隠居生活、冒険者にバレる!?



鍛冶場の薄明かりの中、悠とリリアは向かい合って座っていた。しかし、悠は目線を合わせるのが苦手で、リリアの鋭い視線に耐えきれず、何度も視線を外してしまう。


「悠人さん、昨日の騒ぎのこと、何か知っていますか?」

「え、えっと……俺、知らないよ。あ、あはは、ただの鍛冶屋だし……。」


 悠は言葉を詰まらせながら答えた。表情を平静に保とうとしているが、声のトーンが不自然に上がってしまっている。


「ですが、この村で魔物を一掃できる人なんて普通いません。それに、村の外れで見た光の盾……あれ、かなり特別なスキルにしか見えませんでした。」


(し、しまった……この子、思ったより鋭い……!)


 悠は内心で頭を抱えながらも、どうにか話をそらそうとした。


「そ、それなら、あれじゃないかな。ほら、たまたま通りかかった旅の冒険者とか……。」

「そうでしょうか?」


 リリアは微妙に疑念を残したまま、悠を観察し続ける。そんなリリアの真剣な眼差しに耐えきれなくなり、悠は机に置かれた工具をいじり始めた。


「そ、そもそも、俺がそんなことできるわけないだろ!冒険者でもないし、盾も持ってないし!」

「……そうですね。でも、悠人さんは、少し挙動不審に見えます。」

「挙動不審なんて、そんなことないよ!普通だよ、普通!」


 リリアの直球すぎる指摘に、悠はさらに挙動が怪しくなる。


魔物再び

 そんなやり取りをしていると、鍛冶場の外から大きな叫び声が聞こえた。


「魔物だ!魔物がまた来たぞ!」


 悠はほっとしたような、複雑な表情を浮かべた。


(タイミング悪すぎる……いや、むしろ助かったか?これで話題をそらせる。)


 悠はリリアを見て、慌てて立ち上がった。


「お、おれ、見てくるよ!その……鍛冶屋としてできることがあるかもしれないし!」

「私も同行します。冒険者として、魔物退治は私の役目です!」


 リリアの真剣な言葉に、悠は断る隙を与えられず、渋々彼女を連れて村外れへ向かった。


バレそうな実力

 村外れには再び魔物の群れが現れ、村人たちを脅かしていた。リリアはすぐに剣を構え、魔物の群れに向かって駆け出した。


「村の皆さん、急いで避難してください!私たちが対処します!」


 リリアの言葉に、村人たちは慌ててその場を離れていく。一方で悠は、何もできないふりをしながらその場をうろうろしていた。


(どうする、どうする……ここでスキルを使ったらバレる。でも、リリア一人じゃ危険すぎる。)


 悠は葛藤しつつも、リリアが数匹の魔物に囲まれたのを見て思わず動いた。


「ちょ、ちょっとだけ、手を貸すよ!」


 そう言いながら、悠はリリアの近くに駆け寄る。そして、心の中で小さくつぶやいた。


「守護結界(ガーディアン・フィールド)。」


 すると、地面が光り輝き、リリアを中心にした広範囲のバリアが展開された。魔物たちはバリアに触れると一瞬で消滅していく。


「えっ……なに、これ?」


 リリアは驚愕した表情を浮かべ、悠の方を振り返る。しかし、悠は必死に取り繕おうとした。


「い、いや、これくらい普通だろ?鍛冶屋なら、なんかこう……便利な技術があるんだよ!」

「普通じゃないです!こんな高度なスキル、冒険者でもそう簡単に使えません!」


 リリアはさらに追及しようとするが、悠は目を合わせず、目の前の魔物を指さした。


「あ、あの、まだ終わってないから!そっちに集中して!」


隠居生活の危機

 魔物を一掃した後、村人たちは歓声を上げて悠とリリアに感謝を述べた。しかし、リリアの目には明らかな疑念が浮かんでいる。


「悠人さん、あなた……本当は何者なんですか?」

「えっ、俺?ただの鍛冶屋だよ!ほ、ほら、農具の修理とか得意だし!」


 必死に話をそらそうとする悠だが、その挙動がさらにリリアの疑惑を深めてしまう。


(やばい……完全に目をつけられた。でも、俺はただ静かに暮らしたいだけなんだ!)


 悠はシャイな性格ゆえに、直接的な言い訳をするのが苦手だった。それでもどうにかしてこの場を切り抜けなければならない、と心の中で強く決意した。


次回:「リリアの追求」

シャイな性格が災いして追い詰められる悠!隠居生活を守るため、さらなる言い訳が飛び出す!?

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