羊の訪問
村を襲った魔物たちを撃退し、ひとまず平穏を取り戻した悠とリリア。しかし、そんな安堵も束の間、悠の家に奇妙な来訪者が現れた。
コンコン。
ドアをノックする音に悠が不思議そうな顔をして出ると、そこには一匹の……羊が立っていた。
「……羊?」
悠は首をかしげながらその場で硬直する。羊はふわふわとした毛並みを揺らしながら、堂々と喋り始めた。
「やあ、久しぶりだな、悠!」
リリアも驚いて声を上げる。
「えっ、羊が喋ってる!?」
悠はさらに混乱しながら、記憶を手繰り寄せるように眉をひそめた。
「まさか……お前、昔俺が旅をしてた頃、助けたあの羊か?」
「そうだとも!あの時のお礼を言うためにずっと探してたんだ!」
羊は胸を張るように(羊に胸があるかはさておき)、誇らしげに答えた。
羊は悠の前足(いや、前肢)を大きく振り上げると、信じられない提案を口にした。
「悠、俺と契約してくれ!」
悠は顔を真っ青にして後ずさる。
「おい待て、どうして俺が羊と契約なんかしなきゃならないんだ!?」
リリアも慌てて口を挟む。
「ちょ、ちょっと待ってください!そもそも契約って何の話なんですか?」
羊は静かに目を細め(羊に目が細いかはさておき)、神妙な顔つきで語り始めた。
「実はな、俺はただの羊じゃない。『幻獣王(ファンタズマキング)』なんだ。」
「……は?」
二人は揃って間抜けな声を上げた。
「俺の本当の姿は、この世界にかつて存在した幻獣たちの頂点に立つ存在だ。しかし、悠に助けられたあの日から、俺はお前の器量に惚れ込んじまったんだ。」
羊(もとい幻獣王)は悠を見つめながらさらに言葉を続ける。
「お前が俺の力を使えば、どんな魔物も恐れる必要はない!ただし……その代償として、俺の主となり、俺を世話する義務が発生する。」
悠は額に手を当て、深いため息をついた。
「世話って……具体的に何だ?」
「毎日草を摘んで持ってくること。そして毛刈りだ!」
幻獣王は嬉しそうに尻尾を振る。
「そんなのタンク関係ないだろ!」
悠は思わず叫んだ。
一方、リリアは目を輝かせていた。
「幻獣王と契約なんて、すごいじゃないですか!悠人さん、村だけじゃなく、この世界の平和も守れる存在になれますよ!」
「やめてくれ。俺は平穏に暮らしたいだけだ。」
しかし幻獣王は悠の拒否を無視して前足を突き出す。
「悠、逃げるな!お前は選ばれた存在なんだ。さあ、契約を結ぶんだ!」
悠は完全にうんざりしながらも、リリアの目と幻獣王の圧に押され、最終的に手を伸ばした。
契約が結ばれた瞬間、眩い光が放たれた。悠の手には新たな盾が現れる――羊を模した、ふわふわの盾だ。
「……これ、どんな効果があるんだ?」
悠が恐る恐る尋ねると、幻獣王は誇らしげに言い放った。
「この盾を使えば、敵の攻撃をすべて『モフモフ』に変換する!」
「いや、そんな平和的すぎる効果いらないだろ!」
リリアはその場に崩れ落ちながら笑い出し、悠はさらに頭を抱える。
次回予告:「モフモフの脅威」
幻獣王との契約によって手に入れた新たな力。その効果が予想以上にとんでもない結果を引き起こす!悠の隠居生活がさらに混沌へと突き進む――!?
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