第39話

???「舞の稽古をして欲しいの」

???「舞の稽古?」


ここは、冥府。いつも通り「紫雲雨花」と「桃時」は雨花の仕事部屋で話し合いしていた。今は「不山橙」は会議にため不在。


雨花「でもわたし舞なんて踊ったことも知識もないよ?」

桃時「正確に言うとアタシの舞がお手本通りになっているかみてほしいってこと。それならあんたにもできるでしょ?」

雨花「なるほど……それならわたしにもできるかも!」

桃時「じゃあお願いね〜!じゃあ明日から一ヶ月間よろしく〜」

雨花「えっ!?一ヶ月間も!?」

桃時「そ。一度引き受けたものを却下するなんて言わないわよね?」


桃時は、女子の友達は橙と雨花しかいない。橙は厳しそうで嫌なので、雨花に頼むしかないのだ。つまり断られるわけにはいかない。


雨花「まぁいっか。良いよ!やろう!」

桃時「(よしっ)」


心の中でGoodポーズした桃時であった。


雨花「でも舞って言ってたけど、今この世に降りる時期じゃないよね?なんで舞踊るの?」

桃時「それが私の舞が上の神様たちに気に入られたみたいであの神様たちの前で踊らなきゃいけなくなったのよ……はぁ……」

雨花「あぁわたしもよく悩まされるよ……上の神様の無理強いには……それに上の神様絡みのことは厄介事になることこの上なしだからなぁ……」

桃時「本当に憂鬱。気も使わなきゃだし……」

雨花「でもなんか色々抜けてて軽いところあるからそこまで身構えなくても良い気がするけど……ふふっ」

桃時「それもそうね!じゃあ明日からよろしく!」


こうして桃時の舞の稽古が始まった。


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雨花「もうちょっと手を右にしてみて!そうそう!あとはそこでクルッと回る。そして、足で蹴るようにして!本番は周りに水があるところで舞うからその水を蹴って飛ばさないといけないから。」

桃時「手を右に。そして回って足で蹴る……どう?」

雨花「うん!段々上手になってきてるよ!この動画のようになってきてる!今は85点くらいかな?」

桃時「もっと練習しなきゃ」

雨花「桃時ちゃん休みながらやってね?」


舞の練習を頑張る桃時。そして動画を元にして桃時に指示していく雨花。徐々に舞も磨きかかってきた。そして……


雨花「今の完璧だった!!190点満点!!」

桃時「それは盛りすぎ!!でもありがと!よしもう一回!」

雨花「えっでも休憩した方が良いんじゃ……」

桃時「大丈夫よ。やるわよ」


雨花の制止を振り切って、桃時は練習した。どうしてこんなに頑張っているのか。それは今回の舞を踊る場所には死神組も常駐する。つまり兎白も舞をみるのだ。それを雨花も分かっていたため、あまり強く止められなかった。

