第12話 2024年アニメ映画評11・「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション前章」
浅野にいお原作のアニメ映画化。前後二篇構成で前篇は3月公開で、後篇は4月に上映予定だったが、5月に延びた。前章を観た段階では原作未読、正確には部分的にしか読んだことがなかった。アニメのスコアは7点くらいかなあ、といった感じ。
絵はかなりキレイで、特にCGの宇宙船は見応えがある。パッと見、手描きにしか見えないのでは? Production I.Gってすごい。あと、これは前篇を観終わってから原作を読んで気づいたけれど、アニメのショットは漫画のコマを再現したものがかなり多かった。人によって意見はあろうが、個人的にはコピーばかりで創造性に欠ける。
作品は異星人が日本にやって来て数年経ち、それが日常になりつつある状況を描く。政治劇もあるが、前篇では日常描写に過半が割かれており、権力闘争はかなり少ない。また、おんたん含むヒロインと中枢で巻き起こる権力争いにはさほど関わりがないため、SF的プロットと日常系プロットが絡み合わず、二元中継で進んでいく。一応、後篇では割と交わり、原作に比べて、アニメの方が二つの関連性は高い。
全般に日常シーンが面白い印象で、政治劇の箇所は各勢力の動向があまりよく分からないため、へえー、と思うだけだった。「デデデデデストラクション」は風刺的要素が強く、異星人絡みの政治的折衝が起きていながらも、それに気づかず日常を送る人々や、異星人差別とそれを是とする人々の心情、異常に頭の悪い政治家などが扱われ、現代社会の悪い部分を煮詰めたようだ。ただ、悪ぶるというか、汚濁をピックアップしすぎな感じもあり、もう少しマトモな人もいるだろ、と思ってしまう。日本がTwitter民やヤフコメ民の巣窟になったようだった。
本編でも明かされているが、漫画版「ドラえもん」が主典拠である。それと同時に、母星は地球を越える技術を持っているが、送られてきた異星人は棄民ないしは貧民だったため弱者である点は「第九地区」に非常に似ている。地球人が異星人を差別・迫害しているのも同じ。かなり影響を受けたんじゃないかなあ。
テーマについては後篇でまとめるとして、意外にあのの演技が良くてびっくりした。声も典型的なアニメ声だし、他の仕事も増えるかもね。おんたんの性格は頭のいい中二病って感じで、いそうだなあ、と思ったが、あの感じならもう少し知的好奇心が強い気もする。宇宙船について色々調べてそうなのに、そんな風には描かれてなかった。この辺は物語におんたんの個性が殺された点かもしれない。門出は、教師と一線を越えようとしているところ以外は割と常識人で、他人と上手くやれそうなタイプ。本作後半では二人の過去篇が始まり、幼少期は全然違う性格であったと示される。ただ、あそこからどうやったらこうなるんだろう、とは思った。この二人のギャップがどう埋まっていったのかをもう少し描いてほしかったなあ。
「デデデデストラクション」のいいところは、画もそうだが、キャラが個性的でインパクトに残る点だろう。単に奇抜というわけではなく、絶妙にいそうなラインを突いているのが巧みで、アニメやドラマで見かける誇張しすぎてちょっと冷めるというのがあまりない。よくよく考えると、割と変な人ばかりなんだけどね。あと、キャラクターにおける美男美女の比率が結構リアルだった。ただ、東京だし、もう少し美男美女は多いだろ、とは思った。地方都市くらいの割合だったね。
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