第28話

???「はぁ憂鬱ねぇ〜」

???「何が憂鬱なんですか?」

???「……あのさぁ……」


「「どうしていつもわたしの仕事部屋で話し合いするの?」」


???「ダメなの?」

???「いや、ダメじゃないけど……」

???「ふふ、何だかここでこうやって話すのが恒例みたいになってきましたね」


ここは、冥府。「紫雲雨花」の仕事部屋で、「紫雲雨花」と「不山橙」に「桃時」は相談事をしていた。


桃時「もうすぐ舞の季節になるのよ……」

雨花「あぁそういえばもうそんな時期だね」

橙「確か白兎神社で行われるんでしたっけ?」


雨花たちの言っている「舞」というのは、この世に一度降りて、神社でこの世の穀物の実りや幸せを祈願するための舞のことである。


桃時「あの堅苦しい服にめっっちゃくちゃ重い仮面を被りながら舞を踊らないといけないのよ?はぁ最悪……」

雨花「前に録画ビデオでみせて貰ったけどすっごく綺麗だった!」

橙「はい!白樺の精霊かと想いました!」

桃時「そんな……まぁ当然ね!」


「でも……」と桃時は声のトーンを低くして言った。


桃時「あんたたちはみれないのよね……直では……」

雨花・橙「…………」


雨花と橙は、自ら命を絶った。

あの世の法律上、

この世に行くことはできない。

もう二度と。


雨花「…………でもこの世に戻ったところでわたしにはもう居場所なんてないけどね?あはは!」

橙「私もないですけど……どうして笑えるんですか?雨花さん」

雨花「そんなのわたしに居場所がないってことは自分に戒めを与えてくれてるからに決まってるじゃん!」

桃時「またあんたはそうやって暗い話にする……もう………この話はここで終わり。」

橙「桃時さんが言い始めた話ですけどね。ふふっ」

桃時「まぁそうだけど……」


橙と桃時が談笑している間、雨花は考えていた。もし、この世に行けたとしても、もう既にそのこの世。わたしの現実は、潰れた銀杏のようになっているだろうな。と、


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雨花「桃時ちゃん頑張れ!!でも無理はしちゃダメだよ!!」

橙「応援してます!!」

桃時「はいはい……行ってくるわ。」

雨花・橙「行ってらっしゃい!」


こうして桃時は、現世へと降りていった。


今はお正月。初詣に繰り出して、大衆がゾワゾワと出てきた。


桃時「そろそろ舞の準備ね。」


桃時が準備していると、何やら口論の声が聴こえた。


「お、お前はもう元カノだろ?」「そ、そんな……私あなたのこと信じてたのに……」「ねぇこの女だれ?」「な、何でもないよ!こいつが変なこと言ってるだけだから!」「へ、変なことなんて言ってない!私と付き合ってくれてたもん」


どうやら男が浮気をして、それを目撃した彼女とその浮気相手がいて、男が言い訳をしているようだった。そしてとうとう浮気された女の子が泣き始めてしまった。


「はぁ……めんどくせぇんだよお前。もうどっか行ってくれ!」


桃時「………………ちっ…………」


その浮気した彼氏が逃げようとした瞬間、


「いってぇ!!なんだ!?」


桃時が男性の顔を殴り飛ばしたのだ。


桃時「あんたさぁ、例えあんたの言う通り、この女の子がしつこく責めていたとしても、あんな態度はないでしょ?この子泣いてるんだけど?それから本当にあんたの言う通りなら彼女の連絡先知らないわよね?あんたスマホ出して。」

「そ、それは……」

桃時「ア"ア"ン?」

「ひっ……み、みせます」


男のスマホを探ってみると、案の定彼女の連絡先があって、性的な関係をほのめかすメールがいくつも並んでいた。


桃時「アタシ、女の子を泣かせる男……大っっ嫌いなのよねぇ……!!!!」


そういうと、桃時は何度も男を蹴り飛ばした。


「うわぁ……」

桃時「なに見てんのよ……!」

「ひぃ……すみません」


浮気相手が引いている姿をみて、桃時はぎろりと睨み、浮気相手は去っていった。


「…………」

桃時「あんたも蹴る?」


男は桃時の蹴り足でボッコボコにされ土下座させられたあげく桃時に背中に乗られている。


桃時「あ、もしかしてもっとこいつと話したかった?ならごめんなさい……」

「いえいえ!!ありがとうございます。私の分まで蹴ってくれてとっても嬉しかったです。スカッとしました。」


泣かされた女の子は、何度もお辞儀した。


桃時「二度とこの子にもアタシにも近づくじゃないわよ。分かった……?」

「わ、分かりました……」


そういうと男はとぼとぼ出ていった。


桃時「新年早々災難なんて嫌だものね。よく頑張ったわ。偉いじゃない。」


桃時は、女の子の頭を撫でる。


「…………!ありがと……うござい……ます。ぐすっ……」


女の子はまた涙したが、今回の涙には嬉しさも入っているのだろう。


桃時「アタシ今から舞を踊るの。良かったらみていって頂戴!」

「えっ!舞妓さんだったんですか!?どうりで可愛らしいと想いました。」

桃時「ふふ、そうでしょ?あっ……そうだ」


桃時が取りだしたのは、「特等席切符」というものだった。


桃時「これなら一番近くで私の舞がみれるわよ?」

「わぁ……ありがとうございます……!」


そして、とうとう舞を踊る時間になった。


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雨花「うわぁぁ、ますます綺麗になってるじゃん!」

橙「本当に清らかな踊り方ですね!」

桃時「ふふ、ありがとう♡」


「でも……」と橙が質問する。


橙「こんな間近で撮影してくれてる方いらっしゃったんですね。警備で忙しいのに死神組の方が撮ってくれたんでしょうか?」


すると、雨花が話し出した。


雨花「多分違うと想うよ?ところどころ女の子の声が近くにきこえるから誰か女の子が撮影してくれたんじゃないかな?」

桃時「うふふ、そうよ!やっぱりあんたは鋭いわね!」

橙「でも女の子って誰ですか?」

桃時「実はね……」


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雨花「なるほどね〜!桃時ちゃんらしい行動だね。」

橙「桃時さんに助けられてきっと嬉しかったんでしょうね……!その方。」

雨花「やっぱ、桃時ちゃんは優しいね!」

桃時「はいはい……また来年も来てくれるって言うし、もっと舞を練習しておかないとね?」


雨花一人とても小さい声で一言こう言った。


雨花「良かったね。桃時ちゃん。この世に友達ができて……」


その声は聴こえることなく、雨花の独り言は橙と桃時の声でかき消された。

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