第29話
???「うーん……」
???「どうしたの?兎白くん」
ここは、冥府。「紫雲雨花」の仕事部屋で、雨花と「兎白」は話し合っていた。
???「もうここは相談室と化してますね。ふふっ」
お茶を持ってきたのは「不山橙」である。
兎白「実は俺の親に彼女いるのか?って聴かれて「いる」って答えて紹介しろって言われて……」
雨花「へぇ〜そうなんだ!」
橙「それが何か問題なんですか?」
兎白「いや、それが、俺の両親は全然良いんだけど、俺の両親に紹介するなら……桃時のご両親にも自己紹介しないとなと想って……」
雨花「……そっか。桃時ちゃんのご両親って……」
橙「私もちらっと聴いたことがありますが……確か桃時さんはお父様に男として育てられたんでしたっけ……」
雨花「その原因は、桃時ちゃんのお母さんにあるんだよね……兎白くんと付き合ってるって知ったら益々ご両親との溝を深めることになる……だから兎白くんも簡単に「俺の両親に紹介したい」って言えないんでしょ?」
兎白「…………あぁ……でもこのまま桃時に紹介しないのも嫌なんだ。」
橙「なるほど……難しい問題ですね……」
雨花「その気持ちをそのまま伝えてみたら?」
兎白「俺の気持ち……?でも……」
雨花は真剣な顔で兎白と向き直る。
雨花「自分の気持ちを伝えたらもしかしたら相手を傷つけることもあるかもしれない。でもこのまま兎白くんが兎白くんの気持ちを我慢するのも私は桃時ちゃんが傷つくのと同じくらい嫌だ。桃時ちゃんはきっとご両親に会うのはとても苦しいと想うから桃時ちゃんに合わせても良いと想うし、もちろん紹介し合うのも良いと想うし。お互い兎白くんと桃時ちゃんにとって一番安心する我慢することない選択を取るべきだと想うから、一度話し合ってから決めてからでも良いと想うよ。」
兎白「…………そうだな。分かった。話し合ってみるよ。」
こうして、兎白は去っていった。
橙「かなり厄介な問題ですけど、大丈夫でしょうか……」
雨花「あんな風に自分のことを想ってくれる人がいるってことは桃時ちゃんが沢山頑張ってて、優しい証だね。そんな二人なら幸せになって欲しいな……」
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???「ここがあんたの家?」
???「あぁ、意外か?」
ここは、兎白の実家である。その目の前にいるのは、「桃時」と「兎白」である。
桃時「意外とかじゃないわ。温もりがあって良いわね。あんたらしい家だわ。」
兎白「そ、そうか?へへ……」
桃時「何照れてんのよ……」
兎白「いや。実家のことを褒められるのは嬉しいからな」
桃時「ふふ、そう?」
兎白「それにしてもお前のその格好……」
桃時の格好はいつものゴスロリじゃなく、スマートカジュアルなシンプルな服だった。
桃時「橙の服を借りたのよ。妖術でサイズ合わせてもらって。さすがにいつもの服では行けないでしょ。」
兎白「お前……そんな考え方……!」
桃時「何よ……ぶん殴るわよ。」
家に前で兎白と桃時が話していると、
???「あらあら。兎白?どうしたの?早く入りなさい」
目の前には月のように綺麗な光の反射で黄色くなる不思議な白髪の長髪で水色の瞳を持った女性が立っていた。
???「あら。あなたが兎白の彼女さん?まぁまぁとても可愛らしいわね。どうぞ入って!」
「あ、それから」とその女性は振り返って、こう言った。
???「私は虎月(こげつ)って言います!よろしくね?うふふ」
桃時「なんかすごく優しい人ね。」
兎白「うちの母さんはおっとりしてるからな。凄く優しいぞ?」
桃時「へぇ……」
桃時は、実はとても緊張していたが、少し緊張の糸がほぐれた。
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虎月「さぁどうぞ。早速お茶入れるわね。」
兎白の実家はとても広い平屋で、和風な作りになっていた。
桃時「あ、あのう、お構いなく……」
