魔族と人間の架け橋?
セリナの加入から数日が経過した。悠たちはこれまで通り、村での生活と冒険を続けていたが、心の中には少しずつ不安が芽生え始めていた。
「セリナ、何してるんだ?」
悠がリリアとともに宿屋の外に出ると、セリナが一人、木の上で何かをしていた。
「うーん、この木、結構高いんですよねぇ。」
セリナは木の幹にしがみつき、何やら不安げに言った。
「その木、どうしたんだ?」
悠が一歩踏み出して尋ねると、セリナは顔を赤らめながら言った。
「実は、木の実が取れたらモフモフ団の新しいおやつを作ろうと思ってて……でも、ちょっと届かないんです。」
「は?」
悠は言葉を失った。
「いいから降りろ。」
リリアが冷静に指示すると、セリナはようやく木の上から降りてきた。
「ごめんなさい、つい……」
セリナは反省したように頭を下げる。
「いや、別に気にしてないけど……そんなにおやつにこだわる理由でもあるのか?」
「うーん、やっぱり、モフモフ団のメンバーが集まると、みんなで一緒に食べられるおやつがあるといいかなって思って。」
セリナはうつむきながらも、どこか誇らしげに言った。
その日の夜、悠たちは村外れにある小屋で休憩を取っていた。突然、宿屋の前で大きな騒ぎが起こる。
「悠さん、急いでください!」
リリアが息を切らしながら走ってきた。
「どうした?」
悠が立ち上がり、焦りの色を見せる。
「村の周りに魔物が現れたんです!しかも、ただの魔物じゃない……」
「また魔物か……!」
悠はすぐに外に出ると、村の周囲に設置された簡易的な防壁に向かって足を運んだ。
到着すると、そこには見慣れない大きな影が数体うごめいていた。それは、通常の魔物とは明らかに違う、異形の存在だった。
「これは……」
悠はその光景を見つめながら、心の中で冷静に状況を分析した。
「どうやら、魔族の仕業みたいだな。」
セリナが呟く。その顔には不安の色が浮かんでいた。
「魔族……?」
悠が振り返ると、セリナは頷いた。
「私たち魔族は、過去に何度も人間と衝突してきました。でも、最近ではその争いを止めようとしている者も増えてきたんです。私もその一人。」
「でも、こんな場所に魔族が現れるなんて……どうして?」
悠が問いかけると、セリナは目を見開いた。
「私もわからない。でも、これは私がきちんと説明しなければならない問題かもしれません。」
「それなら、今はまず戦おう。説明は後だ。」
悠は一歩踏み出し、魔物たちに向かって進む。
悠が戦闘態勢に入ると、セリナが後ろから声をかけた。
「悠さん、私も一緒に戦わせてください!」
「お前、戦えるのか?」
悠は驚きながらも振り返る。
「もちろんです!ただ、私は癒しの力がメインなので、戦闘にはあまり向いていませんが……」
「癒し?いや、むしろそれが必要だ。」
悠は頷きながら剣を抜く。
リリアやラグネル、ヴォルグがその場に集まり、準備を整え始める。セリナもその後ろに立ち、悠たちのサポートを決意した。
「魔物たちを倒すだけじゃない。ここで何が起こっているのか、きちんと突き止めるんだ。」
悠はその目に確固たる決意を込め、仲間たちを見渡した。
魔物たちが悠たちに向かって突進してくる。
「来るぞ!」
ラグネルが叫ぶと、ヴォルグはその背後で大きな槍を構える。
悠は冷静に剣を振るい、前方の魔物を一閃で切り倒した。その瞬間、セリナが手をかざし、癒しの光を周囲に放った。
「みんな、大丈夫ですか?」
セリナの声が響くと、傷ついた仲間たちがその光で回復し、戦闘を続けることができる。
「セリナ、もっと前に出てくれ!癒しだけじゃなく、もっと戦え!」
悠が指示を飛ばすと、セリナは力強く頷き、戦場へと向かっていった。
この戦闘は単なる試練に過ぎなかった。これからの冒険で、セリナがどれだけ強く、そして仲間として成長していくのか、悠には予感があった――。
次回予告:「魔族との対決」
魔物の背後に潜む真の敵は一体何か?セリナの過去が明かされる時、悠たちは大きな決断を迫られる――次回、魔族との接触がもたらす新たな試練とは!?
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