第33話
これは、「紫雲雨花」が「独野黒花」で、「兎白」「瑠璃人」と一緒に修行をした頃の「瑠璃人」の同期が語る「独野黒花」についての話。
???「まずはこの打ち込み台に打ってみて」
???「遅いぞ。もっと早く動くよう意識するんだ。」
彼女たちは俺たちの四年先輩の「独野黒花さん」と「兎白さん」。
???「相変わらずスパルタだなぁ」
こいつは、俺の同期の「瑠璃人」。
愚痴っているが俺たち同期の中ではトップの成績保持者だ。
黒花「そろそろ休憩にしない?」
兎白「でもまだまだ鍛えないといけないところが……」
黒花「倒れたら元も子もないでしょ」
兎白「お前に言われても全く説得力ないけどな」
黒花「え?」
兎白「まぁ良い。分かった。休憩しよう」
俺たちはやっと休憩することができた。正直言うと兎白さんの修行内容はとても難しくて激しい。少し油断すると気絶させられる。兎白さんの動きについて行けるようにならないと俺たちは神様の試験を突破できない。
しかし、一方で黒花さんの教え方は優しくて兎白さんに教えられたことをどうしたら上手くできるか教えてくれた。黒花さんはとても丁寧に教えてくれる。俺たちの癖づいてる動きや武器の持ち方から太刀筋、体力を維持する方法。色んなことを教えてくれる。とてもニコニコ朗らかに笑いながら。この人があの「黒い彼岸花」と言われていたとは想像出来ないほど、暖かみのある人だった雨花さんと兎白さんは飴と鞭としての役割を上手くこなしていた。。でも……俺は黒花さんをみて少し想うところがあるのだが。
兎白「はい。休憩終了。黒花が教えてた弟子たちは俺の方へ。俺が教えてた弟子たちは黒花の方に行ってくれ。」
俺は黒花さんの方に行くことになった。
黒花「君は瑠璃くんに追いつくために必死で頑張ってるよね?」
「!、な、何故それを?」
驚いた。そんなことまで知ってたのか。やはり侮れない。
黒花「君には直接私が相手になるよ。どうせいつかはみんなやることになるんだし。」
そう言うと、黒花さんは傘を構えた。俺も同様に傘を構える。その瞬間、辺りの空気が張り詰めて地響きが起こる。俺はとてもぴんと糸を張るように緊張すると同時に目の前にいる黒花さんは何もしていないのにもう叶わないと想わせるそんな雰囲気を醸し出していた。
黒花「さぁ……打ちかかってきて」
俺は、あまりにも緊張が頂点まで達して、震えていた。武者震いと想いたかった。
黒花「…………」
俺は、とてもじゃないが動けなくなり、そして……
「む、無理です……」
俺は肩から崩れ落ちた。
黒花「……うん。感情のまま襲いに来なかったのは評価できるね」
黒花さんは優しく微笑むと、俺の手を引っ張って立ち上がらせてくれた。でも……
「…………」
黒花「ん?どうかした?」
「い、いえ何でもないです」
俺はまた黒花さんに教えて貰いながら修行を再開した。
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「ふぅーはぁーふぅーはぁー」
俺は今ヨガをしている。沢山体を激しく動かした後は、ゆっくり体を動かしつつリラックスすることを覚える。黒花さんがそう言っていた。
???「ねぇ……君すごいね」
「!」
目の前には黒花さんがいた。
「く、黒花さん!どうしてここへ?」
黒花「君がとても頑張り続けているから大丈夫かなって想って。」
「いやそんなことないです。もっと修行して頑張ります。俺夢があるんです。」
黒花「夢?」
「俺、多分どんなに頑張っても、神通力っていう神様になる上で必要不可欠な力が一定以上上げられないんです。どうしても……これが才能の無さ……何でしょうね……でも俺はその代わり妖術が得意だからそれで神様や人を助ける仕事に就きたくて……!」
黒花「そっか。良いと想うよ」
