第6話
……マジであっちゃったな、地下室。
まぁ、行くか。
行かないことには、話が進まないし。
そう思い、そのままゆっくりと足音を鳴らさないように階段を降り始めた。
今のところ、話に聞いた女の子の声ってのは聞こえてこない。
……いや、女の子どころか、人っ子一人いないんじゃないか? と思えるくらいに静かだ。
女の子云々はともかくとして、ロップ伯爵は下にいてもおかしくない……どころか、いない方がおかしいと思うんだが……地下室自体に音を遮断するスキルか何かが施されてたりするのか?
……仮にそうだとしても、確かめる術は無いな。
いや、俺が音を出せば済む話なのかもしれないけど、こんなところで音を出す訳にはいかないし、このままゆっくりと音を立てないように進んで行こう。
そうして、進み続けていると、牢屋のようなものが見えてきた。
……まさか本当に女の子が閉じ込められてるのか?
俺はロップ伯爵がいるとしたらここだと思い、更にゆっくりと慎重に歩き出した。
「……誰」
「──ッ!?」
牢屋に近づいたところで、そんなか細い声が聞こえてきた。……女の子の声だ。
俺に言ってる……訳ないよな。
俺は隠密スキルを発動させてるし、音を立てた覚えなんてないからな。
いや、それより、本当にいたな。女の子。
更に俺は牢屋に近づいた。
確かに牢屋の中に女の子がいたとはいえ、まだロップ伯爵がクソ野郎と決まったわけじゃない。
ただ単にこの女の子(暗くてまだ姿は見えないけど)が犯罪者だから、こうやって閉じ込めてるだけの可能性だってあるからな。
まずは牢屋の中にいる女の子に話を聞こう。
仮に女の子が犯罪者だった場合、誰に何を言おうが耳を傾けて貰えるとは思えないし、そもそもの話、俺は義賊で元々犯罪者だ。
バレたとしても問題は無い。
ロップ伯爵がクソ野郎なんかじゃなかった場合、ここで盗みをする気はないしな。
「……? …………誰?」
「ッ……見えてる、のか?」
少し近づいたからこそ気がつくことが出来たんだが、暗闇の中で赤黒く光っている瞳は完全に俺を捉えていた。
仮に見えては無かったんだとしても、俺の存在は明らかに認識している証拠だ。
「…………見えない。……でも、分かる……音がした、から」
音……? いや、俺は音なんて完全に消して歩いていたはずだぞ?
……聴覚を強化するスキルか何かか? 確かに、それなら納得すること自体はできるには出来るけど、こんな地下室に閉じ込めているような存在にスキルを封じる道具を使っていないとは思えない。
……まさか素でただ単純に耳が──ッ!?
そこまで思ったところで、ちょうど目も慣れてきたことで牢屋の中にいる存在の姿が確認できた。……出来てしまった。
少し遠目でも光って見えていた赤黒い瞳に綺麗で長い白髪、座っているから少し分かりずらいけど、多分身長は161cm程で全体的にスレンダーな体型をしているどこか儚げな美少女。……そう、そこまではいい。
ただ、問題はここからで、おでこの左部分から人間ではありえない、小さいけど、瞳と同じで赤黒い角が生えていた。
……俺はその存在を知っている。
貴族として受けた教育はほとんど洗脳教育ではあったけど、一部本当に役立ちそうな知識も何個かあった。
その一つがこの目の前で牢屋に閉じ込められている存在なのだが……それは絶滅してるはずじゃ無かったのか?
「魔族。今日も拷問の時間だ」
俺が目の前の存在……魔族に対して困惑していると、突然後ろからそんな声が聞こえてきた。
俺はこうやって魔族の少女に話しかけてはいたけど、隠密スキルを解いていた訳では無い。
だからこそ、後ろから聞こえてきた声の持ち主……ロップ伯爵にはまだ俺の存在はバレていなかった。
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