第1章 ~1988年~

第5話

高校2年の夏休みは、ユウコの家にお泊りして楽しかった。

けれど・・・・・・。

まさかこの後、あんなことが起こるなんて・・――――。




1988年 春――。



「オレ、今日バイトの日だから、後はヨロシコ~!」

「リョウちゃん!掃除当番なんだから逃げないでよ!!」


私が言い終わるか言い終わらないうちに、もういなくなってた。



・・・・・・逃げられた。

・・・たく。

逃げ足だけは速いんだから。



今週は、教室の掃除当番――。

幾つかのグループに分かれて班が決められていた。

高1のときは、リョウちゃんとクラスが別々だったけど、高2になってまた同じクラスメートになった。



「いいよ、いいよ。オレで、さっさと終わらせちゃおうよ。ねっ!」

そう言ってくれたのは、満面の笑顔で接してくれた同じクラスメートの男子生徒!


中村ナカムラ トオルくん。

通称「トオルくん」って呼んでいた。



「ありがとう。ごめんね・・・・・・」

「大丈夫だよ。サオリちゃんが気にすることないさ」


このとき、私は初めてトオルくんと言葉を交わした。



へぇ・・・・・・。

結構、優しいんだぁ。


‥――って、そのときの第一印象はそう思っていた。

のちに彼とは、その後の人生に大きく関わってくるなんてそのころはまだ全然、思ってもいなかった。



翌日の放課後‥――――。


「昨日は、トオルくんに手伝ってもらっちゃった。彼、ものすごぉ~く大人で、やさしいぃ~んだからぁ~」

私は、昨日掃除をサボったリョウちゃんにわざと、皮肉たっぷりに言い放つ。


「あぁ そう。どーせオレは、子供がきだよぉ~ん」

リョウちゃんは、ペロッと舌を出しておどけたポーズをして見せる。


「何、それ? 今日はサボらないでよねっ!」

って、彼の目の前に掃除道具を突き出して言った。


「へいへい。分かったよ」


そのころのリョウちゃんはこんな感じで・・・いつも、ふざけてばかりだった。



「ねぇ トオルくんて、彼女・・・とか、たりするのかな?」

掃除をしている最中に、何気なくリョウちゃんに訊いたこともあった。


「彼女?・・・・・・さぁ・・・・・・?」


高1のとき、トオルくんと同じクラスメートだったリョウちゃん・・・。

一瞬、考え込んでいたんだけど‥――。




そのとき、何を勘違いしたのかアイツは・・・。(怒

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