「でも……神通力の才能が無いからって自分の得意な方に逃げてるみたいで……良いんでしょうか……」
黒花「君はとても真面目だね。」
「え?」
黒花「逃げてるって想うことないと想うよ?わたしだって自分の伸ばしたい方に力を伸ばしてる。……私にも君みたいに夢って程じゃないけどどうしても得たい力があるから。自分の歩みたい道に進んで良いんだよ。それが例え他の人と違う道でもそれが自分の進みたい道なら。道を歩いてるんだから。歩もうとしてるのにそれを「逃げ」だとは想わなくても良いと想うし、想うとしてもわたしはしっかり自分の道を歩もうとしてる君を応援するよ。もちろん無理はして欲しくないけど」
黒花さんはニコッと笑う。でも俺はどうしてもずっと言いたいことがあったんだ。
「本当に笑ってますか?」
黒花「え」
黒花さんの目が一瞬。
本当に一瞬━━━━━
何かを恐がっているようみえた。
しかし、すぐ笑顔に戻る。
黒花「ん?どういうこと?ちゃんと笑ってるよ?」
「でも……黒花さんはもう死んでるから心臓も機能してないし、臓器も働いてない。まぁここはあの世だから亡者でもお腹は減るし、ご飯だって食べれる。でもそれでも臓器が動いてるわけじゃない。だから俺がみえるのは動作だけ。俺さっき妖術得意だって言ったじゃないですか?目の動きとか仕草とかがみれて隠し事してるとか分かるんです。黒花さんはいつも肘を抱えながら話してるんです。それはつまりそれって黒花さんは……」
すると、黒花さんは俺の口に人差し指を乗せた。
黒花「それ以上は聴かないことにするね。その力悪用しちゃダメだよ?」
そして黒花さんは瞬間移動して夜の闇に消えていった。
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今日もいつも通り、修行が始まった。黒花さんもいつも通り修行しているが、違う点は自分の肘を抱えないようにして話すようになった。しかし……
「俺のせいだ……絶対黒花さん……」
???「なぁ黒花何かあったのか?」
話しかけてきたのは兎白さんだった。
俺はわけを話す。
兎白「なるほどな。道理で昨日お前に会いに行ってから様子がおかしくなったわけだ。」
「すみません……俺そんなつもりじゃ……」
すると兎白さんは俺の頭を撫でてくれた。
兎白「大丈夫だ。お前のせいじゃない」
兎白さんは話を続ける。
兎白「あいつは、自分が無理してる、頑張ってる姿をみせたがらないんだ。みせてしまえば自分が周りから良いようにみえてしまうから。そして隠したいこともバレてしまう可能性があるから。」
「隠したいことって……?」
兎白「それは俺にも分からない。でもとても心細くなるような寂しくなるようなことだろうな。」
と言うと、兎白さんは一言俺に言った。
兎白「お前のその人をみる力はとてもすごい。だから後ろめたくならなくて良いからな」
そういうと修行に戻って行った。
俺は、黒花さんに地雷を思いっきり踏んでしまったのかもしれない。でも……
「こんなに俺たちに良くしてくれてるんだから例え黒花さんにとって俺らが良い存在じゃなくても俺たちは黒花さんの修行で強くなろう。もちろん兎白さんの修行でも。それぐらいしか俺たちは……俺は……黒花さんに答えられない」
俺は黒花さんのことを何も知らない。でも黒花が一人の時みせるあの目。あの目は本当に「何も映っていない目」だった。あんな寂しい目をしてるのに、それを感じさせないように俺たちの前では笑ってくれてる。それはきっと黒花さんが俺たちを信じられてないからかもしれない。きっともう誰も信じることができない。……俺にはどうすることもできない。でも黒花さんの教えてくれたことを一生懸命やっていこう。
こうして俺はまた修行に明け暮れたのだった。
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