管理者の塔
数日後、悠たちの前にそびえ立つのは、荘厳で圧倒的な存在感を持つ塔だった。空に浮かぶように佇むその塔は、「管理者の塔」と呼ばれ、選ばれた者だけが足を踏み入れることを許される場所だという。
悠はその塔を見上げながら、胸の奥に広がる感覚を噛み締めていた。これまで何度も危機を乗り越え、数え切れないほどの戦いをくぐり抜けてきたはずだ。しかし、この塔の前に立つと、得体の知れない重圧が全身を包み込むのを感じる。
「これが…“次のステージ”ってやつか。」
悠は小さくつぶやく。だがその声には、不安と期待が入り混じった微妙な響きがあった。
リリアが慎重に足を踏み出しながら言う。「こんな場所、物語でしか聞いたことないけど…本当に入れるのかな?」
悠はその声にハッとし、仲間たちの顔を見た。リリアもセリナも、少なからず緊張した面持ちだ。それを見て、自分がこの場で怯えてはいけないのだと思い直す。「俺がリーダーだって決めたんだから…ここで弱音を吐いてどうする。」悠は胸中でそう自分を叱咤した。
シェリーが静かに前に進み出る。「君たちなら大丈夫よ。」
その言葉はまるで確信に満ちていて、悠の心を少しだけ軽くした。「ここでの試練を乗り越えた者だけが、“管理者候補”として正式に認められるわ。もちろん、私が見習いになったときにも通った道よ。」
セリナが不安そうに口を開く。「でも、私たちにそんな責任のある役目が務まるんでしょうか…?」
悠は彼女の言葉に思わずうなずきかけた。セリナの気持ちはよくわかる。今まで彼らはただ生き延びるために戦い続けてきた。だが、「管理者候補」なんて言われても、何をどうすればいいのか全く想像がつかない。「本当に俺たちにそんな大層なことができるのか…?」
シェリーはセリナの肩にそっと手を置き、優しい笑みを浮かべた。「大丈夫。ここまで来られた時点で、君たちはすでに必要な素質を持っているわ。それに、これは君たちだけのためじゃない。君たちが新たな見習いとして成長することが、この世界や他の世界を守るためにもなるの。」
悠はその言葉を聞きながら、自分の内側に眠る不安を押し殺そうとしていた。「俺たちが他の世界を守る…?そんな大それたこと、本当に俺たちにできるのか?」自問自答を繰り返すたび、心の奥でくすぶる不安は拭えない。だが同時に、この場所に立っている自分が、これまでの自分とは確実に違うとも感じていた。
「…やるしかない、か。」
悠はそう言って拳を握りしめた。「俺たちはここまで来たんだ。引き返すなんてありえないだろ。」声に少し震えが混じるのを自覚しながらも、仲間たちに聞こえないよう努めて平静を装った。
シェリーは頷き、塔の扉を指差した。「その通り。君たちの新しい役目のための第一歩よ。それじゃあ、行きましょう。」
悠は塔の扉の前で立ち止まった。扉を押す手がわずかに震えるのを感じる。「俺は…本当にここを超えられるのか?」一瞬だけ、足がすくむ。しかし、すぐ後ろにいるリリアとセリナの存在を思い出し、震える拳をさらに強く握った。「俺がこの扉を開けなければ、誰が開けるってんだ。」
振り返らずに扉を押し開けたとき、悠はわずかに胸が軽くなるのを感じた。内部に広がる光景は、これまでの冒険とはまるで違う未知の世界だった。
そしてその日、悠たちは正式に“管理者見習い”として新たな試練の道を歩み始めたのだった。
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