第4話 怜

(あぁ…どうしよう……)

次また会えるんだと思って嬉しかったけど、全然誘えすらしない。


連絡先は交換した。

それなのに。


「体調どうですか?」

こんな単語しか送れない。

これじゃ、カウンセリングだよね……


僕は死のうとしていた。

でも彼女が助けてくれた。

あがいてみない?って。

彼女も一緒だったんだ、違うって言われたけど。


文章のやり取りは正直苦手だ。でも対人恐怖があるから、実際に会うのも辛い。


でも彼女は違った──

確かに、僕は緊張はしていたけど、もう一度信じてもいいかな?って思えたんだ。

だから、彼女とこの世界であがいてみたい。



今度は僕が彼女を助ける番だ。って強く思うのに。

実際に、助けたいと思っても考えがぐるぐる回って、脳内劇場が始まる。

こうじゃない、こうだという意思の演劇。主人公は僕。しかも、一回始まるとなかなか終わらない。

その演劇には、たいてい嫌な人が出てくる。トラウマになった要因の人とか。


トイレに駆け込んで、トイレからしばらく出ない。出られないが正しいけどね。

フラッシュバックした時とかは便器が話し相手になる。

忘れたいのに、忘れられない。一生このままなのかな。

 

横になって、スマホを眺める。

ただ画面を見つめるだけ。

彼女になんで送ろうか……と悩みまくって

いつもカウンセリング構文。


結局、辞めさせられた時も大事なことを伝えられなかったんだよね……

最後は、辛そうだもんね。あなたのことを思って。って言われてしまったのだ。意思のすれ違いが最悪の結末を招いてしまった。


これじゃ、前と一緒だ。

(やれることはやってみなきゃダメだよね)

僕は勇気を振り絞り、通話ボタンを押した。

手が震えている。汗もびっしょり。


「はい…」

「希心さん…!そろそろ会いません…か……?」

(やば、気持ち悪がられたかな… というか、こんな言い方なんだよ……)

「大丈夫よ」

彼女からの返事にほっとした。

息が上がっているから、変態さんが電話かけているみたい…

聞いてみれば、彼女も誘おうとしていたみたい。こういうところは似てるんだなぁ。


最後に彼女はこう言った。

「ここは会社じゃない。だから裏切りなんかしない」って。

また彼女に救われた。


涙が溢れてきた。

勇気を振り絞って良かったと心から思えた。

何もできないと思っていたけど、できることもあったんだ。


こうして、2人はまた会うことになった。

怜が勇気を振り絞って行ったこの行動が、希心を救うことになっていたとは、当時の僕はまだ知る由もなかった。

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