新たなるモフモフ団員?



村を救い、ひとまずの平和を取り戻した悠たち。しかし、戦いの疲労も癒えぬまま、彼らの元にさらなる波乱が訪れる。


村の長老が用意した質素な宿屋の一室。悠は床に寝転び、天井をぼんやりと眺めていた。


「はぁ……俺、いつになったら隠居生活に戻れるんだ?」


彼のつぶやきは誰にも届かず、隣でリリアが日誌をつけている音だけが聞こえてくる。


その時、扉が突然勢いよく開いた。


「悠!大変だ!」


ラグネルが飛び込んでくる。


「また魔物か?」


悠は面倒そうに身体を起こす。


「いや、違う!なんか変なやつがモフモフ団に入りたいって言ってきたんだ!」


「だからその名前やめろって……。それより、変なやつって?」


宿屋の玄関に立っていたのは、一人の少女だった。年齢はリリアと同じくらいだが、髪は銀色で目は鮮やかな金色。彼女は満面の笑顔を浮かべ、悠たちを見つめている。


「あなたがモフモフ団のリーダー、悠さんですね!」


少女は元気よく言いながら一歩前に出る。その瞬間、周囲に何とも言えない癒しの空気が広がった。


「いや、俺はリーダーでも何でもないし、そもそも団じゃないんだけど……。」


悠が肩をすくめながら答えると、少女は気にする様子もなく続けた。


「私はセリナ!モフモフ団の噂を聞いて、ぜひ仲間にしてほしいんです!」


「……どこでその噂を聞いたんだ?」


悠が訝しげに問いかけると、セリナは胸を張って言った。


「さっき助けた村の人たちが言っていました!モフモフ団は最強の癒しの力を持つ伝説の冒険者集団だって!」


「ちょっと待て、その情報どこでどう曲がった……。」


悠は頭を抱えたが、ラグネルとヴォルグは感心した様子で頷いている。


「噂が広まるのは良いことだな!」


「モフモフ団の名声が高まるにつれて、我々の使命も果たしやすくなる!」


「だからその名前はやめろって何度言えば……。」


話が一向に進まない中、リリアが口を挟んだ。


「セリナさん、あなたはどんな力を持っているのですか?仲間になるには、実力を示してもらわないと。」


「もちろんです!」


セリナはにっこり笑いながら、自分の手のひらを掲げた。すると、そこから柔らかな光が溢れ出し、周囲を包み込んだ。


その光を浴びたラグネルとヴォルグは、思わず感嘆の声を上げる。


「なんだ、この癒しの力は……!」


「すごいな!俺たちの疲れが一瞬で吹き飛んだぞ!」


一方で、悠はその光をじっと見つめながらつぶやいた。


「確かにすごいけど……なんか嫌な予感がするな。」


セリナは悠に向き直り、無邪気に言った。


「悠さんの癒しの力には及びませんけど、私も一生懸命モフモフ団の役に立ちます!」


「いや、だから俺は癒しの力をモフモフって呼んだ覚えはないし、団でもないし……。」


その時、少し遅れて扉が再び開き、シェリーが顔を出した。


「すみません、遅れました!」


シェリーは笑顔を浮かべて部屋に入ると、セリナを見て目を輝かせた。


「セリナさん、すごい癒しの力ですね!私も、もっと強くなりたいので、色々教えてもらってもいいですか?」


セリナは驚いたように目を丸くしてから、すぐにニコニコと笑いながら言った。


「もちろん!一緒に頑張りましょう!」


シェリーは嬉しそうに頷き、手を合わせて感謝を述べた。


「ありがとうございます!私ももっと仲間の役に立てるように頑張ります!」


悠はその様子を見守りながら、再び頭を抱えた。


「……お前たち、モフモフ団って一体何なんだ。」


ラグネルとヴォルグは、無邪気に笑いながら肩をすくめた。


「まあ、こういうこともあるさ!」


「騒がしいのも楽しいものだ!」


悠は呆れたようにため息をついたが、どこか楽しげに笑みを浮かべた。新たな仲間が加わり、これからの冒険が少しだけ楽しみになったような気がした。


その夜、セリナが村に滞在することが決まり、悠たちはようやく休むことができた。


しかし、眠れない悠は一人外に出て、月明かりの下でセリナと話すことにした。


「セリナ、どうして俺たちのところに来たんだ?」


悠が尋ねると、セリナは少しだけ寂しそうな顔を見せた。


「私……実は魔族なんです。」


「……は?」


悠はあまりの衝撃に思わず立ち止まった。


「でも、私は人間と魔族が仲良くする方法を探したいんです!それで、モフモフ団ならその夢を叶えられるんじゃないかって思って……。」


「だからその名前はやめろって……いや、それよりも魔族って本気か?」


セリナの言葉に戸惑う悠。だが、彼女の目には一切の嘘偽りが見えない。本当に魔族でありながら、癒しの力を使い、人間と共存する道を探しているようだった。


「はぁ……どうしてこうも厄介事ばっかり集まってくるんだ……。」


悠は頭を抱えながらも、セリナの強い意志を感じ取り、少しだけ笑みを浮かべた。


「まぁ、まずは試用期間ってことでいいか?」


「ありがとうございます!」


セリナは満面の笑顔で飛び跳ねた。その姿を見て、悠はなんとなくこの新たな仲間が波乱を呼ぶ存在であることを確信するのだった――。



次回予告:「魔族と人間の架け橋?」

セリナがモフモフ団に加入!?彼女の持つ秘密とは一体何なのか。そして、さらなる敵が影を潜める――次回、悠たちに訪れる試練とは!?

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