過去の因縁
鍛冶場の空気が一気に張り詰めた。黒いローブの男から放たれる魔力の圧迫感が、リリアの肌を刺すように感じさせた。
「悠人さん、この人は……?」
「さぁな。俺に用があるなら、とっとと話してくれ。」
悠は表情を硬くしながらも、冷静を装って男に視線を向ける。その態度に、男は薄笑いを浮かべた。
「貴様は昔から変わらないな。冷静ぶって自分を隠す――だが、俺には分かっている。お前は本物の『守護の盾』、あの時、俺たちの計画を全て壊した張本人だ!」
その言葉を聞き、リリアの目が見開かれる。
「やっぱり、悠人さん……あなたは本当にただの鍛冶屋ではないんですね!」
「……面倒なことになったな。」
悠は頭をかきながらため息をついた。しかし、その目は男の動きを見逃さないように鋭く光っていた。
「なぁ、俺が隠居して平和に暮らしてるのを知ってて、わざわざ追ってくるってことは……ただの挨拶じゃないんだろ?」
「もちろんだとも!」
男は不敵な笑みを崩さず、手を掲げた。その瞬間、暗黒の魔力が形を成し、大型の魔物が召喚される。四足の獣のようなフォルムに、赤い瞳が不気味に輝いていた。
「さぁ、再戦といこうじゃないか!貴様の実力がどれだけ衰えているのか、この目で確かめてやる!」
魔物が咆哮を上げると、鍛冶場の壁や窓が震えた。悠はリリアを後ろに押しやり、魔物と男をじっと睨む。
「リリア、お前はここから出ろ。」
「でも、悠人さんを一人にするわけには――」
「いいから出ろ!これは俺の問題だ。」
悠の声は低く、しかし強い意志を含んでいた。リリアは一瞬反論しようとしたが、その目を見て言葉を飲み込んだ。
「分かりました……でも、無茶はしないでくださいね。」
そう言い残し、リリアは急いで鍛冶場を後にした。
「ずいぶん優しい顔をするようになったじゃないか。
「やかましい。」
悠は短くそう言い放ち、作業台の裏から鉄製の盾を取り出した。それは鍛冶屋らしく朴訥な作りだったが、悠の手に握られると異様な威圧感を放ち始める。
「本気で来いよ。俺がどれだけ『衰えた』のか見せてやる。」
魔物が突進してくると、悠はその巨大な体を正面から受け止めた。衝撃音が響き渡るが、悠の足は一歩も動かない。
「……なんだ、このバケモノみたいな防御力は!」
男が驚きの声を上げる中、悠は冷静に魔物を押し返した。その表情は険しいながらも、どこか余裕を感じさせる。
「お前が俺をどう思おうと勝手だがな――俺はまだ『盾』を降ろすつもりはないんだよ。」
悠の声と共に盾が光り始める。その光は周囲の暗黒の魔力を弾き飛ばし、鍛冶場の中を浄化していくようだった。
「くっ、さすがだ……だがこれで終わりじゃない!」
男はさらに魔力を注ぎ込み、次々と魔物を召喚し始めた。しかし、悠は全く動じない。
「全部まとめて来いよ。俺の守りを突破できるもんなら、やってみろ。」
次回予告:「守護の覚悟」
悠の本気がついに明らかに!黒いローブの男との因縁の真相とは?そして、悠が隠居生活を選んだ理由がついに語られる!
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