第20話 2024年アニメ映画評19・「ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP」

 「ブルーロック」に引き続いての総集編。元々はYouTube動画で、こちらを観ようと思ったら配信が終わっていたし、次の「新時代の扉」と繋がっているような宣伝だったから劇場で観ることに。

 スコアは7点。ウマ娘アニメでは三番目によかった。なお、一番いいのはテレビシリーズの二期で、トウカイテイオーの有馬記念復活を、古馬路線のライバルと言われたメジロマックイーンの怪我と結びつけた点が巧みだった。二番目は「新時代の扉」だが、これは別の記事で。

 本作は覇王・テイエムオペラオーの同期、99世代が主役で、彼女らのクラシック三冠を舞台にする。メイン格はテイエムオペラオーに加え、アドマイヤベガ、ナリタトップロードの三人で、実質的な主人公はトプロことナリタトップロード。

 ちなみに、99世代は秋古馬初の三冠を達成し、00年無敗のテイエムオペラオーが絶対王者なのだが、そんな彼女を差し置き、なぜナリタトップロードが主人公なのかというと、終盤に大きな山場を作るためである。99年のクラシック三冠は皐月賞がテイエムオペラオー、日本ダービーがアドマイヤベガ、菊花賞がナリタトップロードと三馬で分け合っており、他の二頭を主役にすると、盛り下がって話が終わってしまうのだ。

 なお、古馬路線におけるテイエムオペラオーのライバル、メイショウドトウも登場するが、レースには参加しない。作中では何故に走らないのかよく分からなかったが(一応、自信がないとかそんな風に描かれている)、これは史実のメイショウドトウがクラシック路線を走っていないためである。メイショウドトウはマル外=外国産馬で、外国産馬は、国産馬保護の観点から、2001年以降、段階的に開放されるまでクラシック路線を走れなかった。

 映像は全般によくできている。特にレースシーンに光るものがあり、本気で走る際、劇画のように線が太くなったり、体や目が光ったりする演出は格好よかった。ただ、レースが全体に短く、もっと競り合うのを観たかったなあと思った。あと、レース場面でもっと音楽を使ってほしい。ラストスパートだけというのはなあ……。

 テレビシリーズはゆるゆる日常系の毛色が強かったが、今作はヤンジャン連載のメディアミックス「シンデレラグレイ」に近いスポ根モノで、日常シーンはあまりなく、サービスシーンもほぼない(水着はある)。その分、雑味のない構成であり、非常にまとまっている。二時間程度で観るにはちょうど良い分量。

 基本的にはトプロの挫折と努力を主題とし、GⅠで勝ち星を挙げられない彼女が、苦悩しつつもレースに向き合う様を描く。それ以外ではアドマイヤベガの不思議設定に関する懊悩が大きな比率を占める。テイエムオペラオーは、まあ、ほどほどって感じ。サービス精神が旺盛で目立ちたがりなことしか分らんかった。ストーリーは典型的な友情・努力・勝利もので、目新しさは特にないが、負け続けのトプロが最後の最後に菊花賞で勝利し、トレーナーの思いに応えるのはテンプレとはいえ感動的である。

 ただ、アドマイヤベガの設定には首を傾げた。双子の姉妹で生まれる前に死んだ子の代わりに走るというのは、史実に沿っているとは言え、少し不思議。妹と会話したことがあるわけでも、妹が走るのが好きだったわけでもないのだから(何せ生まれてないから)、妹の分までというのは結句、アドマイヤベガの妄想なのである。こういった特殊な妄想を抱くには、それなりのドラマが必要だと思うが、妹が生まれてこれなかったということだけで、説明が終わっていた。まあ、「ウマ娘」ではウマ娘は走って当然という、黒人なら運動神経いいのが当たり前並みの人種認識があるので、そういったウマ娘世界の歪みを体現しているのかもしれない。

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