虎月「あらあら。気なんて遣わなくて良いのよ?うふふ」
広い和室の部屋に入り、お茶をテーブルに乗せる。
虎月「さてと……あらとても緊張してるわね。大丈夫かしら?」
桃時「い、いえ!お気遣いありがとうございます。」
虎月「いいのよ。あなたも気なんて遣わないで……うふふ。あっそうだお名前伺っても良いかしら?」
桃時「あっすみません。先に名乗るべきでした……」
兎白「気にしないで大丈夫よ?」
桃時「私は桃時と申します。お母様。よろしくお願いします」
虎月「お、お母様!何だか照れちゃうわね。うふふ。」
桃時「(ど、どう言うのが正解なの!?!?)」
兎白「でも間違ってないだろう。結婚を前提に付き合ってるんだし。」
桃時「いやまぁ、そうだけd……えっ!?!?そうなの!?!?」
兎白「ん?違うのか?」
桃時「そ、………//////////……アタシで良いの?」
兎白「最初付き合ってからそのつもりだったぞ?お前は俺じゃ嫌か?」
桃時「全然嫌じゃない!!!!よ、よろしく……」
兎白「あぁこちらこそ」
桃時は顔が真っ赤になりながらお茶を一口飲んだ。
虎月「うふふ。桃時ちゃん初々しくて可愛い反応するのね!」
桃時「でも、私なんかでお母様もよろしいんでしょうか……?」
すると、虎月は優しく桃時に微笑んだ。
虎月「少し桃時ちゃんのお話兎白から聴いてるの。桃時ちゃんは自分の好きなものや大切な人にとても情熱があって、とことん愛することが出来て、とても頼りになる。でも実は繊細なところがあって、無理しがち。だけど、人に優しくできるとっても良い子だって。実はたまたま桃時ちゃんをみたときがあって、その時は兎白と付き合ってること知らなかったんだけど、友達の相談にもしっかり向き合ってて……本当に優しい子なんだと想ったわ。」
「それから……」と、虎月は話し出す。
虎月「桃時ちゃんにはとても辛い過去があるって聴いてるわ。もちろん内容は知らないんだけどそんな過去を背負っているのにさっき言ったような女の子でとても頑張ったんだろうなって。大変な中うちの兎白と出会ってくれてありがとう」
虎月は、お辞儀をした。
桃時「そ、そんな顔をあげてください。わ、私もとても……その……兎白さんが出会いにきてくれて嬉しい……です……」
虎月「ふふふ。やっぱり兎白の言った通りの子ね。」
すると、ギシギシと床を鳴らしながら白髪の青い瞳を持った男性が和室に扉を開けた。
兎白「あっ、父さん。」
???「おぉ、もう来てたのか。おかえり。」
虎月「ちょっとお父さん。そんなジャージ姿で。せっかく桃時ちゃんが来てくれたのに……もう。」
???「桃時ちゃん?誰だ?その子?………ってあっ!その子が兎白の……?」
桃時「兎白さんと付き合わせて貰っています。桃時と申します。」
桃時は立ち上がってお辞儀した。
???「おぉ、君が……ちょっと待っててくれる?今着替えてくるから」
と言って、兎白の父は着替えに行った。
虎月「もう……ごめんね?あんなにだるそうにして全くもう……」
桃時「いえ。大丈夫です。」
兎白「母さん、父さんに教えなかったのか?」
虎月「もちろん教えたわよ?でも何度起こしても起きないからもう放っておいちゃったのよ……桃時ちゃんごめんね?でも勘違いしないで欲しいのが桃時ちゃんに会うのはとても楽しみにしてたの。でもお父さん朝がすごく弱くて中々起きられないのよ……」
桃時「いや、全然大丈夫ですよ。」
兎白「父さんは相変わらずだな。」
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???「私の名前は龍雪(りゅうぜつ)と言います。どうぞよろしく。」
とりあえず普段着に着替えてきた龍雪は、桃時にお辞儀する。
桃時「よ、よろしくお願いします」
龍雪は、虎月の隣に座った。
龍雪「それにしてもこんな美少女が兎白の彼女だなんて……お前レンタル彼女とかじゃないよな?」
兎白「俺は彼女をレンタルしたりしない。」
