第36話

???「……どこにいるんでしょう……」

???「どうしたの?橙?」


ここは、冥府。いつもなら「不山橙」は仕事をしているのだが……桃時に声をかけられわけを話す。


橙「雨花さん知りませんか?」

桃時「知らないけど……何かあったの?」

橙「それが今日仕事に来てなくて……」

桃時「え!珍しいわね。あいつ仕事自体には必ず来るのに……」

橙「そうなんです……何かあったのかと家にも行ってみたんですがいなくて……雨花さんが行きそうな場所は大体行きましたし……」

桃時「じゃあ死神組に行ってみない?」

橙「えっ?何故ですか?」

桃時「いるでしょ。アタシたちの中で雨花のことを昔から知ってる白い兎が」

橙「なるほど……!」


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ここは死神組の本拠地。橙と桃時は死神組組長「兎白」に会いに来た。


???「おっ!お前ら!何だ?お前らの方から来るのは珍しいな」


話しかけてきたのは死神組一番隊隊長「瑠璃人」である。


桃時「あんた兎白知らない?あいつに話したいことがあるんだけど」

瑠璃人「兎白さんなら今会議でもうすぐ戻ってくると想うぜ」

橙「そうですか……それならそれまで待ちましょうか」

桃時「そうね。あいつくらいしかあの子のこと知ってる奴いないし」

瑠璃人「なぁ、何の話だ?」


橙と桃時は訳を話した。


瑠璃人「なるほどな。でもそれなら雫さんでも良いんじゃ……?」

桃時「雫さんはあの世を代表する神様なのよ?アタシたちはなんだかんだ会えてるけど、本来なら会うことすら中々叶わない人なんだから……!」

瑠璃人「確かに……会えるのが普通みたいになってるけど簡単には会えない人だもんな」

橙「だから兎白さんに頼るしかないんです……」


それから十五分後……


兎白「おぉ。どうしたんだみんな揃って。」

橙「やっと会えた!兎白さん、雨花さんの行方に心当たりないですか?」

桃時「あいつ今日仕事に来てないのよ」


兎白は一気に顔色を変え、真剣な顔になった。


兎白「残念だが、行方に心当たりはない。……だが、何でいなくなったのかは心当たりがある。」

橙「!」

桃時「それって……?」

兎白「今日は雨花の……」


「「「「誕生日なんだ」」」」


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橙「誕生日?」

桃時「そういえばあいつ誕生日の話になった時、忘れたって言ってたけど……自分の誕生日を忘れるなんてそうそうあったもんじゃないのに、雨花ならありえるかもって想って疑わなかったわね。」

瑠璃人「オレたちが知ろうとしたらそう言ってたな」

兎白「あいつが自分の誕生日を忘れるわけない。忘れられるわけがない。あいつは自分のことが心の底から憎くて憎くて……その末に無関心にまでなってきっと自分の誕生日を忘れることもあっただろう。そういうのも全部引っ括めて、そんな自分自身の誕生日をそう簡単に忘れることはできない。きっと今あいつは自分を責め抜いてるだろうな……肉体的にも精神的にも……」

橙「そんな……」

桃時「みつけましょ。」

橙「えっ?」

桃時「みつけるのよ。雨花を。」


桃時は橙の前に向き直る。


桃時「あいつ独りにしてたら何しでかすか分かったもんじゃないわ。あいつが自分を責め抜くなんてアタシはほっとけない。何とかして止めてやらないと」

瑠璃人「オレも。雨花には色々世話になってるし」

兎白「俺も行く」

橙「では皆さんで行きましょ!」


「「オー!!!!」」


瑠璃人「……で、どこへ行くんだ?」

桃時「いや全く考えてなかった。盲点ね」

橙・兎白・瑠璃人「おいおいおいおい」


果たして雨花をみつけることができるのか……


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兎白「とりあえずもう一回雨花がいそうなところを探すしかないんじゃないか?」

橙「でもそれはもう探したんですよ……」

瑠璃人「あいつ同じ世界線ならどこへでも瞬間移動できるしなぁ」

桃時「どこへでも……あっ!!」

橙「ど、どうしたんです?」

桃時「瑠璃人。あんた今どこへでもって言ったわよね?」

瑠璃人「えっうん……」

桃時「あいつが行きそうな場所もう一個あったわ!」


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真っ暗だな。

そうだよね。

灯りも消して残したのはナイフのみ。

このままずっと自分の手足を切り続けて刺し続けてそうやって今日は過ごさないと。


はぁ。

今みんな何してるんだろう。

心配かけちゃったかな。

明日からはまた笑って過ごさなきゃ。

笑って……笑って……











お願い。死んで。わたし。










???「雨花さん!!!!」


え、なん、で


???「見つけたわ!兎白!瑠璃人!こっちよ!」


どう、して


???「こんな暗い場所で独りでいたのか」


そ、そんな


???「うへぇ……手足から血が出てんじゃねぇか……」


だ、ダメ


橙「雨花さん。みつけましたよ。」

雨花「…………どうして……?」

橙「それは……」


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桃時「あいつがもう一個だけ行きたいと想える場所。それは……」