しかし、これが後に悲劇を呼ぶとは想わなかった。


雨花「(桃時ちゃん大丈夫かな……)」


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舞の当日。

騒ぎが起こっていた。それは……


???「…………っ!」

???「桃時ちゃん……」


「どうする?」「もう時間がない」「上の神様たちももう来てますよ!「今回は断念するしかないかもしれない」


桃時は筋肉痛と足をつってしまい舞を躍ることができなくなってしまったのだ。


雨花「ごめんね。わたしがもっと強く止めておけば……」

桃時「あんたのせいじゃないわ。アタシが無理やり練習したのがよくなかったのよ。」

雨花「でもあんなに桃時ちゃん頑張ったのに……踊れないなんて……」


???「ん?どうしたんだ?」


舞台袖に入ってきたのは瑠璃人だった。


桃時「なんであんたこんなとこにいんの?」

瑠璃人「なんか騒ぎが起こってるって言われたから一応見回りに」

桃時「あぁそうだったの……ってこんな奴はどうでも良い」

瑠璃人「えっ酷くね?」

雨花「今それどころじゃないんだよ!このままだと桃時ちゃん筋肉痛とつっちゃって舞を踊れないの……」

瑠璃人「えっそんなの簡単じゃん。」


瑠璃人は桃時の足を掴む。そして……


雨花「ちょっとあんまいじらない方が……」


グキっ


桃時「みぃぎやぁぁぁぁ!!!!」

瑠璃人「おかしいな……じゃあこっちはどうだ!」


ムギっ


桃時「ふぎゃぁぁぁぁ!!!!」

瑠璃人「よしじゃあ次は……」

桃時「あんたぶっ殺すわよ!!!!」


瑠璃人は殴り飛ばされた。


雨花「今のは瑠璃くんが悪い」

桃時「あいつのせいで益々痛くなったんだけど……!!!!」


「もうどうしようもないのか……」


誰もがもう諦めようとした時、ある人があることを想い付いた。


「なぁ誰か代わりに踊れる人いないか?」


この発案にみんな希望を見い出した。


桃時「代わりに踊れる人……」


桃時は雨花の方向をみる。雨花は目をつぶって自分は無関係かのように振舞っている。


桃時「こいつ踊れます!!」


雨花の手を引っ掴んであげる。


雨花「ちょっとちょっと……!」

「本当に踊れるのか?」

桃時「えぇ!だって彼女と舞の稽古しましたから!」

雨花「ちょ……桃時ちゃん!」

「本当か?よし彼女用の衣装を用意しろ!舞は仮面を被るから彼女が代わりになっても気づかれることはないだろう!」

桃時「よし……あんた行ってr……っていない!」

「何!?あっあそこだ!」


舞台袖から出て行く瞬間雨花の髪がなびいて気づかれた。


雨花「マジで勘弁して!!!!」


雨花を必死に追いかける大衆。壁に必死でしがみついて足を引っ張られている雨花。とうとう壁から手が離れてしまい捕まってしまった。


雨花「嫌だ嫌だ!桃時ちゃんは舞をみせたがってる人がいるのにわたしが代わりになんて踊れない!!」

桃時「!」


「(気づいていたのね……まぁ雨花らしいわね)」と想い、優しく微笑む桃時。


桃時「良いの。あんたならアタシ任せられる。あんたが良いの。あんたが代わりに舞って欲しい。お願い」

雨花「…………」


雨花はしばらく考え、そして……


雨花「分かった。やる。」


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「兎白さん!もうすぐですね!桃時さんの舞!綺麗なんだろうな」

兎白「沢山練習したと聴いているし、とても可愛いだろうな。まぁあいつはいつも可愛いが」

「惚気話なっちゃったし……ふふっ」


とうとう舞が始まった。


「わぁぁぁぁ!!!!」

兎白「…………」

瑠璃人「兎白さんはどう想います?」

兎白「俺は……」


「なんか想像してたのとちょっと違うな」「もっと一つ一つの動きに激しさがあった気がするが……?」「もっと静けさの中に溌剌さもあった気がする……」「この舞はなんというか……」

「でも……」「なんかこれも良いわね!!」


桃時「ふぅ……何とかなってるわね。良かった。」


「最初は舞の雰囲気が全然違うから詰んだかと想ったが……」「あの舞は寂しそうな心細そうなそんな舞だな」「なんかみてると少し泣きたくなってくるな」「月も星もない闇夜みたいな舞だな」


桃時「(まぁそれは雨花だから……)」


「でも何とか納得してる人もいて良かった」「本当にな」「このまま無事に終わると良いな」「そうだな!」


舞台袖から安堵の声を漏らして、雨花の舞を見守りながら、無事雨花の舞は終わった。


雨花「うーん終わった終わった!」


雨花は仮面を外し、休憩している。


桃時「お疲れ様。その仮面重いでしょ?」

雨花「うんめっっちゃ重い!信じられないくらい重い!こんな想いの付けて桃時ちゃん毎年舞ってるんだよね……本当にすごいと想う……!」

桃時「まぁ舞が無事終わって良かったわ。」

雨花「そうだ!さっき瑠璃くんから連絡が来て兎白くん会場の外で待ってるって!」

桃時「!、そう」

雨花「桃時ちゃん」

桃時「?、何?」

雨花「兎白くんは桃時ちゃんが想ってるより桃時ちゃんのこと大好きだよ」

桃時「えっそれってどうi……」

雨花「行ってらっしゃい!」


桃時は雨花に押され、会場の外に向かうことにした。


兎白「桃時」

桃時「何?どうしたの?あんたから呼び出すなんて珍しいわね。」

兎白「今日の舞、あれお前じゃないだろ」

桃時「えっ?なんで知って……あっ瑠璃人から聴いたの?」

兎白「違う。みればわかる。お前の舞はもっと感情的で情熱的だ。そしてその中に儚さがある……そんな舞だ。お前……足がそうなるまで練習したんだから相当頑張ったんだろ?悔しかったんじゃないのか?」

桃時「!」


《兎白くんは桃時ちゃんが想ってるより桃時ちゃんのこと大好きだよ》


桃時「ふっふふふ。」

兎白「何だ?どうしたんだ?」

桃時「別になんでもないわよ〜……確かに悔しかったわ。でも代わりを務めたのは雨花だもの。全然嫌な気分じゃないわよ。」

兎白「!、やっぱりあの舞。雨花だったのか……道理で寂しくなるわけだ……」

桃時「でも綺麗だったでしょ?雨花の舞。」

兎白「あぁ綺麗だった」


桃時は、兎白に向き直ってこう告げた。


桃時「次はあんたの前でちゃんとアタシの舞を踊るわ」

兎白「ほ、本当か?」

桃時「約束よ」


二人は小指を絡ませて約束を交わした。


雨花「わたしの舞は、寂しいか。舞だけでそこまで分かっちゃうんだね。兎白くんも」


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???「動画撮れてるかな?」

???「大丈夫です!」

???「生で観るのは初めてだな」

???「オレもですよ〜」


雨花、橙、兎白、瑠璃人がスマホで動画を撮る。スポットライトが当てられ、桃時の舞が始まる。


雨花「情緒に溢れた舞だよね」

橙「「自分」というものを強く舞に反映してますね」

兎白「やっぱり桃時の舞はいつ観ても情熱的だな。」

瑠璃人「そんな難しい言葉で表されるとオレついていけない……でもあんたららしいっちゃあんたららしいか……ふふっ」


こうして、桃時の舞は見事無事に終わり、それぞれの感想を桃時に伝えながら帰路についたのだった。

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