モフモフの脅威
悠が手にした羊を模したふわふわの盾。その柔らかさに思わず触れると、幻獣王は得意げに言った。
「どうだ、最高の盾だろう!これを使えば、どんな攻撃も無力化だ!」
悠はため息をつきながら盾を見つめる。
「これでどうやって魔物を倒せってんだ……。」
その時、遠くの森から突然の叫び声が聞こえた。
「誰か助けてぇぇぇ!」
悠とリリアは急いで声のする方へ駆けつけた。そこには、冒険者風の若い男性が何匹もの魔物に追われていた。
「おい、大丈夫か!」
悠が叫びながら盾を構えると、冒険者は驚きながら叫ぶ。
「た、助けてくれ!あの魔物たち、普通じゃないんだ!」
悠が目を凝らすと、魔物たちの体は奇妙に輝き、異様な威圧感を放っていた。
「……これ、強化されてるな。」
悠が苦々しくつぶやくと、幻獣王が前足を揺らしながら口を開いた。
「よし、俺の盾を試す時が来たな!」
「いや、試したくないんだが……!」
悠は渋々盾を構え、魔物たちの攻撃を受け止めた。
魔物の鋭い爪が盾に触れると――
ボフッ
魔物の動きが止まり、その場に倒れ込む。そして次の瞬間、凶暴だった魔物の目がとろーんとし始めた。
「な、なんだこれ……?」
リリアが驚きの声を上げる中、幻獣王が得意げに説明する。
「俺の盾の力は『癒し』だ。敵が攻撃すると、その力を逆転して心を穏やかにする。つまり、凶暴な魔物でも平和主義者になるのさ!」
悠は頭を抱えた。
「いや、確かに役には立つけど、根本的な解決にならないだろ!」
その間にも、盾に触れた魔物たちは次々と草原に転がり込み、柔らかな表情で空を見つめていた。
戦い(?)が終わると、助けられた冒険者が感謝しながら近づいてきた。
「ありがとうございます!おかげで助かりました!」
悠は困ったように肩をすくめる。
「まあ、魔物を倒したわけじゃないけどな。」
リリアが思案顔で口を開く。
「でも、これってもしかしたらすごい力じゃないですか?村を守るだけじゃなく、魔物の脅威そのものを和らげられるんです。」
幻獣王も大きくうなずく。
「そうだ!悠、この力をもっと活用しようぜ!」
悠は深いため息をつきながらも、少しだけ考え直した。
「……まあ、確かに誰も傷つけずに解決できるなら、それも悪くないか。」
だがその直後、森の奥から新たな気配が迫ってきた。突如として現れた巨大な影が、悠たちを見下ろす。
「これが噂の『モフモフの盾』か……面白い!」
現れたのは、人間の姿をした魔物のリーダー。その目には冷酷な光が宿っている。
「俺の手下をこんなに無力化するとは……お前、その盾を俺に渡せ。」
悠は盾を構え直し、険しい表情を浮かべる。
「悪いな、こいつは俺専用だ。お前なんかに渡す気はない。」
リーダーは不敵な笑みを浮かべ、周囲にさらなる魔物たちを召喚する。
「ならば力尽くで奪うまでだ!」
次回予告:「モフモフのリーダー」
果たして敵のリーダーにモフモフは通用するのか!?敵も味方も驚愕する斜め上の展開に、悠の隠居生活は再び混沌の渦に巻き込まれる!果たして彼はこの危機をどう乗り越える――!?
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