第21話 2024年アニメ映画評20・「トラペジウム」
元乃木坂46・高山一実の同名小説の映画化。原作は読んでないので、改変箇所はよく分からないが、映画単品でみると普通の出来だった。6点。
アイドルを目指すものの、オーディションに通らない東ゆうは美少女をかき集め、グループ・デビューを画策する。話題性のため西南北に由来のある美少女、大河くるみ・華鳥蘭子・亀井美嘉の三人と仲良くなり、メディアから注目を集めようとする。策謀は功を奏し、東西南北としてデビューを果たす。しかし、人気が長じるにつれ、他の三人と東との間に温度差ができ、遂にグループは瓦解。落胆する彼女だったが、三人の激励もあって、再びアイドルを目指すことに決める。
映像は流石のClover Worksで、空や水の表現は過剰なくらいキレイに描かれていた。ただ、昨今のアニメ全般にそうだろうが、光が直截的に作用する景観以外はそこまで美麗でなかったりする。木とかメカを美しく描くのは難しいのかも。キャラの表情で物語や心情を伝える工夫がなされており、台詞で全部言っちゃわないのはよかった。アクションは、作品が作品だけにあまり印象に残らなかったな。
物語は四部構成で、東がグループ・メンバーを囲い込むパート、色々あってデビューし人気になるパート、活動が崩壊するパート、東が失望から立ち直るパートの四つに分かれる。独創的だな、と思ったのは最初の部分で、乙女ゲーみたいに各人を攻略していく箇所とか、むりくり東西南北に託けた愛称を付けていく箇所とか、少し奇矯でよかった。東が他の三人の情報を念入りに集めた上で仲良くなるのは「神のみぞ知るセカイ」を思い出す。あるいは「WORKING」の相馬。
親睦を深めて以降はよく見る流れだが、東が結構サイコパスで、歴史紹介ボランティアも点数稼ぎでやってたのは草が生えた。一方、何故かYouTubeはせず、どうにかこうにかテレビに映ろうとしているのは謎。今でもアイドル=テレビなのか? 仮令そうだとしても、露出は増やすべきだろ。SNSはやっているのに、その点は統一性がない。他の子が反対したのかね。デビュー絡みで言えば、西の子が流されたとはいえテレビ出演を許諾したのも不可解。目立ちたくないという設定と矛盾し、実際、最初はテレビ取材をドタキャンしてるから、なぜ出たのか補足が必要。
芸能業が多忙になるパートは、アイドルものにあるあるである。ただ、「アイカツ」や「きらりん☆レボリューション」など、多くは忙しさに意味を見出しており、頑張りすぎてバタンキューが主流。忙しすぎて引退したいというのは、フィクションだとあまりないかも。現実では割とあるんだけどね。百恵ちゃんとか、ピンクレディーとか。M-1で跳ねた芸人も、しんどすぎて死ぬとか言ってるし。
第三パートでは、アイドル全力投球の主人公と、別にそうでもない三人との間に溝が生じ、結果、活動休止となるが、東は万人がアイドルを憧憬してるわけではないと知っている(誰もがアイドルになりたいわけではないと冒頭で名言している)のに、なぜか他の三人が仕事を降りたいと言ったらキレている。いや、まあソロデビューできないと思ってるからメンタルが異様だと言われればそうだが、仕事量をコントロールするなりして、持続可能にする手もあっただろう。相手にやる気はないんだから、東が調整しないと。そうは言っても高校生にそんなシビアな判断は難しいか。
本作の主題は就職先のミスマッチで、アイドルに材をとった就活ドラマである。業界分析や企業調査をせず内定が出たからと入社したり、親や周りに流されて興味がない仕事に就いたり、職種の違いを知らずに就労したりすると離職しやすいという警句が見て取れる。企業研究はキッチリしよう。
あと、どうでもいい話だけど、南の人が一番足細いのは違和感がある。曲がりなりにも運動部でしょうに。東と同じくらいの太さじゃあかんのか? 西の子の脚が一番太いのは多分運動不足。
そういえば、お爺さん役の声優はやたら下手だなあと思ってたら、乃木坂の人だった。
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