第8話 2024年アニメ映画評7・「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」

 ゼロ年代に人気を博した「機動戦士ガンダムSEED」・「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」の続篇。完結から二十年ぶりの作品で、映画化までこんなに間が空いたアニメは他にないんじゃないか? スコアは7点くらい。「ハイキュー」と同じく予習必須で、一見さんお断りとなっている。「SEED」は設定や話の流れがファーストガンダムによく似ているが、「DESTINY」がゼータに似てるかは知らない。

 映画はTV版と比べてやたら絵がキレイなものの、ショット毎にキャラの顔が別人みたいになる癖は治っておらず、特にラクスは、誰だこれ、となるシーンがあったりした。

 大筋は「DESTINY」のラスボス・デュランダルの後始末で、彼が実行しようとしたデスティニープランに関する話。デスティニープランとは遺伝子によるメリトクラシー社会の実現を目指すもので、「PSYCHO-PASS」のシビュラシステムに繋がるアイディアである。この計画は、血縁的身分や派閥の破壊と、適材適所による合理的社会運営を目的とし、その結果、競争は消え、争いのない社会が生れるとデュランダルは考えていた。

 プランを受け入れられるか否かは、階級に依存する。キラやラクスなどは先進国出身で、遺伝子は優秀、目立った障害もないから、才能的には自力で人生を切り開ける。そうした人物にとって選択肢を制限される当計画は害悪でしかない。一方、自由が最初から奪われている貧困層や途上国の人からすればプランが福音となる目算は高い。本編に登場するのは遺伝的に恵まれているキャラクターばかりなので、計画に関する議論はかなり偏っており、コーディネーターや優秀なナチュラルからすれば、どちらに転ぼうとあまり大差ないため反対意見も賛成意見も薄っぺらい。

 そもそもプランは哲人政治的面を持つため、個性重視の近代民主主義とは絶望的に相性が悪い。科学的根拠に基づいて身分社会を作るということなのだから、性質的には前近代システムで、それがエリート主義のコーディネーターから出てくるのは皮肉が効いている。また、デュランダルはブルーコスモスを嫌悪するが、それと似通った遺伝子に基づく血統主義に陥ったのは面白い。

 要するに、プランの提出した問いとは、自由こそが幸福であるのか、不自由でも豊かなら幸福なのか、というものである。だからこそ、後者の見解に説得力が欲しかったが、それを語る人物はいなかった。

 続く今作は、デスティニープランって結局どうするの? という点が眼目。しかし、プランを切実に求める者ではなく、利権化しようとする人物が敵役だったため、悪い奴じゃん、たおそー、という勧善懲悪的物語となった。視野の狭さは相変らずで、前作同様、恵まれた人間達の陰謀ごっこ・討論ごっこに終始したと言える。

 それはそれとして、色々コミカルなシーンがあり、何の説明もなく、シンが分身してたのは普通にギャグ。お前、忍術使えたのか? また、アスランがキラをボコボコに殴って説教していたが、お前は人のこと言えんの、と笑ってしまった。あと、ズゴックで助けに来た時の顔もオモロい。他にも、マイティーストライクフリーダムガンダムが意味不明に強すぎ、切迫したシーンのはずなのに、笑えてしまった。外付けパーツをつけただけなんですが。アカツキとコイツは高性能すぎである。     

 レクイエム再建をどうやってバレずにやったのかが、本作最大の謎。

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