SCENE:6 『TRIAL』
なんだかんだ【地下ダンジョン】も楽しめた。
村での一仕事を終えたら、次のダンジョンはもう少し森が続き、砂漠が広がっていたりするのだろうか?
海辺はどのあたりのシナリオでたどり着けるのだろうか? 火山に訪れるときはストーリーの中盤を超えてからだろうか。
雪山にきたら、いよいよラスボスが近かったりするのだろうか?
色々な想像が頭の中で浮かび上がる。
そんな間に村に帰ってきた。
門を開いて、釣りをしている男二人に話しかけよるとすると、片方の男の頭には赤い[!]が浮かんでいた。
近くによって話しかけようとすると
「【アダムズ】さん! あんた無事だったんか!?」
「ッ! それは【オオヤマイヌの牙】じゃないか! やってくれたのか! ありがとう【アダムズ】さん!」
と男二人は意気揚々とはしゃぐ。
「【アダムズ】さん! 少しまってておくれ」
と、片方の男が突然ものすごい速さで走り出していってしまった。
少し待つと男は同じ速度のまま帰ってきた。
「村長に【オオヤマイヌ】の事を伝えたら、喜んでたよ! 是非とも報酬を受け取ってほしいって!」
【オオヤマイヌ】を倒した時よりも大きいゴールド袋を押し付けてきた。
「あんたの強さなら、この門の先で生き延びれるだろ!」
「良かったらこの村で物資を補給してから外に向かってくれ。安くしとくからな。」
「門を開けておくよ。気を付けてくれよ! 村の【ブレイバー】さんよ!」
会話が終わった後、男二人は定位置である釣り竿の前から動かなくなってしまった。
【ブレイバー】? これも初めて聞く単語だ。
『【ブレイバー】はそのまま勇者の事を指しますぅ』
「勇者か……」
顎を右手の親指に当てる。
【イヴ】の方に目をやる。
「【勇者】の存在があるなら、【魔王】の存在があるわけだけど。……この世界の物語ってどういう風になってるんだ?」
『すこし、長くなりますけどぉ よろしいでしょうか?』
「いいけど、外の道中にでも聞かせてくれれば」
『……。』
珍しく反応をしない。この言葉に何故か目を軽くそらしたような気がする。
何か不機嫌になるような地雷を踏んでしまったりしただろうか?
村の入り口から反対側の門が開いていた。先程の村のクエストをクリアしたからだ。
勇ましく門の外に足を踏み入れ……
突然ガクンッと重力が襲い掛かる。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
軸足を前にしたため、後ろ足で踏みとどまることもできず、何一つ抵抗なく自分の身体が自由落下を始めた。
落下しながら振り返る。
さっきまで村の門の足場が徐々に遠くなっていく。
「え、ちょっ! 待っ……」
徐々に遠ざかっていく地上はやがて小さくなって見えなくなっていく。
もう何秒落下しただろうか。
落下加速度による着地衝撃はもう人間の身体では……。
そもそも地面が見えない。着地できるのか……!?
(これは……死ぬのか?)
脳が死を覚悟した。
『(ッたくしょうがねぇなぁ……)』
完全にパニックに陥った俺に幻聴か何かが聞こえた気がした瞬間、何かが身体に触れた。
その瞬間、自由落下は止まり、落ちる寸前の地点に戻されていた。
『【アダムズ】様!! 大丈夫ですかぁ!?』
相当な高さを飛んでいたはずだが、着地時の衝撃は一切なかった。
「……いま俺、変なところに飛び込んじまって」
『貴方様が見えなくなったと思ったら急にここに現れて……』
心臓がバクバクと高鳴っている。
「……」
『すみませんでした。一歩のところで踏みとどまるかと思われたのですが、まさかそのまま落ちてしまうとは思わなくて……』
俺と【イヴ】は呆気に取られていた。
だが、ただ一つだけ解るのは無がひたすら広がっていた……という事だ。
ゲームの世界でも絶対にありえない貴重な体験をしたところですっかり腰が抜けて立てずにいた。
へたり込んだ状態のまま、地面が不自然に切り取られた端の落ちた場所を覗く。
『【エデンズ・ブック】はここまでとなります』
「なるほどな……」
(体験版はここで終了……てことか)
などと考えていると、【イヴ】の思いつめた表情で佇んでいた。
「どうかしたのか?」
『大変申し訳ございません』
「なんで謝る?」
『私は……私が管理者権限を持っていたにも関わらず、[コンソール]の使い方を理解していながら、貴方様が来るまで何一つも創造することができなかったのです』
「待った。創造? 何言ってるんだ?」
【イヴ】は初めて地面に足をつけ、そのまま自分と同じ目線になるよう座り込んだ。
『貴方にお願いしたいことがあります』
『どうか』
『世界を終わりに導いてください』
SCENE:6 『TRIAL』 Chapter.1 END...
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます