光と影の攻防



 鍛冶場内は光と闇が交錯する異様な光景となっていた。悠の盾が放つ神聖な光が、男の召喚した魔物たちを押し戻す一方で、男の暗黒の魔力は再びその場を覆い尽くそうとしている。


「守護の盾よ、その力が衰えていないことは認めよう。だが、俺の切り札を前にして、どこまで耐えられるかな!」

 男が不敵な笑みを浮かべると、天井を突き破るような巨大な魔物が召喚される。その体躯は鍛冶場を埋め尽くすほどで、赤黒い光を纏いながら咆哮を上げた。


「これが……お前の切り札か。」

 悠は眉をひそめつつも冷静さを崩さない。盾を握る手に自然と力が入り、視線を魔物の巨大な瞳に向けた。



 悠が一歩前に出ると、巨大な魔物がその鋭い爪を振り下ろしてきた。その一撃は地面を裂き、鍛冶場の床を粉々にするほどの威力だった。しかし、その爪が悠の盾に触れる直前――


 ガンッ!


 鋭い金属音と共に爪は弾かれ、逆に魔物の体が大きくよろけた。


「なに……!?」

 男は信じられない様子で声を上げる。


「盾はただの防具じゃない。俺の手にある限り、攻撃にもなるってことを忘れてるんじゃないか?」

 悠は淡々と答えると、盾を振りかざし、強烈な一撃を放った。魔物の巨体に直撃した光の波動が、闇の魔力を吹き飛ばす。


「くっ……この力、まさかここまでとは!」


 男の焦りが露わになる中、悠の表情には一切の隙がなかった。


「お前の切り札もこの程度か。だったら、もう勝負は決まったようなもんだな。」



 一方、鍛冶場の外にいたリリアは、意を決してその中へ戻る途中だった。光と闇の交差する眩しい光景に圧倒されながらも、足を止めることはなかった。


「悠人さんを一人で戦わせるわけにはいかない!」


 彼女が鍛冶場の入口にたどり着いたその時、悠が振り下ろした盾の一撃が巨大な魔物を完全に吹き飛ばすのを目撃する。


「やっぱり、すごい……!」

 感嘆の声を漏らすリリアだったが、すぐに異変に気づいた。男の魔力が急激に収束し、さらなる何かを生み出そうとしているのだ。


「まだ終わりじゃないぞ、守護の盾!」

 男の叫びと共に、闇の魔力が凝縮され、一つの槍の形を取った。それはこれまでの魔物とは異なり、純粋な破壊を象徴するような存在だった。


「悠人さん、危ない!」



 リリアの叫び声に悠は一瞬だけ振り向いた。その隙を突いて、闇の槍が放たれる。だが――


 ガンッ!


 再び盾が輝き、その槍を正面から受け止めた。衝撃で鍛冶場が揺れる中、悠はぐっと足を踏みしめ、槍の全ての力を弾き返した。


「な……!」

 男の顔が驚愕に染まる中、悠が低い声で呟く。


「これで終わりだ。」


 盾から放たれた最後の光が、男の魔力を完全に打ち消し、鍛冶場の中を静寂に包んだ。



次回予告:「悠の選択」

 戦いは終わりを告げたが、悠の心にはまだ迷いが残る。守護の盾としての役割を再び背負うのか、それとも穏やかな日常を求め続けるのか――。次回、悠が選ぶ未来とは!?

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