虎月「そうよ。桃時ちゃんに失礼よ。お父さん」
龍雪「はいすみません。でも良かった。」
桃時「良かった……ですか?」
龍雪は桃時の目を真っ直ぐ見る。
龍雪「一時期の兎白は、本当に覇気がなくていつも沈んでいる顔をしていた。だから今こうやって好きな人と過ごせていることがとても嬉しい。ありがとう。桃時さん。」
桃時「いえ、私こそ兎白さんに沢山支えられています。感謝したいのは私の方です。こちらこそありがとうございます。」
桃時は深く頭を下げた。
龍雪「君は本当に良い子だね。どうりで兎白が好きになる訳だ。」
虎月「あっそうだ!今日夕ご飯食べて行って!腕をふるって頑張るわ!」
桃時「いえ、そんな!大丈夫ですので……」
兎白「言われただろう?「気を使わなくて良い」と。俺もお前と一緒に食べたい。どうだ?」
桃時「わ、分かったわ。でもせめてお手伝いさせて頂きたいです!」
虎月「本当に良い子ねぇ。うふふ。じゃあお願いしちゃおうかしら。」
こうして、桃時は兎白一家と一緒に楽しく食事をした。
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虎月「また来てね!いつでも待ってるから!」
龍雪「あぁ、また来てくれたら嬉しい。またな。桃時さん。」
二人に見送られ、桃時と兎白は一緒に帰って行った。
兎白「どうだった?うちの母さんと父さんは?」
桃時「アタシあんまりああいう優しい家族に囲まれたことがないから居心地が良くないんじゃないかと想ったわ。でも……」
兎白「でも?」
桃時は顔をそっぽ向けながら、こう言った。
桃時「あんたの家族と過ごす時間は……とても居心地が良かった……わよ……」
兎白「!」
「桃時……」と兎白が声をかけて、「な、何?」と桃時が言うと、兎白が桃時の顎を掴んで自分の方に向かせ、そして……
兎白「…………」
桃時「…………!?!?」
兎白は、桃時に口付けをした。
桃時「な、な、///////〜〜〜〜っ……」
兎白「ははっ……」
桃時「な、何よ……」
兎白「いや、可愛いなって想って」
桃時「もう、もう無理!アタシ先帰る!これ以上恥ずかしがらせないで!!」
そういうと、桃時は走って帰って行った。
兎白「やっぱり桃時は可愛いな。」
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桃時は、手紙を書いている。その文面は
『お父さんへ、お久しぶりです。お父さん。お元気ですか?アタシは今ある男の子と付き合って、他にもアタシのことを気遣ってくれてる友達もいて何とか毎日アタシらしく過ごせています。お父さんは、ダメだと想うかもしれませんが、アタシはアタシらしく生きていきたいです。それがアタシの望む幸せなんです。どうか認めなくて良いから遠くからみていて下さると嬉しいです。桃時より。』
そして、桃時はその手紙をポストに投函した。そしてその数日後……
『桃時へ、お前にはずっと言わなくちゃいけないことがある。本当にすまなかった。お父さんにはいつだって余裕がなかった。とにかく桃時を守らないとと想って、あんな方法しかお前を守ってやれる方法が分からなかった。全部言い訳にしかならないが、本当にすまなかった。今桃時は、少しでも幸せになっててくれたらなそれに越したことはない。ありがとう。生きててくれてありがとう。遠くからずっと見守っているよ。桃時が桃時らしく生きていけることを願い続けています。父より』
この文章を読み、桃時はちゃんと愛されていたのだと、父を恨んだこともあったけれど、こんな暖かい文章を自分のために送ってくれたのだと、お父さんと会うのはやっぱり今でもとても恐い。でも、自分の幸せを見守ってくれてるのはほんのりと嬉しかったような気がする。
手紙を優しく箱に入れ、保存して、桃時は眠りについた。きっと優しい夢をみれると想いながら。
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