「「翡翠の何でも屋!!!!」」


橙「あぁ!!あそこはまだ行ってませんね!」

兎白「翡翠って確かこのブレスレット買ったところの店主か?」

瑠璃人「いつもオレたち付けてるよな!」


瑠璃人は自分のブレスレットをみせる。


桃時「そうそこ!あそこにはまだアタシたちは行ってない!海外に行くことを何も考えてなかったわ!」

橙「早く行きましょう!兎白さんお願いします!」

兎白「わかった。みんな俺に掴まれ。」

橙・桃時・瑠璃人「はい!・了解!」


そして四人は西洋の彼岸へと渡った。


西洋はそこら中の建物が雲の上にたち、雷雲のところには地獄。虹がかかっている雲には天国ができていた。


橙「本当は海外の彼岸に行くには神様の許可が必要なんですけどね……」

桃時「まぁでもその「神様本人」が渡ったんだし、問題ないんじゃない?」

兎白「今はそんなことはどうでもいい。早く雨花を探すぞ。」

瑠璃人「兎白さんからそんなルールを破る言葉が聴けるなんて……明日は嵐か……?」


橙一行は急いで翡翠の何でも屋に移動した。


翡翠の何でも屋の本店は、雲に乗り、あちらこちらと色んなところに雲ごと移動している。


桃時「翡翠のお店。なんでこんな入りにくい雲の上に乗ってるの?」

橙「きっとお店の中には貴重なものもあるので、前に言っていた冷やかし防止のためにこういった造りになっているのかと。」

瑠璃人「これ、中々入るの難しいなぁ……どうしよ」

兎白「とにかく頑張るしかない」


そしてやっと店の中に入る事が出来た


翡翠「おぉお前ら。なんだぞろぞろと。」


ぜぇぜぇはぁはぁと橙一行は息を乱していた。


桃時「もう二度と……ここには……来たくない……」

橙「とても……疲れ……ました……」

瑠璃人「せめて……もっと……単純な……規則性のある動き方にして欲しい……」

兎白「お前ら大丈夫か?」

橙「私は大丈夫です……」

桃時「アタシも大丈夫」

瑠璃人「オレももう大丈夫っす!」


「よし……」と、兎白は確認し、早速橙は翡翠に質問する。


橙「翡翠さん。ここに雨花さん来ませんでしたか?」


一同ごくりと唾を飲み込む。


翡翠「あぁ来たぞ。」

橙・桃時・兎白・瑠璃人「!」


ここに来てようやく希望が一つみえてきた。


橙「どこに行ったか。分かりますか?」


翡翠は橙たちの目をじっくりみて、考え込むと、こう言った。


翡翠「あぁー手が滑ったー」


翡翠が落としたのは顧客が購入したリストだった。


桃時「こ、これは?」

翡翠「わぁー購入品リストをうっかり落としてしまったーあたしはなんてことしちゃったんだーこうしたら購入品リストをみられてもその人たちは責められないしあたしおっちょこちょいだなーどうしよー」


翡翠が棒読みしてまるでうっかり購入品リストをみせてしまったかのように白々しくしている。


橙「これは、この雨花さんの購入品リストをみていいってことなのでは?」

兎白「雨花の購入品リストなんてみて何になるんだ?」

瑠璃人「もしかして……雨花の居所を探れるヒントかも!」


橙たちは雨花の購入品リストを探す。すると、


兎白「最後の購入品は……「夢見の鏡玉」?」

橙「聴いたことあります!「夢見の鏡玉」は彼岸道具の一つでそれを口の中に入れ、それが舐め終わるまでは異空間にいられる飴玉で、そして、その異空間では創造した物は何でも生み出すことができるとか。でもかなり高額なはずです。雨花さんよく買えましたね……」

