第8話
ちょうどそのときだった‥―――。
タイミングがいいのか悪いのか、騒々しい音を立てて、リョウちゃんが教室に戻ってきた。
手には、缶ジュースが三つ。
どうやら、3人分買ってきたらしい。
「ほらっ!オレンジジュース 買ってきたぜ」
「あ、ありがと・・・・・・」
私は、差し出された「オレンジジュース」を素直に受け取った。
「ついでにトオルの分も買ってきたぜ」
「サンキュ!」
トオルくんは、何事もなかったかのように、平然としていた。
なかなか気が利くね・・・・・・。
机の上に置かれた二つの缶コーヒーを眺めながら、突っ込みを入れようかと思ったけど。
さっきの動揺で、上手く言葉が出なかった。
「・・・ん? どうした・・・?」
真っ赤な顔をして
「別に」って、言いかけようとしたのだけど。
先に、トオルくんが・・・。
「別に。只、”普通に”話してただけだよ」
え・・・
「普通に」・・・って?
「普通に」の所を強調して言ったトオルくんは、リョウちゃんの不審な表情にも冷静だった。
もうっ!
トオルくんの嘘つき・・・・・・っ!!
そう思ったけど、リョウちゃんには表情を読まれたくなかったので、黙っていた。
だけど、リョウちゃんには何もかも お見通しだったようで。
「トオル あんましからかうなよ。この子、まだ”お子ちゃま”だからなっ」
”ぽんぽん”と私の頭を軽く叩いて、リョウちゃんはニヤッと、悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。
「べ、別に『お子ちゃま』じゃないもん」
トオルくんは、リョウちゃんにとっては初めて普通に出来た男友達。
トオルくんとは、あまり会話したことがなかったけど。
同じクラスになってから、私にも話しかけてくるようになった。
と、いうよりも・・・・・・。
女の子だったら、”全員に”って言った方が正しいかもしれない。
そのころから、他の同級生よりも落ち着いていて大人っぽかったトオルくん。
そのせいか、学校ではかなり目立ってて多くの女子に注目が集まっていた。
ただ、「プレイボーイ」というレッテルを貼られているせいか、男子の間では「遊び人」「女ったらし」っていうウワサも広まっていた。
それがなければ、「完璧」のはずなんだけど・・・・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます