守護の覚悟
黒いローブの男が召喚した魔物は、次々と鍛冶場を囲むように現れた。その数はすでに十体を超えている。牙を剥き、爪を光らせる魔物たちが一斉に悠へと向かって突進してきた。
「そんなに数で押し切ろうってか……相変わらずやることがせこいな。」
悠はため息をつきながら、盾を構えた。その動作はどこか気だるげだが、一切の隙を感じさせない。
「守護の盾、その力をもう一度見せてもらおうじゃないか!」
男の挑発に答えるかのように、悠の盾が再び輝きを放つ。
突進してきた最初の魔物が、悠の前で巨大な爪を振り下ろす。だが、爪が盾に触れる直前、見えない力が衝撃波のように放たれ、魔物を吹き飛ばした。
「なっ……触れてもいないのに防いだだと!?」
男は驚愕の声を上げる。
「これが『守護の領域』だよ。」
悠は淡々と答えながら、盾を軽く振るう。それだけで、周囲の空気が変わった。彼の周りに見えない壁のような力が広がり、魔物たちの攻撃を一切通さなくなった。
次々と襲いかかる魔物たちの猛攻は、ことごとく無効化されていく。巨大な牙も、鋭い爪も、炎を吐き出す息吹も、悠の前ではただの無意味なもがきにすぎなかった。
「どうした?これが全部か?」
悠は冷静な声で言い放つが、内心では胸の奥に懐かしい感覚が広がっていた。
(そうだ……これが俺の役割だった。誰かを守るために戦う。それが俺の戦い方だったんだ。)
男は歯ぎしりしながらさらに魔力を解放する。その力で召喚された魔物たちがさらに強化され、ひときわ大きな咆哮を上げた。
「このまま引き下がるとでも思ったか!まだ終わりじゃない!」
ローブの男は手を天に掲げ、最後の切り札を召喚しようとしていた。
「また上乗せかよ……ほんと、懲りないな。」
悠は呆れたように肩をすくめながらも、盾をしっかりと握りしめた。彼の周囲に展開される守護の領域がさらに輝きを増し、その力は鍛冶場全体を包み込むほどに広がっていった。
「こっちも全力を出してやるよ。覚悟しろ。」
悠の声が響くと同時に、盾が強烈な光を放つ。その光は魔物たちの動きを完全に封じ、さらに黒いローブの男にまで届こうとしていた。
一方、鍛冶場の外では、リリアが村の人々を避難させるよう指示していた。
「悠人さんならきっと大丈夫……でも、念のために皆さん、安全な場所へ!」
村人たちは不安そうな顔をしながらも、リリアの言葉に従い、避難を始める。
しかし、彼女はふと立ち止まり、鍛冶場の方向を振り返った。その目には迷いが見える。
(私も……あの場にいるべきじゃないの?悠人さんを一人にして……本当にこれでいいの?)
リリアは強く拳を握りしめ、覚悟を決めたように鍛冶場の方へと足を向けた。
次回予告:「光と影の攻防」
悠の力は男の執念を超えられるのか?そして、リリアの決意が新たな波乱を呼び起こす!?戦いの行方が加速する――!
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