第7話 2024年アニメ映画評6・「劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦」

 人気ジャンプ漫画の映画化でテレビシリーズの続篇。「ハイキュー」も連載が終わって結構経つが、なお人気らしく、公開日翌週の木曜くらいに観に行ったら、もう入場者プレゼントがなくなっていた。欲しかったんだけどなあ。2.5次元舞台が時折やってるし、根強いファンがいるんだろう。スコアは7点くらいだが、原作かテレビアニメの予習が必須なので、鑑賞のハードルは高い。

 ジャンプのスポーツ漫画は結構魔境で、打ち切り本数が桁違いだったりする。ヒット作の内、真っ当なスポーツものは「SLAM DUNK」がダントツ有名で他に「アイシールド21」やマニアックな人気を持つ「P2」なんかがある。その他だと、「テニスの王子様」や「黒子のバスケ」、「キャプテン翼」、みんな大好き「LIGHT WING」のようなトンデモ系(特に「テニプリ」はテニヌと言われ、ヤバいスポーツの代名詞)か、「リングにかけろ」や「火ノ丸相撲」、「タカヤ――閃武学園激闘伝――」という実質バトル系が多い。寧ろ、打ち切られて有名になった作品の方が多いんじゃないか(「LIGHT WING」も「タカヤ」もその部類)? 驚くべきことに、ジャンプ本誌では野球漫画のヒット作がない(「忘却のバッテリー」はジャンプ+、「ダイヤモンドの功罪」はヤングジャンプ)。……いや、まあ「Mr. FULLSWING」があるにはあるんだが、打ち切りだし、アニメ化されてないしで、どう扱ったものか、って感じ。因みにこの作品も「テニプリ」系である。

 そんな中、やったことはあるけど、そこまで人気ではないバレーボールでヒットしたのが「ハイキュー」である。率直に言って、目新しい設定や展開があるわけではないのだが、とにかくバレーの見せ方が上手く、試合がスリリング。「アイシールド21」ばりの戦術解説も凝り性の漫画オタクに刺さる。アニメも負けず劣らずで、流石はProduction I.Gと言いたい。

 本作も作画の良さは健在。テレビ版より凝っている箇所もあり、ラストの長いラリーシーンは研磨視点のPOVで描かれていた。この演出ならびに筋の構成から言って、この話だけは孤爪研磨が主人公で、それがスパイスである一方、瑕疵にもなっている。

 筋は原作と同じで安定した面白さだったが、作品内の位置づけ的には稲荷崎戦や鴎台戦に劣る。ゴミ捨て場の決戦という因縁の対決を清算するためだけに作られた節がある。先にも述べたが、この試合の実質的な主人公は研磨であって翔陽ではない。バレーを暇潰しにしか思っていなかった研磨がそれを好きになる話で、本来の主人公・翔陽は影が薄い。

 その影の薄さは、春高バレー篇において異質で、青葉城西戦以降の試合は、翔陽(時折、他のメンバー)がどう成長するか、というラインで統一されているのに、音駒戦だけそれがなく、ちぐはぐな印象を受ける。研磨が主軸なのに問題はないものの、翔陽に成長らしい成長が用意されなかったのは「ハイキュー」全体としてみれば欠点だろう。

 作中では研磨の策で烏野が追い詰められるが、これを破るのが影山というのは微妙。勿論、カタログスペック的にはそれがリアルだけれど、ビルディングス・ロマンとしては翔陽に見せ場が欲しかった。研磨がバレー好きになるにしても翔陽が想像を超えなければならないはずで、その超え方が単線的成長の結果というのは意外性に乏しく、研磨、お前はそれでいいのか、となる。研磨の策を二種用意して、片方を翔陽が破るとか、そんなんでもよかったのでは? 研磨は賢い設定だし、それくらいできそうでしょ。

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