魔族との対決



 戦闘が終わった後、悠たちは魔物たちの死体を確認しながら、村の周辺に何が起きたのかを探っていた。魔物たちの大きさと強さから察するに、ただの野生の魔物ではない。背後に何か大きな力が働いていることは間違いなかった。


「どうしてこんなものが村の近くに現れたんだ?」

 悠は不安そうに呟いた。


「私もわかりません。でも、私たち魔族の中でも、敵対している者がいます。」

 セリナが深刻な表情で答える。


「敵対している魔族?」

 リリアが目を見開きながら尋ねる。


「ええ。私たち魔族の一部は、古い体制に縛られていて、暴力や破壊を目的としているんです。昔はそれが当たり前だったかもしれませんが、今は少しずつ変わり始めています。」

 セリナは声を震わせながら話す。


「でも、ここに来た魔物たちはその暴力的な魔族の仕業だろうな。私たちの目的と合わない。」

 セリナは目を閉じ、力強く息を吐いた。


「じゃあ、これらの魔物たちも、ただの召喚獣か?」

 悠が尋ねると、セリナは静かに頷いた。


「恐らく。私たち魔族が強力な力を持つために、他の種族を支配することはできる。でも、私はそんなことは望んでいません。私は、この地で人々と共に生きていきたい。」


「じゃあ、どうすればいいんだ?」

 悠はその言葉を受け、次にどう動くべきかを考え始めた。


「今の私にできることは、過去の魔族の連中が何をしているのかを調べることくらいです。私の知識で行ける限り、調査をしてきます。」

 セリナは意を決して言った。


「セリナ、それなら俺たちも一緒に行くよ。」

 悠はセリナに向けて言った。


「えっ、でもそれは……」

 セリナは驚いたように声を上げたが、悠の真剣な顔を見て、すぐに黙り込んだ。


「俺たちは仲間だ。セリナだけに負担をかけるわけにはいかない。」

 悠はその言葉を力強く放った。


「ありがとう……」

 セリナはその言葉に深く感謝の意を込めて、黙って頷いた。



 数日後、セリナが導く魔族の拠点に到着した。そこは、古びた廃墟のような場所で、暗く不気味な雰囲気が漂っていた。悠は少し警戒しながらも、その中へと足を踏み入れる。


「ここが……」

 セリナがつぶやくと、悠も周囲を見渡した。


「ここに魔族の残党が集まっているのか?」

 リリアが尋ねると、セリナは頷いた。


「そうです。私の知っている限りでは、彼らはまだ反乱者として活動を続けています。でも、彼らは私にとっても危険な存在。直接対決は避けなければ。」


「分かってる。だけど、何か手がかりが掴めるかもしれない。」

 悠はその言葉を受けて、周囲を慎重に調べ始めた。


 そして、数分後、ひときわ目立つ大きな石の扉が見つかった。扉には奇妙な魔法陣が刻まれており、ただの廃墟ではないことを示していた。


「この扉……魔法陣だ。」

 悠はそれを指差して言った。


「この魔法陣は、私たち魔族でもかなり強力な部類に入るもの。開けるには、私の力を少しだけ使わなければいけません。」

 セリナが言った。その顔には真剣な表情が浮かんでいる。


「それじゃ、開けてくれ。」

 悠は頷き、セリナに扉を開けるように促した。


 セリナは目を閉じ、手を魔法陣にかざす。すると、魔法陣が反応し、ゆっくりと扉が開き始めた。


「これで……」

 扉が完全に開いた瞬間、悠たちはその先に広がる未知の世界を目の当たりにした。



 扉の向こうには広大な地下空間が広がっており、その中心には巨大な魔法陣が浮かんでいた。


「ここは……」

 リリアが声を震わせて呟くと、セリナは目を見開いた。


「まさか、こんな場所が……」

 セリナの顔に恐怖の色が浮かんだ。それは、悠がこれまで見たことがない表情だった。


「セリナ、何か知ってるのか?」

 悠が声をかけると、セリナは一瞬ためらった後、ゆっくりと口を開いた。


「この場所は……私の家族が築いた場所です。しかし、私の兄がここで悪しき力を使ってしまった。おそらく、ここに集まっている魔族は、私の兄の手先。」


「兄……?」

 悠は驚きながらも、その言葉を受け入れた。セリナの過去に隠された真実が、今ここで明かされようとしていた。



次回予告:「セリナの過去と決断」

 セリナの過去がついに明かされる! 彼女が抱えていた秘密とは? そして、悠たちはどんな決断を下すのか? 次回、魔族の支配を巡る壮絶な戦いが幕を開ける!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る