第9話 2024年アニメ映画評8・「映画ドラえもん のび太の地球交響楽」
3月最初の映画は老舗アニメの劇場版で、恒例作の一つ。現在、毎年上映されるアニメ映画は、「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」「名探偵コナン」「プリキュア」「アンパンマン」くらいで、「きかんしゃトーマス」や「パウパトロール」も最近は毎年やっている気がするけれど、観てないから少し自信がない。それはともかく「ドラえもん」映画は近年不調で、そんなに面白くない。子供の評価は分からないが、大人が見るに堪えないものになりつつある。今回も微妙でスコアは5点。つまらない寄りの普通。前作があまりピンと来ず、それよりはよかったが、抜群にいいかと言われると首肯できない。近来、他シリーズの恒例作品は割と面白いことが多く、特に「アンパンマン」「コナン」はかなり出来がいいので、それと比べるとなんだかなあという感じ。
絵に関してはいつも通りというか、劇場版だけやたらと全キャラ可愛くなるのは不思議な感じだ。特別篇だからみんな気合いを入れてるんだろうか。特にしずかちゃんの力のかけようはかなりもの。一方、ドラえもんはテレビ版とあまり変わらなくて少し安心。声優と絵柄一新後の「ドラえもん」映画は中盤と終盤にアクションの山場が置かれることが多く、今回も似た構成だった。ただ、ノイズとのバトルが演奏によるものだったので少し華がなかったか。
テーマは個性と芸術の関わりといったところ。芸術を競争から切り離し、愉しむ物と捉えたい意図は感じた。是非とも同じことをスポーツでしてほしいが、競争前提の競技ばかりだから難しいかもしれない。作中で、のび太がリコーダーで出す変な音、「の」の音が、最初はバカにされながらもミッカ達との出会いを経て個性として評価される点や、どれだけ上手くいかなくても、のび太が諦めずリコーダーを練習する点にはグッときた。普段からこのガッツがあれば、勉強もちゃんとやれるだろうに。まあ、のび太は射撃とあやとりの天才だから、義務教育が終わったら即座にその道に入った方がいいと思うが。……いや、でも未来ののび太は射撃のオリンピック選手になってないし、ドラえもんや両親は教育をミスったのかも。
よかったのはラストシーンで、結構驚いた。浴室の場面で、ちゃんと伏線も張られていたし、道具の意想外な使い方だった。あらかじめ日記との組み合わせも感心した。
ただ、ポツポツと不可解な箇所があるのは気になり、例えばチャペックの音楽認識が謎。音楽のプロである彼が、ドラえもん達を伝説の楽士・ヴィルトゥオーゾと勘違いするのは無理があり、どう考えても、彼等より上手かつ楽しそうに演奏している人がいるだろう。「ムードもりあげ楽団」のバフがあると言っても流石に……。ムシーカ星に音楽がないなら全然あり得る話だが、それだと「マクロス」みたいになるからやめたのかもしれない。あと、チャペックが目覚まし時計を楽器と間違えるのは何を調査してたんだと思った。これらは彼が音楽に通じたロボット故の不可解で、普通のロボットならこんなことは思わなかったろう。
他にもドラえもんが最適な道具を使っていないのは疑問。最終盤でのび太のリコーダーが壊れるのだが、それで右往左往してる暇があったら「タイムふろしき」で直せよってなるし、ノイズの巨大さにビビる前に「ビッグライト」なり何なりで音を大きくすればいいのではと思ってしまう。この二つは割と有名な道具だから、使われないのは少し変だ。そもそも、「あらかじめ日記」という最強クラスの道具が出ているのもよくなくて、書いたことが全部実現するんなら、この道具で全てが終わるじゃんと感じてしまう。
ノイズの設定も不思議で、音楽が苦手なら、たとえ発芽しても地球じゃ絶対繁殖できないだろう。ムシーカが滅んだのは音楽が権力によって抑圧・制限されたから筋は通るが、地球はそんなことになってないし、ノイズ大暴走の理屈がムシーカと合ってなくて首をひねった。
にしても今年のジャイアンとスネ夫はいつにも増して品性下劣だったなあ。
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