2
*
入学式の後。
ふらぁ…。
だめだ、もう限界。
みんな教室に戻って行っちゃったし、少し休もう…。
疲れてしまったわたしは廊下の窓の下で崩れ落ちしゃがみ込む。
――――パタ。
後方から、シューズの音が響いた。
パタパタ。
誰かが近づいてくる。
「入学式寝てたわ」
「マジで? 俺もだよ」
男の子達の声…!?
わたしは慌てて顔をあげる。
すると雪みたいに手の平に飴が降ってきた。
わたしは首を傾げる。
飴?
“銀のミルク”って書いてある…。
銀色の髪の男の子と黒髪の男の子の後ろ姿が見えて、並び的にわたしの前を通ったのは銀色の髪の男の子で。
見た訳じゃないから確証はないけど、
怖いって思ってたけど、ほんとうは優しい男の子なのかもしれない。
温もりを感じながら、大粒の涙が頬から滑り落ちていく。
「甘いなぁ…」
飴を食べたら、ほっとして涙があふれてきて…元気までわいてくる。
わたしは、この日からずっと、
*
だけど話せたことはまだ一度もない。
はぁ、と息を吐く。
明るい女の子達に囲まれる元気な
ほんと、正反対だな。
わたしはぎゅっと自分の手を握り締める。
なんだろう……。
わたしと別世界にいるみたいだ。
わたしがあの輪に入ることはきっと一生ない。
*
放課後、家に帰るとお母さんが玄関のドアの前で出迎えてくれた。
「
お母さんはそう言い終えると、優しく笑う。
お母さんの頬、真っ赤…。
寒い中、わたしのこと待っててくれたみたい…。
お母さんは主婦でお父さんはサラリーマンだから、お母さんと一緒にいる時間の方が長い。
「出迎えなんていいのに…。待ってる間寒かったでしょ?」
「このくらいの寒さなんて平気よ」
「それより、体育の持久走、大丈夫だった?」
お母さんは心配そうな表情で尋ねる。
「うん、最後まで走りきったよ」
わたしは笑顔を浮かべながら答えつつも、内心ではもやもやしていた。
あ…お母さんに頭優しくぽんされて…。
「そう、頑張ったわね」
お母さんは、ほっとした笑みを零した。
「暖かいココア入れるから早く中に入りなさい」
お母さん、嬉しそう…。
視界が薄暗くなっていき、闇が広がっていく。
ほんとうは“休んでた”なんて言えない。
優しくて心配性なお母さんには。
それに正直、出迎えされるの嬉しくない。
“自分だけ違う”って言われてるみたいで、すごく苦しいから。
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