桃時「あいつ前に黄泉比良坂で保育士としても働いてお金は結構もってるみたいよ?」

瑠璃人「この世の保育士の賃金の低さに倣ってあの世の保育士は賃金高いもんな」

兎白「あいつこのためもあって働いてたのか……はぁ……」

橙「話が脱線してます!まぁ私から言えたことじゃないですが……でもどうやって雨花さんのいる異空間に行くことができるんでしょうか……」

桃時「それならアタシがやる。」

瑠璃人「そうか!桃時はあらゆる世界線、並行世界、時空、異世界に繋がれる権限を持っているから!」

兎白「本当はその力を私物化してはいけないんだが、友達の危機なんだ。やるしかない。」

橙「なんか私たち帰ってきたらめちゃくちゃ上の神様に怒られそうですね……ふふっ」

桃時「今雨花のいる時空を探ってるからあんたたち静かにしてて……」


すると、翡翠が言葉をかけた。


翡翠「何があったのか分からないが、それを買った時の雨花の目はとても何も通さない目だった。暗闇すらも。雨花はうちのお得意様。いなくなっちゃ困る。頑張ってくれ。」


橙たちは強くうなづいた。


こうして橙たちは.無事雨花の元にたどり着いたのだった。


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雨花「そうだったんだ。」

橙「雨花さん。やめませんか?もう充分じゃないですか。自分をもう責めなくたって……!」

雨花「ダメだよ。わたしはもうクズにすらなれない。今も人を傷つけ続けてる。橙ちゃんたちには分からないだろうけど、わたしは人を傷つけ続けてるの。本当は罰すら貰って楽になることも許されない。でも何かはしなくちゃいけない。何もせずいるのもダメなら、せめて罰を与えられた方が良い。罰は本来なら誰かに与えられるべきものだけど、自戒なんて自分が後々楽になるだけのほんの少しマシなやつになれてるって馬鹿すぎる勘違いするだけの自己満足でしかないから。本来なら自分で自分を罰して楽になるのも許されない。でもわたしには誰も罰してくれない。ならやっぱり自分で罰するしかない。」.

橙「でも雨花さん……!」

桃時「そんなに自分のことを罰したいなら罰しなさい。」

橙「桃時さん……」

桃時「でもね。雨花。あんたがそうやって自分のことを罰することで傷つく人間がいることを忘れちゃいけない。生き物はね。傷つけあって生きていく。それが定めなの。あんたが誰かを傷つけないようにしてもその行為で傷つく奴だっているの。あんたが罰したってあんたが楽になるだけで他の奴らは全く何も感じない。あんたは自分が楽になりたいだけなのよ。」


雨花の顔は闇夜に溶けていてよくみえないが、きっとまた「何も映っていない目」になっているのだろう。


「なら、」と桃時は話を続ける。


桃時「どうせ楽になりたいなら、痛みのない方にしなさいよ……!あんたが自分を罰することで楽になるなら、アタシたちと一緒にショッピングしたり、橙に瑠璃人とイタズラしたり、兎白と修行したり、そういうことをして楽になりなさいよ!!それともあんたはこんなことじゃ楽になれないとでも言うつもり?!?!あんたはアタシたちといて少しくらい幸せだって想った瞬間だってあったんじゃないの?!?!あんたの犯したとか言ってる罪も受け止めたいってアタシたちは想ってるってまだ気づかないの?!?!」

雨花「…………」

橙「雨花さん。本当にもう良いんですよ。自分を責めなくても。どんな辛い罰もいずれ終わりはやってきます。今がその時なんですよ。雨花さんが犯したと言っている罪も話して下さる時までずっと待ってます。」

瑠璃人「雨花って馬鹿だな。こんなに色んな言葉をかけて貰ってるのにそれを全部投げ出してどこか遠い所へ行こうとするんだもんよ。オレはお前といて楽しいからお前には早く楽になって欲しいよ。だからどんな罪でもオレたちは聴くぜ。」

兎白「どうだ?雨花。お前にはこんなに味方がいるんだぞ。お前の幸せを望む奴らが。」

雨花「そ、…………」


良いのかな。もう自分を許しても……自分を解放しても……橙ちゃんたちなら受け止めてくれる……はず……わたしが犯した罪のこと……きっと……橙ちゃんたちは……!


《黒花ちゃんとは二度と関わりたくなくて》


…………


橙「雨花さん?」


雨花は灯りを灯した。そして、ゆっくり橙たちの方を向いて言った。


雨花「ありがとうみんな。ここまで来てくれて。わたしが犯した罪のことはまだ……まだ話せないけど、それまで待ってて欲しい。自分のことを責めないようにするのは……難しいから中々できないけど……心配かけてごめん。」

橙「もう良いですよ。」

桃時「特別に待っててあげる。」

瑠璃人「雨花には世話焼くぜ。あはは。」

兎白「ずっと待ってるからな。お前が話してくれるのを」

雨花「……うん。」


こうして雨花たちは異空間を出て、元の彼岸に帰ったのだった。


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どんな辛い罰もいずれ終わりが来る……か。

ならわたしの罰は終わることのない

無期懲役か死刑だね。

そうだよ。わたしは楽になりたい。


もう

ずっと

ずっと


わたしの罪は……

やっぱり受け止めて貰えない。

例え受け止めて貰ったとしても

わたしはそれもその優しさも

受け入れられない。

「受け止められる自分」を受け入れられない。

わたしはもう全部全部投げ出したいだけ。


罪も罰も戒めも後悔も全部全部放り投げて楽になりたい。


これがわたしの本当の気持ち。





だからわたしはやり続ける





自分の魂を完全に破壊する力を得るまで





『魂を破壊された者は、どの世界からも誰からも自分からも「自分」という存在が消え、最初からなかったことになる。人を傷つけてしまった想い出も優しい想い出も記憶も感情も何もかも全部無くなる。「無」になる。』








それがわたしにとっての「救い」だから

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