騎士団長もモフモフの虜?



 悠たちの前に現れた王国騎士団長、ラグネルはその威厳ある姿からただならぬ存在感を放っていた。しかし、次に彼が発した言葉に、悠は思わず二度見してしまった。


「君たち、モフモフの極意について修行中だそうだが……その技術、私にも教えてくれないか?」


「え、いや、待ってください。なんで騎士団長がモフモフに興味を……?」

 悠は困惑を隠せない。リリアも口元を押さえ、必死に笑いを堪えている。


 一方で、ラグネルは悠を真剣な目で見つめて言葉を続けた。

「この国の平和を守るためには、武力だけでは限界がある。癒しの力……いや、心の平穏が必要だと私は考えている。」


「それでモフモフですか?」

 悠は心底信じられないという表情を浮かべたが、ラグネルは頷いてみせた。


「そうだ。君の盾には、人々の心を癒す力が秘められていると聞いた。その力を私は学びたい。」



 ラグネルの熱意に押され、悠は仕方なくモフモフの極意をデモンストレーションすることにした。


「まあ、こうやって触れるだけで癒されるわけだけど……。」

 悠は自分の盾を取り出し、表面を軽く撫でて見せた。盾の表面がかすかに光り、柔らかな波動が周囲に広がる。その瞬間、ラグネルとヴォルグは目を輝かせた。


「なんという……これはただの盾ではない!」

 ラグネルは興奮気味に盾に手を伸ばしたが、悠は慌ててそれを制止した。


「ちょっと待った!これは俺専用だから、適当に触ると危ないって!」


「しかし、その力の片鱗でも味わいたいのだ……。」

 悠の言葉を聞きながらも、ラグネルは諦める気配を見せなかった。



「まずは、基本からだ。モフモフの心得を学ぶには、適切な素材を見極めることが大事だ。」

 悠は、先ほどヴォルグに教えたように、草を集める課題をラグネルにも課した。


 ラグネルは鎧を脱ぎ捨て、普段の戦場では見せないような繊細な手つきで草を集め始めた。その光景に、リリアは思わず笑ってしまう。


「悠さん、これ……なかなかいいチームになりそうですね。」


「いや、こんな変なチーム、俺は望んでないけど?」

 悠はため息をつきながらも、心のどこかでこの状況を楽しんでいる自分に気づいていた。



 修行の最中、リリアがふと呟いた。

「でも、悠さんの力を知ったら、これからもっといろんな人が集まってくるかもしれませんね。」


「やめてくれ。俺はただ隠居したいだけなんだ……。」

 悠の嘆きにも関わらず、彼の周りには着実に人とモフモフの輪が広がりつつあった。そして、その輪はやがて、彼自身が望まぬ形で世界を動かしていくことになる――。



次回予告:「モフモフ団、結成!?」

騎士団長ラグネル、弟子志願のヴォルグ、そして悠とリリアの奇妙なチームが始動。次回は、モフモフの力を求めるさらなる訪問者が現れる!?

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