第6話 2024年アニメ映画評5・「大室家 Dear Sisters」
よくある日常系アニメの映画化で、二部作の前篇。観に行った時は「ゆるゆり」のスピンオフと知らなかったが、特に問題はなかった。鑑賞後、「ゆるゆり」は全部観たが、日常系なので、どれが一番いいとかはないかも。個人的には「大室家」の方がいいようにも思うが、まあ、両方見たらいいのでは。スコアは5点くらい。ちなみに、これを書いている時点で既に後篇も観ているが、後篇の方が面白いです。
絵は普通というか、すごくいいわけでもなければ、ヤバいわけでもなく。感情表現はかなり露骨で、これはキャラの殆どが低年齢であることに由来しよう。流石に、女子高生である長姉・撫子周りは直球の感情表現は少なく、やや大人な印象があった。
知り合いの至言に、「サザエさん」を一気観してはいけない、というのがあるが、日常系のアニメとは遍くそういうものである。週に30分くらいが丁度いい。ゆえに、劇場で空気系・日常系を観させるのはかなりの技術が必要だ。その点では「大室家」も結構しんどく、途中から飽きてしまった。これと比較すると山田尚子というのは達者で、「劇場版けいおん」を飽きさせなかったのには腕を感じる。
「大室家」の珍しい点は、百合アニメなのにレズカップルが出てくる点である。百合アニメというのはBLアニメと同じく、同性愛者のための作品ではないため、主たる視聴者である男性に向けて、匂わせだけで終わることが多い(男がレズカップルを嫌いなのかは知らないが、そういう作品ばかり)一方、本作では撫子が明確に同級生と付き合っている。ただし、交際相手は誰か分からず、候補の中からそれを当てるミステリー的手法がとられている。なお、後篇でも答えは出ない。
BL作品がゲイのリアルに即していないように、百合アニメもレズのリアルに即していない。ゆえに、これらジャンルは異性愛者のための作品であり、ゲイやレズがBL・百合をあまり好きでないことが多々あったりする。
閑話休題。本題に戻ると、百合アニメの多くはカップルが出てこず、それを直球で描いているのは「あさがおと加瀬さん」「やがて君になる」くらいか。一応、「桜Trick」もあるが、アレって付き合ってるんだっけ? 「あさがおと加瀬さん」はちょっと捻ってあって、百合であることの苦悩ではなく、恋愛一般の苦悩に焦点が当たり、百合も異性愛も等価であることを描いている。「やがて君になる」は「君の名前で僕を呼んで」に似たところがあり、同性愛をイニシエーションと捉えるキャラに寿美菜子が傷つけられる。
同性愛=通過儀礼とするのは、古代ギリシャや江戸時代などの男性同性愛の形に近く、鴎外「ヰタ・セクスアリス」には、明治期の有様が描写されている。これの女性版が「やがて君になる」と言えるが、同じ発想は「劇場版 零」にもある。この考えは大人になっても同性愛である人をぶった切るものだが、昔は割と現実にあったようである。
本作は「あさがおと加瀬さん」の系譜に位置づけられ、同性愛固有の懊悩というのは登場しない。まあ、この点は後篇で深掘りされることで、前篇は大体が日常シーンである。キャラがちょっと多い上、大室家三姉妹はテレビアニメで出番の多い櫻子以外、ほどほどに理解した辺りで話が終わってしまう。姉は後篇で突っ込んで描かれるので、末子・花子が不憫でならない。
ちなみに漫画まで含めればレズカップルものはもう少しある気がする。まあ、詳しくないから、やぶうち優くらいしか思いつかないが。
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