと
「あー、銀色狼は
「
「だからファンの間で苗字が
「毒林檎もらっちゃったっていうのは、
わたしはびっくりする。
そうなんだ…すごい…。
「それより、昨日はシューズ飛ばしちゃってほんとにごめんね」
「い、いえ…。でもどうして走って?」
「午前0時の魔法が解ける前に部屋で彼氏寝取った」
「とかB組の女の子達に言われて、違うって否定しても信じてもらえなくてさ」
「走って逃げてたらシューズが…」
「な、なるほど…」
「お互い大変だけど今日から仲良くしようね」
「あ、はい」
わたしがそう緊張気味に短く答えると、
ひまわりみたいな明るい笑顔…かわいい。
わたしとは本当に正反対…。
「さすが毒林檎」
「もっと愛想良くしたら? 銀色狼」
2人のやり取りを見て、わたしと
「キャー! 銀色狼と毒林檎が見つめ合ってる~!」
「てかさ何? あの“普通な子”」
「最悪~」
進む度に女の子達の不服が飛び交う。
見た目が普通でごめんなさい。
だけど、
*
「改めて見ると一番後ろの横列、豪華だな」
朝の
わたしの顔が一気に、かああっと熱くなる。
1年A組は男女15人ずつで30人いて、
廊下側からにこっと爽やかな笑みを浮かべる
普通のわたし、
無表情な顔で、ふぁあ…っと
キラキラな姫オーラを出した
つまり…。
今更気づいたけど、わたし、とんでもなくすごい席にいる。
まさか、
「…
「黒ずきんが
「物凄く普通で浮いてるし」
窓側の1番前の席に座っているゆりちゃんがわざと大きな声でツンとした口調で言う。
ツインテールの女の子とショートボブの女の子が
わたしは俯き、机の下で、ぎゅっと自分の両手を握り締める。
そんなの分かりきってる。
だけどそれでも
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます