新しい世界へ!②
悠たちが黒煙を上げる都市に近づくにつれて、周囲の風景が少しずつ変わり始めた。荒廃した大地はやがて、廃墟となった街並みが見え隠れする場所へと変わり、建物が倒壊した通りが広がっている。だが、意外にもその道の周りには少しばかりの花が咲いていたり、小動物が走り回っていたりと、完全に死んでいるわけではないことが感じられる。
「うーん、なんか不思議な場所だな。」悠は辺りを見回しながら言った。「ここが戦争状態っていうのが信じられない。」
「ほんと、普通の街ならもっと荒れてるもんね。」リリアも周囲を見渡す。「でも、こんなところにも命が息づいてる感じはあるわ。」
ピリィが嬉しそうに手を振った。「そうそう!この世界って、意外とどこかに希望が残ってるんだよ。だからこそ、君たちが何かを変えられる場所でもあるんだ!」
「希望か…」悠は少し考えてから口を開いた。「でも、あの街の中で何が起きてるのか、さっぱりわからないよな。」
「大丈夫!」ピリィが胸を張って言った。「君たちが来たことで、物事は必ず動き出すはずだよ!さぁ、急いであの街に足を踏み入れよう!」
悠はうなずいて、リリアとセリナとともに歩き出した。少し先には、都市の入り口が見えてくる。その場所はまるで誰かが戦の準備をしているかのような雰囲気を持っていた。
「思ったよりも、戦ってる感じはしないな。」リリアが歩きながら言う。「戦争の最中なのに、どこか…」
「静かだね。」セリナが言葉を続けた。「普通なら、もっと騒音が響くはずなのに。」
悠はその静けさに違和感を感じつつも、足を止めなかった。「ちょっと警戒しながら行こうか。」
そのとき、都市の中から一人の人物が悠たちに向かって歩み寄ってきた。
「おや?新顔だな。」その人物は、きらきらとした笑顔で言った。背中には大きな槍を担ぎ、少しコミカルな姿勢で立っている。その服装は明るく、まるで戦士というよりも冒険者らしい、動きやすそうな装備をしている。
「君たち、何か目的があってここに来たのか?」その人物は、明るく軽い調子で声をかけてきた。
「君は…?」悠がその人物を見つめると、相手はにこやかに答えた。
「俺の名前はラディ、街の自警団の一員さ!ここに来たんだろう?助けに来てくれたってことさ!」
「助け?」リリアが目を丸くする。「ここで何が起こってるんですか?」
ラディは一瞬、言葉を選ぶように黙り込んだが、すぐに元気よく言った。「ああ、あれさ!最近、街を取り巻く場所に変な怪物が現れて、みんなビビっちゃってるんだ。でも、心配しなくていい。自警団はしっかりしてるし、君たちの力があれば、きっとあのモンスターたちも追い払えるさ!」
悠は少し安心したような顔をした。「そうか、ならまずは一緒に行ってみよう。」
ラディはニコッと笑って言った。「よし、来てくれ!きっと君たちの力が役に立つよ!」
それから、悠たちはラディに導かれて、街の中心部へと足を進めることになった。その途中、ラディの陽気な言動に、少しだけ明るい気分を取り戻しつつ、悠たちは目的の場所へと向かっていく。
この時点で、街に何が待っているのか、どんな問題が彼らを待ち受けているのかは分からない。ただ、少なくとも、彼らは手を差し伸べることができる存在になりつつあることを実感し始めていた。それぞれが少しずつ、希望の光を見つける瞬間を迎えていた。
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