第30話

???「……ちっ…あのクソ野郎がっっ!!」


地団駄を踏んで暴れているのは、「桃時」である。


桃時「あのクソ野郎。こっちの気も知らないで仕事全部押し付けやがって……しかも「これぐらいできるよね?桃時さんは優秀だものね〜クスクス」って明らかに馬鹿にしてるじゃない!!ふざけんじゃないわよ!!」

???「桃時ちゃん……なんかあった?」

桃時「!」


話しかけてきたのは、「紫雲雨花」だった。


桃時「ちょっと聴いてよ!内の課長がめちゃくちゃ腹立つの!!前々からアタシあいつには目を付けられてたのよ……アタシ普段はあんまり仕事してないけど、やる時はほぼ完璧にできるから。だからアタシ特別待遇として、このゴスロリ服着用も許されてて、なんだかんだ周りの神様たちも慕ってくれてるし、それが気に食わないみたいで最近アタシに自分の分の仕事まで押し付けてくるようになって、しかもアタシがやったのに、自分の手柄にしてんのよ?!アタシが優秀だからそれぐらいできるでしょって……ふざけんな!!あのクソ野郎!!やり返してやりたいわ!!」

雨花「じゃあやり返しちゃえば?」

桃時「えっ?」


桃時は、驚いたがすぐこれが雨花だと想った。


桃時「あんたそういうとこあるわよね……普段は良い子キャラだけど時々覗かせる悪い性格というか……しかもそれが無自覚なのが少し恐い……まぁアタシはそういうところ嫌いじゃないけど……でも良いわね。やりましょ!あんただって言い出しっぺなんだから協力しなさいよ!」

雨花「えっわたしも?まぁいいか」


こうして雨花、桃時、二人で「桃時の上司ギャフンと言わせよう大作戦」が開始した。


◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎


「桃時さん?これもお願いするわね。それからここの部屋のFAXじゃなくて、課長室のFAXを使ってね。」

桃時「……分かりました」


いつも通り、桃時は課長に課長の分の仕事を押し付けられていた。しかも、課長がやったかのようにするためにご丁寧に課長室のFAXを使うように指示されて。


桃時「……ふふ。あの女にギャフンと言わせてやる」


そして、その押し付けられた仕事の資料に取り組んでいた。

━━━━━何かを企みながら……


「では、今回は管轄長もいらっしゃる大切な会議です。ミスのないようにお願いします」


次の日、集合の号令がかかり、それぞれ会議の準備をしていた。


「早く資料頂戴。桃時さん。」

桃時「はい、どうぞ」

「じゃあ会議行くわよ」


こうして、課長と桃時は会議に行った。


「では、これから会議を始めます。では先程配布したお手持ちの資料をご覧下さい」


会議の参加者たちが各々資料を読み込む。


「よくできた。資料だね」「流石課長だ」「君に任せて良かったよ」「うん素晴らしい」


「ありがとうございます。」


本当は桃時がやったものを、自分がやったかのように話を進める課長。いつもなら黙っている桃時だが、今回は違った。


桃時「すみません。この資料はアタシが作りました。」


「!、な、何を言ってるの?デタラメなこと言わないで頂戴」


がやがやと騒ぎ出す会議の参加者たち。課長は反論し続けた。


「あなたはいつもサボってばっかりで仕事なんてしてないじゃない。あなたがいつどこで作ったって言うの?」


桃時は冷静に話を進める。


桃時「この資料の裏にFAX番号が書かれてますよね。このFAX番号を元に近くの防犯カメラで撮られた映像がこちらです。」


桃時が持ってきたパソコンには、課長室で資料を作っている桃時の姿がバッチリ残っていた。


「!、こ、これはその……そう!桃時さんが自ら志願したんです!私の資料作りを手伝いたいと!」

桃時「でも、それならいつものオフィスで行えば良かったじゃないですか?何でわざわざ課長室で行っているんです?課長室に入るには許可が必要。課長が自分の手柄にするために自分の部屋でアタシに仕事をさせ、押し付けた正真正銘の証拠ですよね?」


「どういうことなんだ?」「君が作ったんじゃないのか……」「しかも最後まで嘘をついて……」「これはパワハラだぞ」


「クソっ……そもそもなんで防犯カメラの映像なんて持ってるのよ!?冥府に保存してあるはずでしょ!?」


桃時「それは、頼りになる閻魔がいるからですよ。課長♡」


こうして、課長は管轄長からお叱りを受け、次やったら課長から降格すると厳重注意を受けたのだった。


◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎◽︎◾︎


???「アッハハハハハハハハ、上手くいって良かったね!」

???「もう、急に桃時さんの仕事場の防犯カメラ映像が欲しいって言われて驚きましたよ」


ここは、冥府。腹から笑っているのは雨花と冷静に話しているのは「不山橙」である。


桃時「あの課長。よっぽど怒られたみたいね。いい気味!ふふっ。」

橙「そういう私怨を晴らすために、防犯カメラ映像なんて使わないで下さい!」

雨花「ごめんごめん!でも桃時ちゃんが仕事しやすくなって良かったんじゃない?」

桃時「アタシは今とてもスッキリしてるわよ?」

橙「はいはい。良かったですね……うふふ」


こうして、「桃時の上司ギャフンと言わせよう作戦」は幕を閉じたのだった、

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る