モフモフ団、結成!?



 草原での修行が続く中、悠は自身の盾を使った「モフモフの極意」をラグネルとヴォルグに指導し続けていた。しかし、そんな平和な時間はそう長く続かなかった。


「悠さん!急いでください!」

 リリアが駆け寄り、息を切らせながら叫ぶ。その顔には緊張の色が浮かんでいた。


「どうした、リリア?」

 悠が立ち上がり、リリアに声をかけると、彼女は周囲を確認してから低い声で告げた。


「近くの村が魔物の襲撃を受けているそうです!救援を要請されました!」


「……俺、隠居生活したいんだけど?」

 悠は頭を抱えたが、リリアは真剣な目で彼を見つめた。


「悠さん、ここは力を貸してください。モフモフ団として初めての出動です!」


「待て、そんな名前の団体、俺は認めた覚えがないぞ!」

 悠が抗議するも、ラグネルとヴォルグはすでに準備を整え、意気揚々と頷いていた。



 襲撃を受けているという村は、悠たちがいる草原から少し離れた小高い丘の上にあった。道中、ヴォルグが拳を握りしめながら言った。


「モフモフ団として、俺たちの初陣だな!」


「だからその名前やめろって……。」

 悠がため息をつく中、ラグネルが真剣な表情で言葉を続けた。


「悠よ、この戦いでモフモフの力がどれほど実戦向きか、証明してみせようではないか。」


「実戦向きじゃなくて癒しが目的なんだけどなぁ……。」

 悠はぼやきながらも、仕方なく足を早めた。



 村に到着すると、そこには煙を上げる家々と、逃げ惑う村人たちの姿があった。村の中央には巨大な魔物――熊のような体格に鋭い爪を持つ「スレイベア」が立ちはだかっていた。


「でかいな……俺の盾でどうにかなる相手かこれ?」

 悠はその巨体を見上げ、肩をすくめた。


 しかし、ラグネルは剣を抜き、冷静に指示を飛ばした。

「悠、君は村人たちを守る盾となれ。我々が魔物を引きつける!」


「待て待て、なんで俺が一番危ない役なんだよ!」

 悠の抗議をよそに、ラグネルとヴォルグはスレイベアに突進していく。



 悠は仕方なく村人たちの前に立ち、盾を構えた。

「俺、隠居したいだけなんだってのに……!」


 スレイベアが突進し、ラグネルとヴォルグが応戦している間、悠は盾を村人たちに向けて光を放った。その瞬間、村人たちの不安そうな表情がみるみる和らぎ、恐怖が癒されていく。


「すごい……なんて優しい光なんだ!」

 一人の村人が呟くと、他の村人たちも次々に安堵の笑みを浮かべた。


「これがモフモフの力か……いや、違うよな。俺、なんでこんな目立つことしてるんだ?」

 悠は自問しながらも、盾を構え続けた。



 ラグネルとヴォルグの連携攻撃により、スレイベアはついに動きを止めた。しかし、最後の力を振り絞り、村人たちに向かって吠え声を上げる。


「悠さん!」

 リリアが叫ぶ中、悠は反射的に盾を構え、スレイベアの視線を引きつけた。


「俺にモフモフを求められても困るんだよ!」

 悠が叫びながら盾を突き出すと、その表面から眩い光が放たれ、スレイベアの動きを完全に封じた。そのまま力尽きた魔物は地面に崩れ落ち、ようやく戦いは終わった。



戦いが終わり、スレイベアの巨体が地面に倒れると、村の広場は静けさを取り戻した。ラグネルとヴォルグが息を整えながらその場を見回し、悠も村人たちが無事であることを確認してから肩の力を抜いた。


「ふぅ、終わったか。」


悠が安堵のため息をついたその時、リリアが村の端を指差して言った。


「誰か来るみたいです。」


悠がその方向に目を向けると、遠くから一人の女性が歩いてきていた。黒髪を束ね、魔法使いのような装いをしたその人物は、近づくにつれてその存在感が際立ってきた。


「こんにちは、皆さん。」


女性は優しい笑顔を浮かべながら、悠たちに歩み寄ると、穏やかな声で話しかけてきた。


「私はシェリー、こちらの村の魔法使いです。先程は、助けていただきありがとうございます。」


悠は少し警戒しながらも、シェリーに向かって頷いた。


「スレイベアのこと、心配してくれていたのか?」


「はい、村を守るためにできることをしているだけです。」


シェリーは軽く肩をすくめ、悠の方に一歩近づいた。


「あなたが使っていた盾、あれはすごく珍しい力を持っているんですね。まるで周囲の空気を変えてしまうかのような。」


悠はその言葉に少し驚き、シェリーをじっと見た。


「……珍しい力、か。俺はただの癒しの盾だよ。使い方によっては色々できるけど。」


シェリーは微笑んで、その言葉に反応した。


「その力、実はずっと探していたんです。私も今後、使い方を学びたいと思っていて。」


「使い方? まさか、俺に?」


悠は驚いたが、シェリーは照れ隠しに少し顔を赤らめて言った。


「もし良ければ、少しだけ教えていただけると嬉しいです。」


その言葉に、悠は一瞬黙った後、やや考え込みながら答えた。


「俺に教えられることがあるかどうか分からないけど……まあ、必要なら手伝うよ。」


シェリーはにっこりと微笑み、深くお辞儀をした。


「ありがとうございます。これからどうぞよろしくお願いします。」


その後、シェリーは悠たちに村の様子や魔物の情報を提供し、悠たちはそのお礼として少しの間、村に残って村人たちと交流を深めることにした。



 一方、ラグネルとヴォルグは得意げに胸を張る。

「モフモフ団として、素晴らしい初陣だったな!」


「だからその名前やめろって……!」

 悠の抗議も空しく、モフモフ団の名声は静かに広まりつつあった――。



次回予告:「モフモフ団に新たな仲間?」

村を救った悠たちのもとに、さらなる依頼と意外な仲間候補が現れる!?次回、モフモフ団に激震が走る!

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