第6話

「好きになるのはいいけどぉ~・・・ アイツだけは、本気まじ めといた方がいいぜ。すぐ女、クドくから」


はぁ~っ!

何、それ~!!




「あ、もしかして もうクドかれた?」


私は、「そんなことない」って、慌てて否定したけど・・・。

まさか 本当にそのあと、その言葉が現実になろうとしていたなんて夢にも思わなかった。




身長も高くて、見た目もクールな感じのトオルくんの周りには、いつの間にか彼のファンらしき女生徒が取り囲んでいた。

容姿端麗で、スポーツ万能。学校の成績も上位の方・・・だって、聞いた。

確かに、見た目はちょっとかっこいいと思うけどぉ~・・・。

別に、トオルくんの彼女になりたくて訊いた訳じゃないのに。




走行そうこうするうちに、教室の掃除も終わり・・―――。


「リョウちゃん。何か、ジュース買ってきてよ」

少し甘えた声で言ってみた。


「ゲッ! 何で オレが?」

と、リョウちゃんはギョッとした表情。


「何? ・・・その顔」


リョウちゃんのその嫌そうな顔にちょっとイラっとしたんだけど。


「昨日、掃除当番 サボったでしょ?」

・・・って、「昨日の仕返し」っていうふうに悪戯っぽい笑みを浮かべて言ってやった。


「お前、いつから人使い あらくなった?」

リョウちゃんは、しかめっ面をして私を睨みつける。


「いいのかなぁ~。 先生に言いつけちゃおうかな~」


まるで脅迫犯みたいだな~って思いながら、リョウちゃんに目を向ける。


「分かったよ。で、何がいい?」

リョウちゃんは、とうとう折れて買いに行く羽目になった。


「えっとね・・・・・・ オレンジジュース」


素直に従うリョウちゃんに何だか嬉しくなって、思わず笑いが込み上げる。


「高校生にもなってオレンジジュースかよ。・・ったく、”お子ちゃま”だなぁ~」

リョウちゃんは、「お子ちゃま」のところを強調して教室から出て行った。




「『オレンジジュース』好きなんだぁ」



帰り支度をしていたら、誰かに声をかけられた。

ふと顔を上げると、トオルくんが優しい笑みを浮かべて私の前の座席に座っていた。


一瞬、ドキッとしてしまう。


トオルくんの周りにいたファンの女生徒たちもいつの間にか去って行き、教室の中には私とトオルくんの二人きり。

トオルくんは頬杖をついて、優しいで こちらを見つめていた。

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