第3話

「お頭、今日は大量でしたね」


「あぁ、そうだな」


 あれから、運がいいのか本当に盗賊のアジトを発見することに成功した俺は、盗賊のアジトに侵入してきていた。

 

 ……よく考えたら、俺はこいつらが誰かから奪ったものを奪って自分のものにするのか。

 ……まぁ、こいつらが誰から奪ったものかなんて分かりようがないし、気にするだけ無駄だろうし、特に深くは考えなくてもいいか。


 油断しているのか、会話をしている盗賊たちにバレないように俺はアジトの奥に移動した。隠密スキルを発動させているとはいえ、音は隠せないみたいだから一応ゆっくり歩いてたんだけど、全然気が付かれる様子は無かった。


 幸いと言うべきか、そこには盗んだであろう物と馬しか置いてなく、人の姿は無かった。

 良かった。

 馬がいてくれたこともそうだけど、もしも人が攫われてたりしても俺にそいつを逃がしてやる力は無い……ことも無いかもだけど、リスクが高かったからな。そもそもその場合、馬を持っていくことは諦めなくちゃならなかったし、本当に良かった。

 

 そんなことを思いつつ金目の物を素早く圧縮させ、父だった人から盗んだ時と同じような感じでポケットに適当に突っ込み、馬と一緒に隠密スキルを発動させて来た時と同じように足音を立てないように楽しんでいる様子の盗賊たちの横を通り抜け、アジトを後にした。

 アジトに侵入した時とは違って、馬が一緒だったから、当然多少の足音は出てたし、異常に気がつくやつも出てくると思っていつでも馬に乗って逃げられるような心構えをしていたのだが、それは全くの無駄になった。


「……まぁ、じゃあ、行くか」


 言いたいことが無いとは言わないけど、言ったところで意味なんてないし、着いてきてくれた馬に一言そう言って、俺は馬の背中に乗った。

 騎乗位は出来る。

 血縁上の父だった男に練習させられたからな。




 そして、そこからは二度程馬の為に休憩を挟みつつ森の中を進んだ。

 一応この世界には魔獣なんてものもいるけど、この辺には生息していないみたいだし、何かに足止めされることなく、スムーズに進むことが出来、直ぐにロップ伯爵が治める街が見えてきた。

 

 身分証は当然ながら持ってるけど、こっそり入るか。俺の持ってる身分証じゃあ俺がここにいることがバレバレになってしまうし。

 ロップ伯爵はあいつと仲が良かったからな。

 伯爵自身はもしかしたらいい人なのかもしれないけど、結局調べない限りそれも分からないし、あいつから俺が街に来たら捕まえる、または報告をしてくれるように頼まれている可能性がある以上、当然のリスクヘッジだ。

 

 さて、こっそり街に入るのは良い。

 ただ、馬を連れたままこっそり入るのは流石に厳しいかなぁ。

 盗賊のアジトの時はアイツらが油断していたっていうのと、うるさかったっていう理由でバレなかったけど、門兵や普通に街に入ろうとしている人は全然うるさくなんてないし、門兵に関しては普通に警戒してるだろうし、足音でバレてしまうだろう。


「残念だが、ここでお別れみたいだな」


 そう呟きつつ、俺は馬が興奮しすぎないように調整しつつ、お尻を軽く叩いてやった。

 その瞬間、馬は近くの商隊に向かって走っていった。

 それを確認した俺は、直ぐに誰にも見られていないことを確認してから、隠密スキルを発動させた。

 いきなり馬が走ってきたことで商隊は軽くパニックになっていたようだったけど、直ぐにそれを収め、色々と話し合いをしていた。

 あの調子なら直ぐに飼い主が居ないことに気がついて、貰っていってくれることだろう。

 

 さて、俺も街に入るか。

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